新型コロナ第3波襲来、「抗ウイルス素材」関連株に高まる物色機運 <株探トップ特集>

特集
2020年12月21日 19時30分

―感染拡大でニーズ上昇、20年の市場規模は前年比5割増の調査結果も―

新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、抗ウイルス素材や製品に注目が集まっている。マスクの着用や手洗い、3密回避など新型コロナウイルスの感染を避ける行動が求められるが、やはりそこには限界がある。こうした状況下、抗ウイルス加工を施した製品を利用することも感染対策のひとつとして関心が高い。急速に需要が拡大する抗ウイルス素材を手掛ける関連株の動向を追った。

●用途拡大し需要急上昇

18日、米製薬大手のファイザーが新型コロナウイルスワクチンの製造販売承認を厚生労働省に申請した。光明といえるが、かつてない短期間での開発でもあり、未知数な部分も多いだけに、期待の半面、不安も隠せない。待望のワクチン接種が近いことは歓迎されるが、足もとは強烈な新型コロナ第3波が襲っている。新規感染者数が急増し医療崩壊が叫ばれるなど、まさに非常事態下において抗ウイルス製品へのニーズが急上昇、さまざまな製品への利用が拡大している。

市場調査の富士経済でも新型コロナウイルス感染症の流行を受け急拡大する「抗ウイルス素材の国内市場の調査結果」を発表。抗ウイルス素材の国内市場について、2020年(見込み)は19年比52.8%増の136億円になるとしており、21年についても19年比で2倍近い172億円が予測されるという。「新型コロナ感染症対策として、生活空間での感染のリスク低減が重視されていることにより、抗ウイルス作用を有する素材やその応用・関連製品の需要が急増している」とし、「建材・インテリア、医療・寝装品、衛生用品などで幅広く需要が増える」と分析している。

日常生活で身近に存在する抗ウイルス素材としては、まず繊維が挙げられる。当然のことながら、外出することで感染への危険性は増し、衣類に付着したウイルスを室内に持ち込むことも考えられる。抗ウイルス加工を施した衣類を着用することにより感染リスクを低減できる可能性もあり、現在では幅広い製品に採用されている。

●シキボウは「フルテクト」引き合い活発化

シキボウ <3109> は、11月19日に同社の抗ウイルス加工「フルテクト」が新型コロナウイルスに対する効果を確認したと発表。フルテクトは、4月にコロナウイルスに対して抗ウイルス効果があるとの試験結果が得られたことを開示していたが、新たに試験機関による抗ウイルス性試験の結果、新型コロナウイルスに対しての効果が確認されたという。同社では「フルテクトは、以前から防護服やユニフォームなどで活用されていた。4月の時点でも問い合わせは多くあったが、11月の発表を契機に引き合いは更に活発化している。ここにきては一般衣料に広がりを見せてきており、一段の需要拡大を期待している」(広報)と話す。業績は新型コロナウイルスの影響を受けて厳しいが、11月10日に発表した21年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結経常利益は前年同期比79.5%減の1億4900万円に落ち込んだものの、従来の1億円の赤字予想から一転黒字で着地している。株価は、11月の新型コロナウイルスへの効果発表を受けて翌日には急伸し、一時182円高の1190円まで買われた。現在は”往って来い”の状態で1050円近辺でもみ合うが、じわり調整一巡感も漂う。

●クラボウ「クレンゼ」、東レは「マックスペックV」

クラボウ <3106> も独自の抗菌・抗ウイルス機能繊維加工技術「クレンゼ」で、この分野を深耕している。同社は9月、クレンゼで加工した繊維素材に、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果があることを確認したと発表し、同ウイルスが99%以上減少したという。11月には、クレンゼを活用した医療・介護従事者向け防護ガウンの販売をスタートしており、洗濯して繰り返し使用できることから医療資材の不足や廃棄量の抑制でも貢献しそうだ。業績は感染拡大による取引先の店舗休業や個人消費の低迷の影響を受けて多分に漏れず厳しいものの、抗菌・抗ウイルス機能素材の販売は好調としており、感染第3波の襲来でクレンゼの活躍期待が高まる可能性もある。

また、東レ <3402> は優れた洗濯耐久性と着用快適性を有する抗ウイルステキスタイル「MAKSPEC V」(マックスペックV)を開発したと10月に発表。マックスペックが持つ抗ウイルス性能により、テキスタイルに付着したウイルスのエンベロープを破壊することで、ウイルスの数を減少させるとしている。サービスウェア、メディカルウェア、ワーキングウェア、スクールウェアなど各分野のユニフォーム用途から、スポーツウェア、カジュアル・ファッションウェアまで幅広い用途に向けて提案を行う計画で、来年1月から販売を開始する予定だ。11月には、「リチウムイオン2次電池(LiB)用無孔セパレータの創出に成功」したと発表するなど、切り口が多彩な点も魅力といえる。

●小松マテーレは「エアロテクノ」開発

織編物・染色加工大手の小松マテーレ <3580> は9月に、コロナウイルス(ヒト)を高速低減させる新素材「エアロテクノ」の開発に成功したと発表。同社が今年2月に上市した、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果を持つ可視光応答型光触媒素材「ウイルスシールド」を更に進化させたもので、感染能力を大幅に抑えることができるという。エアロテクノ加工素材で、人への感染能力が確認されているコロナウイルスによる効果確認試験を行ったところ、室内レベルの光照射下において 2 時間で99.9%以上の感染能力低減効果を確認できたとしている。業績もコロナ禍において健闘している。21年3月期通期は、売上高が前年比17.3%減になるものの、経常利益は同2.2%増の22億円になる見通しだ。

前述の富士経済の調査でも、「抗ウイルス加工繊維の需要は、新型コロナウイルス感染症の流行までは小規模であったが、20年に入り急増しており、市場は19年比8.5倍」が見込まれるという。また、「従来はマスクをはじめとした衛生用品や医療・介護用ユニフォームなどでの採用が中心であったが、20年は衣料・寝装品で増加している。抗ウイルス成分の繊維への定着性や洗濯耐久性の向上など改良が進んでおりインナーや肌着、婦人服、紳士服、子供服、カジュアル衣料品などへの採用拡大が期待される」と分析している。

●攻勢強める板硝子、再生エネでも注目

抗ウイルス素材はさまざまな用途に活用されており、ガラス分野では日本板硝子 <5202> が攻勢を強めている。10月に抗ウイルスガラス「サニタイズ」の販売を北米、南米及び欧州で開始した。学校、病院、レストラン、ホテルなどの建物に用いられるガラスの屋内側、また乗り物の窓ガラスへと用途も広くニーズを捉えそうだ。11月には、光触媒の技術を活用した抗ウイルスガラス「ウイルスクリーン」簡易衝立(ついたて)キットを発売している。ガラスに付着したウイルスの活性を低減させることから、ガラス面の消毒の必要がなく、清掃時の感染リスクを低減することが可能だ。また、「米国の太陽電池パネル用ガラス新工場(東京ドームとほぼ同じ広さ)、稼働開始」と同月に発表しており、バイデン次期米政権の環境政策転換から再生エネルギーへの関心が高まるなか、この分野でも注目を集めそうだ。業績は改善傾向にあり、株価は下値模索を経て、ここにきては上値を慕う展開にある。

●建材分野でニーズに応えるアイカ

建材分野でも抗ウイルス化が進んでいる。メラミン化粧板の国内大手のアイカ工業 <4206> もウイルス対策製品で攻勢をかけている。今月2日、同社の抗ウイルス剤練込メラミン化粧板「アイカウイルテクト」が、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果があるとの試験結果を公表。更に15日には、ハードコートフィルム「ルミアート抗菌・抗ウイルスフィルム」についても同様の効果を公表している。同フィルムは既存のディスプレーなどに貼るだけで、表面を抗菌・抗ウイルス仕様にすることが可能だという。

直近では、大建工業 <7905> が空気中や手から製品上に付着した特定ウイルスの数を減少させる同社独自の抗ウイルス機能「ビオタスク」を室内ドアの錠部分、収納扉用ハンドル、階段部材笠木セットなどに、新たなオプション仕様として設定した。12年に業界に先駆けてビオタスクの技術を確立。以降、住宅・非住宅を問わず、カウンター、手摺、ドアのにぎりバーといった多くの人が手で触れる接触部位を中心にいち早く製品展開。コロナ禍を背景に、ビオタスクに対する問い合わせ数は急増しており、今後も引き続き高い関心が見込まれることから、対応製品ラインアップを拡充した。

新型コロナウイルスのワクチンへの期待感は増すばかりだが、日常生活がいまだ取り戻すことができない状況下において、抗ウイルス素材に対する消費者のニーズは大きい。新型コロナウイルスだけではなく、さまざまなウイルスへの対策や衛生志向が高まったことにより、今後も抗ウイルス素材、製品の需要拡大が見込まれるなか、関連銘柄の活躍のフィールドは広がる一方だ。

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