いまや少子化阻止の国策テーマ「婚活関連」、政府がAI活用支援を強力サポート <株探トップ特集>

特集
2020年12月17日 19時30分

―労働人口減少による経済活動低下が迫り危機感、マッチングアプリの商機も拡大へ―

12月7日付の読売新聞が、「政府は来年度から、 少子化対策の一環として、AI(人工知能)を活用した自治体の婚活支援事業を後押しする」と報じた。日本の少子化が想像を超えるスピードで進行しており、少子化対策は急務となっている。政府も婚活段階から自治体の活動を後押しするようだ。

少子化が進行すれば、将来的な労働力人口が減少し、経済活動が低下するとともに、現役世代の税・社会保障負担が持続的に高まることになる。これを防ぐためにも少子化対策は重要な政策課題であり、その入り口として結婚に結び付く「婚活」も重要なテーマだ。いわば国策として「婚活」が進められると、関連企業のビジネスチャンスも広がりそうだ。

●日本の少子化をめぐる現状

厚生労働省が今年9月に発表した人口動態統計(確定数)によると、2019年の出生数は86万5239人と前年から5万3161人減少し過去最少を記録した。出生数は第1次ベビーブーム期(1947~49年)には約270万人、第2次ベビーブーム期(1971~74年)の1973年には約210万人で推移していたが、75年に200万人を割り込み、それ以降は毎年減少し続け、ついに90万人を割り込むまでになった。

一方、1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は第1次ベビーブーム期には4.3を超えていたが、75年に2.0を下回ると低下傾向を強め、2005年には過去最低である1.26まで落ち込んだ。その後、15年には1.45まで上昇したものの、19年は1.36と前年の1.42に比べて0.06ポイント下回った。

安倍晋三前政権では、若い世代で子どもが欲しい人の希望がかなった場合に実現する「希望出生率1.8」を目標に掲げたが、歴代最長の政権をもってしても達成できなかった。今年9月に誕生した菅義偉首相も少子化対策を注力するテーマの一つとして挙げており、対策の一環として打ち出している不妊治療の保険適用は22年4月から実現する見通しのほか、不妊治療の助成制度についても所得制限の撤廃や助成額の拡充などを進める方針だ。

●婚姻率は1970年代の半分程度

今年5月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」では、「少子化の主な原因は、未婚化・晩婚化と、有配偶出生率の低下であり、特に未婚化・晩婚化(若い世代での未婚率の上昇や、初婚年齢の上昇)の影響が大きいと言われている」としている。

内閣府によると、婚姻件数は、第1次ベビーブーム世代が25歳前後の年齢を迎えた1970年から74年にかけて年間100万組を超え、婚姻率(人口1000人当たりの婚姻件数)も概ね10.0以上だった。その後、婚姻件数は年間70万組台で増減を繰り返してきたが、2011年以降は60万組台で低下を続け、18年にはついに60万組台を割り込み58万6481組と1947年以降の最低を記録した。2019年は、59万8965組(対前年比1万2484組増)と7年ぶりに前年比で増加し、婚姻率も4.8で、過去最低だった前年の4.7から0.1ポイント上回ったが、1970年代前半と比べると半分程度の水準となっている。

また、50歳時点の未婚率である生涯未婚率は、2010年の国勢調査では男性20.1%、女性10.6%だったが、15年は男性23.4%、女性14.1%と、それぞれ上昇した。15年の国勢調査の結果に基づいて出された推計では、これまでの未婚化・晩婚化の流れが変わらなければ、今後も50歳時の未婚割合の上昇が続くと予測しており、未婚が大きな課題となっている。

●AI婚活システムは愛媛や埼玉で導入済み

こうした状況を改善するため少子化社会対策大綱では、重点課題として「若い世代が将来に展望を持てる雇用環境などの整備」「男女ともに仕事と子育てを両立できる環境の整備」などと並んで、「結婚を希望する者への支援」を挙げている。

21年度の概算要求では、自治体の婚活支援事業を後押しする地域少子化対策重点推進交付金に20億円を計上した。対策の一つとして、地方自治体がAIを活用した婚活システムを導入する際の費用の3分の2を支援する方針だ。

AIやビッグデータを活用した婚活システムは、既に愛媛県や埼玉県、秋田県などで導入されているが、希望条件に合わなくても、相性の良い相手をAIが探し出すことで高い成果を上げているという。現在、47都道府県のうち、25県がこうしたAIによる結婚支援事業を活用。自治体の利用拡大とともに、企業のAI活用婚活も認知度が高まり、利用者層の増加につながるとみられ、関連銘柄には注目が必要だ。

●地方自治体と共同で婚活システムを展開

関連銘柄の代表格はタメニー <6181> [東証M]だろう。同社は結婚相談所「パートナーエージェント」などを展開しているが、地方自治体向けに独自開発AIを活用した結婚支援システム「parms(パームス)」を提供しており、埼玉県や秋田県、福井県などで採用されている。結婚支援事業に必要な会員登録、会員管理、相手とのマッチングなどの基本機能だけではなく、利用者の活動をサポートする機能や、事業運営側のスタッフの業務を効率化する機能なども備えているのが特徴だ。

ネットマーケティング <6175> は、恋活・婚活マッチングアプリ「Omiai(オミアイ)」を展開しており、19年12月には累計会員数500万人を突破し、今年7月には累計マッチング数5000万組も突破した。18年8月からは地方自治体との取り組みを開始し、「婚活」「移住」分野で連携を進め、オンライン・オフラインでの縁結びパーティーなどを実施している。

●婚活アプリ提携企業にも注目

また、AIやビッグデータを利用した婚活アプリにも注目したい。

イグニス <3689> [東証M]は、婚活・恋活マッチングアプリサービス「with(ウィズ)」を15年9月から展開しており、20年9月期末時点のユーザー数は370万人(前の期比61%増)と順調に利用者を伸ばしている。同アプリはメンタリストDaiGo氏が監修し、統計学×心理学により「運命よりも、確実」に相手を探せるサービスが特徴という。

また、サイバーエージェント <4751> は、子会社タップルが恋愛・結婚マッチングアプリ「tapple」を展開。リクルートホールディングス <6098> は、傘下のリクルートマーケティングパートナーズが「ゼクシィ縁結び」ブランドでサイト、アプリを展開しており、ともに会員数を伸ばしている。

このほか、IBJ <6071> は、婚活サイト「ブライダルネット」を展開しており、マッチングまでではなく、「婚シェル」がマッチング後のやり取りやデートの相談などをサポートすることを特徴に会員数を伸ばしている。また、子会社ZWEI(ツヴァイ)で婚活パーティーの受託などで地方自治体とも連携していることや、子会社Diverseが、婚活サイト「youbride(ユーブライド)」を展開しているほか、LINE <3938> と共同でマッチングサービス事業を展開している点なども注目だ。

更に、リンクバル <6046> [東証M]は、イベントECサイト「街コンジャパン」の運営が主力だが、イベント参加者向けに恋活・婚活アプリ「CoupLink(カップリンク)」を展開しており関連銘柄といえる。オンライン婚活向けにビデオチャットサービス「V BAR(ブイバー)」や1対1で異性と交流することができるビデオ通話サービス「5minutes(ファイブミニッツ)」も展開しており、ウィズコロナの婚活にも対応しているようだ。

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