金は新たなレンジを形成、投資資金流出もドル安見通しが下支え<コモディティ特集>

特集
2020年12月16日 13時30分

の現物相場は、 新型コロナウイルスのワクチン開発の進展による景気回復期待を受けて1800ドルの節目を割り込むと、テクニカル要因の売りが出て一段安となり、7月2日以来の安値1765.25ドルを付けた。その後はリスク選好のドル安を受けてファンド筋の安値拾いの買いが入り1874.92ドルまで戻したが、金ETF(上場投信)からの投資資金流出に上値を抑えられた。

金は景気回復期待が高まるなか一段安となり、1765.25~1874.92ドルの新たなレンジを形成した。金ETFから流出した投資資金により ビットコインが買われたことが指摘されており、投資資金の流れは転換点を迎えた。ただ、リスク選好のドル安見通しが強まったことを受けて、先物市場でファンド筋の買い意欲が高まったことが下支えしている。欧州中央銀行(ECB)が追加緩和を決定し、米連邦準備理事会(FRB)の政策調整も見込まれており、各国中銀の量的緩和が来年いっぱい続けられる見通しであることも金の下支え要因となる。新型コロナウイルスの収束見通しが強まり、各国中銀の金融引き締めの見方が出るまで、金は方向性を模索する値動きになるとみられる。

●新型コロナウイルスのワクチンが接種開始

英国で8日、米製薬大手ファイザーと独ビオンテックと共同開発した新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まり、続いて米国やカナダでも14日に開始された。英国で重篤なアレルギー反応が2例報告されており、副作用などを確認する必要はあるが、接種が開始されたことで中長期の景気回復期待が高まった。

米食品医薬品局(FDA)は17日の会合で米モデルナのワクチンを協議する見通しとなっている。欧州医薬品庁(EMA)は米ファイザーと独ビオンテックのワクチンについては29日まで、米モデルナのワクチンは1月12日までに審査を完了させる見通しとしている。一方、英製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発しているワクチンは、1月下旬にも臨床試験(治験)の結果が得られる見通しである。先進国でのワクチン接種は来年、進む見通しだが、資金力で劣る貧困国での接種は遅れるとみられており、ワクチン格差による感染状況と各国の景気回復の行方も確認したい。

●各国の量的緩和と経済対策の継続が金を下支え

10日の欧州中央銀行(ECB)理事会で追加緩和が決定された。パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の規模を5000億ユーロ拡大し、期間を22年3月まで9カ月間延長する。ECBはスタッフ予想で21年のユーロ圏の経済成長率を3.9%とし、前回9月の5.0%から下方修正する一方、22年は3.2%から4.2%に上方修正した。また、欧州連合(EU)のミシェル大統領は総額1兆8000億ユーロの21~27年予算と新型コロナウイルス復興基金で合意したと述べた。また、米国では16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策調整があるかどうかを確認したい。米議会では超党派グループが提案した9080億ドルの新型コロナウイルスの救済法案は2つに分割される見込みとなり、協議が進んでいる。各国中銀の量的緩和や経済対策で大量の資金が投入されることは金の下支え要因である。

●金ETFからビットコインに投資資金が移動

景気回復期待の高まりを受けて、金ETFから投資資金が流出した。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は9月21日の1278.82トンをピークに減少し、14日は1171.32トンとなった。11月に新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験(治験)で良好な結果が伝えられると、投資資金の流出が加速した。JPモルガン・チェースによると、10月以降、金ETFから70億ドルが流出する一方、グレースケール・ビットコイン・トラストに20億ドル近い資金が流入しており、一部でポートフォリオの組み替えが進んだ。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは12月8日時点で26万9220枚となり、9月22日の21万9060枚から買い越し幅を拡大した。新規買いが2万9256枚、買い戻しが2万0904枚入り、ファンド筋は高値での売り玉を買い戻し、安値を買い拾う格好となった。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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