馬渕治好氏【新春特別編 2021年株式市場大展望 今年はどうなる?】(1) <相場観特集>

特集
2021年1月4日 18時30分

―新型コロナへの不安と政策期待の狭間で紡ぎ出される次のシナリオ―

2021年相場の幕がついに上がった。昨年は新型コロナウイルスに翻弄されながらも米国株市場を主軸とする世界的な過剰流動性相場が株高を演出、日経平均株価は2万7000円台に突入し30年ぶりの高値圏に舞い上がった。さて、今年はどういう相場展開が待っているのか。新型コロナウイルスに対する“不安”と各国政府や中央銀行による“政策期待”の綱引きが続くなか、ここから考えられるシナリオを第一線で活躍する市場関係者2人にずばり予想してもらった。

●「足踏み交えながら年後半に3万円大台目指す」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

21年の株式相場は、短期的には昨年11月以降の想定以上に急ピッチな上昇を見せた分の調整が1割程度は生じると見込むが、その短期反落後は、長期視野に立って世界的株高トレンドに変化はないとみている。変異種を含め新型コロナウイルスの感染拡大は懸念材料ながら、財政出動や金融緩和効果を背景に主要国の景気や企業収益の持ち直しが続いている。当然ながら一本調子とはいかず、足踏みを交えながらの緩やかな回復ではある。しかし基本的には、各国政府や中央銀行の景気浮揚に向けた政策的な後押しを背景として、年末にかけて株価は上昇基調をたどり、為替は円安基調となることを予想している。

結論を先にすれば、21年の日経平均の上値メドとしては1~6月で2万8000円前後、そして年末までには3万円大台チャレンジの場面が訪れるとみている。世界の主要国では新型コロナの感染拡大が続いているが、コロナが景気に与える悪影響という点では峠を越したと判断してよさそうだ。ただし足もとの経済動向は、「リベンジ消費」など落ち込みの反動や各国政府や中央銀行による政策効果が反映されたものであり、それも一巡しつつあることから、今後の景気回復速度は非常に緩やかなものとなることが予想される。

米国経済はコンファレンスボードによる消費者信頼感指数をみると20年4月が大底となっており、そこを境に消費者心理は改善傾向に入ったと考えられる。また、ハードデータについても、小売売上高や住宅着工、自動車販売台数、鉱工業生産などそのほとんどにおいて20年4月が底となっている。日本に関しては米国にやや遅れて5月が景気の底ではないかと考えており、その後はやはり回復色をみせている。欧州や中国の経済指標も改善色をみせており、世界経済全体でも回復基調が続く流れにある。

日米ともに20年の年末にかけての株価上昇過程で予想PERは大きく跳ね上がったが、だからといって大きく反落する可能性は低い。株式市場は先行き一段の企業収益の回復を織り込んでいる段階にある。主要国の経済活動が、コロナ禍以前の水準を取り戻すのは21年末ごろと見込んでいるが、主要国の株式市場は21年後半あたりの企業収益水準までを展望し、反映したものと考えられる。

とはいえ景気の腰は依然として脆弱だ。政府に対しては、引き続き財政面からの景気支持が求められ、日銀の金融政策も緩和スタンスが維持される方向となろう。21年も株式市場に吹く追い風がやむことはない。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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