米国株式市場見通し:年明けジョージア州上院決選投票が鍵
来週も年末にかけ、サンタクロースラリーが続きそうだ。大規模な金融・財政支援が当面の景気の低迷を支え、ワクチン接種開始で来年後半にも経済が正常化に一段と近づくとの期待に基づき新年度に向けた買いが先行しそうだ。一方で、トランプ大統領は議会が承認した2021年度予算案・追加経済対策案で拒否権を行使する可能性を示唆したため再び追加経済対策の行方に不透明感が浮上。つなぎ予算で回避される可能性が強いが、政府機関閉鎖などのリスクには注意したい。大統領は、無駄な支出を排除し、国民への現金給付金を引き上げるべきと議会に修正を要請した。議会の対応がなければ、追加経済対策の実施が来年に持ち越されることになり短期的に景気が一段と悪化するリスクにさらされる。
年明けは5日に予定されているジョージア州の上院決選投票の結果が鍵となりそうだ。投資家は次期民主党政権下、ねじれ議会で、大きな政策変更が困難になるとのシナリオのもと、21年後半の経済の強い反動を期待し株式を購入してきた。万が一、上院も民主党主導になった場合、ブルーウェーブのシナリオが再燃し、増税や規制強化といったリスクに経済が直面することになる。投資家心理も悪化し、株式相場も史上最高値付近から下落する可能性が警戒される。逆にねじれ議会が確実になると、相場の上昇を一段と支援することになりそうだ。
バンク・オブ・アメリカは調査で、対象となった投資家の現金保有率が2013年以来の低水準となっており、新年相場に警鐘を鳴らした。ワクチン接種が広範に行き渡り、特に来年後半に向けての経済の強い反動を織り込み、投資家は現金の保有率を縮小させ、リスク資産に投資している。株式や商品などのリスク資産への投資比率は2011年2月以降で最も強気に転じたという。
経済指標では、12月ダラス連銀製造業活動(28日)、10月S&P住宅価格指数(29日)、11月卸売在庫、12月シカゴPMI(30日)、新規失業保険申請件数 (31日)、12月ISM製造業景況指数(1月5日)、12月ADP雇用統計、12月マークイットPMI、11月製造業受注(6日)、新規失業保険申請件数(1/2まで)、11月貿易収支、12月ISM非製造業景況指数(7日)、12月雇用統計(8日)、などが予定されている。
また、連邦準備制度理事会(FRB)は6日に12月連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を公表する。この会合で、FRBは量的緩和(QE)のガイダンスを強化し、より長期にわたりプログラムを維持する姿勢を明確化。FRBの緩和姿勢やQE拡大・構成修正などの可能性を議事録内容でさらに確認したい。予想以上のハト派色が見られた場合、株式相場を支援する可能性がある。
なお、1月1日は休場となる。
企業決算ではクルーズ船運営のカーニバル(6日)、家庭用品小売りのベッド・バス・アンド・ビヨンド、アルコール飲料会社のコンステレーションブランズ、半導体メーカーのマイクロンテクノロジー、通信のTモバイル(7日)が予定されている。パンデミックが収束せず営業開始のめどがたたないカーニバルは引き続き損失が警戒される。一方、新型コロナウイルス第3波の影響で外出自粛が続くなか、アルコールの売り上げが急増しており、コンステレーションブランズの決算は今期も強い結果が予想されている。さらに、在宅勤務の継続で、マイクロンテクノロジーやベッド・バス・アンド・ビヨンドも好決算が期待される。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》