澤田遼太郎氏【米利上げ観測後退、7万円復帰の可能性は?】 <相場観特集>
―米国で重要経済指標が続々、リスク許容度拡大シナリオに現実味も―
週明け10日の東京株式市場で日経平均株価は3日ぶりに急反発した。前週末の米7月雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想に反して減少し、米連邦準備理事会(FRB)による9月利上げ観測が後退。これを受けAI・半導体銘柄を中心に幅広く買われた。今週は米国で消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)など物価指標の発表を控えている。日経平均は再び7万円台に復帰できるのか。ハイテク株を中心に日本株全体をカバーする東海東京インテリジェンス・ラボの澤田遼太郎氏に、今後の相場展開と注目すべきセクターを聞いた。
●「AIツルハシ銘柄への買い戻しに勝機あり」
澤田遼太郎氏(東海東京インテリジェンス・ラボ 投資戦略部 シニアアナリスト)
前週末の米雇用統計の結果を受け、週明けの日本市場は日経平均、TOPIXとも上昇した。日経平均は先週まで、AI・半導体の再評価や中東情勢の緊張緩和期待から、戻りを試していたものの25日移動平均線に跳ね返され、足踏み状態にあった。これを完全に上抜けた形で、今日はワンタッチだったものの6万7000円超えと次のハードルとなる50日線突破は明確に視野に入ってきている。
今週は12日の米CPI、翌日の米PPIと重要な指標発表が控えている。予断を許さないとはいえ、個人的には雇用統計同様に下振れする可能性もあると考えている。ここでインフレ鈍化が示され、FRBの利上げ観測が更に後退すれば、今週内の日経平均7万円復帰もあり得るのではないか。来週以降も19日の6月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録公開や、21日の日本のCPI発表、そして27日からのジャクソンホール会議と続く。これらの結果によって、株価が左右される局面が続くだろう。確かなことは、当面、相場は金融政策を中心に動くということだ。
着目したいテーマは、“AIツルハシ銘柄”への買い戻しだ。7月以降、 AI・半導体株から他のセクターへの資金循環が始まり、実際、足もとで投資家の資金の一部は銀行株などに向かっているが、大口の投資家にとってAIに代わる投資テーマは簡単には現れない。米国ではAI企業の選別が進んでいるが、AI企業間の勝敗に関わらず、需要増が見込めるツルハシ銘柄が多い日本企業は恵まれた市場環境にある。今期2度目の上方修正を発表したフジクラ <5803> [東証P]やアドバンテスト <6857> [東証P]などを筆頭に、こうした銘柄への資金の還流は続くのではないか。AI以外では任天堂 <7974> [東証P]、ソニーグループ <6758> [東証P]、バンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]などの ゲーム関連に着目したい。足もとでゲーム関連の株価は底入れしつつある。NAND型を中心にメモリー価格の高騰も収まりつつあり、当面は買い戻しの基調が続くだろう。
今週は、例年なら夏枯れ相場となる時期だが、今年はそうした実感はない。これまでに経験したことがないほど、投資家の市場への関心の高さを感じる。先に楽観的な見通しを記したが、そのまま上昇トレンドへ向かうかと言えば、そうした判断は時期尚早だ。月末にかけて続く、日米の金融政策に関わる各種指標発表から目を離すべきではない。8月末時点で日経平均は6万5000円から7万円の間で着地するとみている。もし、今週末にかけて7万円を突破するとしても、ある程度の調整が入るに違いない。
(聞き手・樫原史朗)
<プロフィール>(さわだ・りょうたろう)
関西学院大学卒業後、エース証券入社。エース経済研究所にて、ストラテジスト、セクターアナリスト(IT、コンテンツ、外食)を歴任後、2022年に東海東京調査センター(現・東海東京インテリジェンス・ラボ)に入社。日本株シニアアナリストとして、新技術の社会実装を主要な研究テーマとし、現在はAI・半導体・ロボティクスなどの成長分野を中心に調査。技術が「研究開発」から「収益化」へ移行する過程に着目し、投資機会を発掘している。
株探ニュース