獅子奮迅の「エヌビディア」関連株、フィジカルAI戦国時代で躍動へ <株探トップ特集>
―じわり見直し機運台頭、サプライチェーン連携強化で反攻姿勢強める日の丸企業―
群雄割拠の フィジカルAI戦国時代を迎え、各陣営は覇権を握るべく世界規模での連携を一段と強めている。米エヌビディア<NVDA>のジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)も、世界各国の企業との半導体サプライチェーン連携を強化し、自陣営への取り込みに懸命だ。こうしたなか、先月中旬にはファン氏が来日。これに合わせ、トヨタ自動車 <7203> [東証P]や日立製作所 <6501> [東証P]をはじめとする日本の錚々(そうそう)たる企業が、フィジカルAIに関わるさまざまな取り組みで、エヌビディアとの協業やその拡大戦略を発表している。ただ、日本を代表するようなトップ企業以外でも、同社と関係が深い企業は数多く存在する。AIに対する過剰投資懸念がくすぶるなか波乱展開をみせる株式市場だが、連携を強める銘柄のなかには、株価面で戻り歩調を強める銘柄も少なくない。エヌビディア関連銘柄の動向を追った。
●“やきとん会合”で親交深める
7月15日、東京・神田の居酒屋にファン氏の姿があった。日本の主要半導体サプライチェーン関連企業のトップらと親交を深めるために、大衆的なやきとん居酒屋で会合を行った。日本の半導体や電子部品・製造装置メーカーとの関係を一層深め、サプライチェーンを強化する狙いがあることは言うまでもない。その翌16日、エヌビディアはソニーグループ <6758> [東証P]、ソフトバンク <9434> [東証P]、NEC <6701> [東証P]、ホンダ <7267> [東証P]を中核に国産のAI基盤モデルを開発するために設立された新会社「Noetra(ノエトラ)」と連携し、フィジカルAIの実現に向けた国家規模のAIファクトリーを立ち上げることを発表した。
同日には、昨年10月にエヌビディアと戦略的協業を拡大すると発表していた富士通 <6702> [東証P]が、ロボット産業界を牽引するファナック <6954> [東証P]、安川電機 <6506> [東証P]、川崎重工業 <7012> [東証P]各社と、エヌビディアの技術を取り入れたフィジカルAIの社会実装に向けた事業検討を開始すると発表。三菱重工業 <7011> [東証P]とはAIデータセンター向け冷却事業の強化を、トヨタとは自動運転車両、ロボティクス、都市の各分野においてフィジカルAIの推進を打ち出している。
●巧みなリップサービス
またエヌビディアは、次世代の世界モデルの発展に取り組むグローバルなエコシステム構想「Cosmos Coalition(コスモス・コアリション)」を日本に拡大するとしており、多くの大手企業が参画を表明している。このなか、7月22日にグロース市場に上場した、日本初の自動運転専業企業ティアフォー <593A> [東証G]も参画企業として名を連ねており、同社の今後の展開からも目が離せない。
赤沢亮正経済産業相は7月17日の閣議後の記者会見で、エヌビディアと日本企業との提携について「(ファンCEOから)次の産業革命の基盤であるフィジカルAIは日本でつくられるべき、との力強いメッセージをもらった」としたうえで、「本当にこれほど心強いことはないという以外に言いようがない」とコメント。これについて、「ファン氏はリップサービスが、極めて巧みな人だ。どこの国に行っても、相手国の関係者が小躍りするような発言をしている」(証券ジャーナリスト)と冷めた見方もある。ただ、業界関係者からは「いまのところ、この波に乗るしか選択肢がない」という声も聞こえてくる。官民一体でエヌビディア詣でが繰り広げられるなか、まさに日本のAI産業の命運はエヌビディアが握っている状況のようだ。AI・半導体関連株への底入れがいつになるかはいまだ見通せないが、エヌビディア関連株の現在地を確認しておくことは重要だ。
●恩人セガサミー「ずっと大切な存在」
こうしたなか、エヌビディアの“恩人”ともいえるセガサミーホールディングス <6460> [東証P]の動向にも関心が集まっている。1990年代半ばにエヌビディアは倒産危機に陥ったが、出資などの支援により窮地の同社を救ったのが「セガ」だったという。ファン氏が来日した7月15日には、セガとエヌビディアが秋葉原で特別イベントを開催。セガによると、同氏はここで「セガの援助がなければ、エヌビディアが今日お伝えしていることを実現できなかった」とし、「これからもずっと大切な存在」であると述べたという。他社とは別格ともいえる深い関係性を持つ両社なうえに、エヌビディアの祖業がゲーム用GPUメーカーである点も、今後の連携に思惑を膨らませる。セガサミーが前週末7日の前場取引終了後に発表した27年3月期第1四半期(4~6月)の連結営業損益は、23億8400万円の黒字(前年同期は5億1900万円の赤字)で着地。通期の同利益は、前期比5.6%減の445億円を計画している。
●YEデジタルは取り組み本格化へ
エヌビディアが日本の大手企業との連携を次々に公表するなか、株式市場でにわかに注目を集めたのが、YE DIGITAL <2354> [東証S]だった。7月16日、同社はエヌビディアと協業し、フィジカルAI分野における取り組みを本格化すると発表したことで、株価は急動意。YEデジタルの倉庫自動化システム(WES)とエヌビディアの技術連携により物流及び工場内搬送工程の高度化を推進するという。YEデジタルは、6月25日に発表した27年2月期第1四半期(3~5月)連結決算で、最終利益が大幅減益になったことが嫌気され急落に見舞われたが、この協業発表を受け株価は急速に出直る。7月中旬には800円水準だった株価が、同月27日は1698円まで買われ2倍化するなど、物色の矛先が向かったことは記憶に新しい。現在は調整し1300円を挟み頑強展開をみせており、ここからの動向に注目が集まっている。
●ジーデップはエリートパートナー
ジーデップ・アドバンス <5885> [東証S]は、エヌビディアのエリートパートナーとして株式市場でも強い存在感をみせている。NPN(NVIDIA Partner Network)最初期からのパートナーであり、これまでエヌビディアとの強固な信頼関係を積み上げてきた。昨年には、エヌビディアが定める厳格な認定基準を満たしたトレーニングを受講し、「NVIDIA AI Factory Specialization」の認定を取得。先月30日には、この専門性をより組織的で継続的に顧客に提供するため専門組織「AI Factoryチーム」を新設したことを公表している。27年5月期単独業績予想で営業利益12億6800万円(前期比13.6%増)を計画し、連続で過去最高益を更新する見通しだ。株価は7月29日に直近安値2494円をつけた後は戻り歩調に転じ、現在は3000円近辺で推移している。
●ABEJA、強固な協業関係を構築
ABEJA <5574> [東証G]は、エヌビディアと2017年の資本・業務提携以来、強固な協業関係を構築してきただけに、他の連携企業とは一線を画す存在だ。6月2日には、最新モデル「NVIDIA Nemotron 3」を ABEJA Platform に搭載することを発表。同社では、同モデルの追加学習に取り組むことで、より優れたAIエージェントの構築及びミッションクリティカル(企業などの事業の遂行に必要不可欠な仕組みや工程)業務におけるAI活用の推進を目指すという。先月15日には、26年8月期の単独業績予想について、営業利益を6億円から7億1000万円(前期比59.2%増)に上方修正。連続の最高益更新を計画しており、成長ロードを快走する。株価は、6月12日に2041円まで売り込まれ年初来安値を更新も、ここを起点に切り返し上値指向を強めている。
●シリコンスタは「日本のAIエコシステムパートナー」
シリコンスタジオ <3907> [東証S]にも目を配っておきたい。先月16日に都内で行われたエヌビディアの主催イベントに、同社の梶谷眞一郎社長が招待されたことを翌日の取引終了後にXで公表。来日中のファン氏から「日本のAIエコシステムパートナーとして紹介」されたという。同社では、「エヌビディアとのパートナーシップを更に強化し、フィジカルAIビジネスを推進していく」としており、これを受けて株式市場でも一気に注目が集まった。シリコンスタはハードウェア/ソフトウェアベンダー、インテグレーターなどからなる「NVIDIA Omniverse Partner Council Japan(エヌビディア・オムニバース・パートナー・カウンシル・ジャパン)」に参画している。同社は7月13日、26年11月期単独業績予想について、営業損益を1億2200万円の黒字から2億円の赤字(前期1億4700万円の黒字)へ下方修正。株価は大きく売られる展開になったが、「ファン氏による紹介」を刺激材料に業績悪を織り込む形で反騰態勢に入っている。
●幅広いソリューションを提供するマクニカHD
半導体商社大手のマクニカホールディングス <3132> [東証P]にも注目したい。同社はエヌビディアの正規1次代理店で、エヌビディア製品を活用した幅広いソリューションを提供。PoCから本番運用まで伴走することにより、顧客のニーズを捉えている。7月27日、27年3月期第1四半期(4~6月)の連結決算を発表し、売上高が前年同期比39.7%増の3934億4300万円、営業利益が同2倍の165億900万円と大幅な増収増益で着地した。成長分野に強みを持つ技術商社として知名度が高いが、ここにきてはペロブスカイト太陽電池やフィジカルAI、自動運転といった分野にも活躍領域を広げており株式市場でも注目度が高い。株価は上場来高値圏で舞う展開にあり、ここからの動向に投資家の熱い視線が向かっている。
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