プラチナは4年半ぶり高値後に急落も、中長期の強気見通しは継続 <コモディティ特集>

特集
2021年1月13日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は、年明けにリスク選好の動きや金堅調を受けて急伸し、2016年8月以来の高値1129.02ドルをつけた。新型コロナウイルスのワクチン普及で中長期の景気回復が見込まれたほか、米ジョージア州の上院選決選投票で民主党が優勢となり、大規模な景気刺激策に対する見方から株高に振れたことも支援要因になった。

しかし、米国債の利回りが上昇しドル高に転じると上値を抑えられた。12月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想外に減少し、リスク回避のドル高が進むと急落した。さらに新型コロナウイルスの変異種による感染急増で短期的に景気の下振れリスクが残ることも圧迫要因になった。世界の感染者数は9000万人を超え、収束の兆しは全く見られず、短期的には調整局面が続くとみられる。今回の乱高下は先物市場での短期筋主導の値動きであり、中長期の景気回復見通しからプラチナETF(上場投信)に投資資金が流入すれば、価格を押し上げる要因になるとみられる。

●プラチナは米新政権の景気刺激策などを確認

プラチナは昨年11月の安値835.50ドルから急速に値を戻し、1100ドル台を回復した。しかし、年初の買いが一巡すると急反落し、1009.97ドルまで下落。フィボナッチ・リトリースメント38.2%(1016.90ドル)の水準までの調整局面となった。少なくとも北半球の寒さが和らぐまで新型コロナウイルスの感染拡大が続くことを考えると、リスク回避の動きからフィボナッチ・リトリースメント61.8%(947.62ドル)の水準まで下落する可能性がある。

ただ、ワクチン接種が進むことや、20日に米国で誕生するバイデン政権で追加の景気刺激策が見込まれており、中長期の景気回復見通しに変わりはない。3年連続の供給不足見通しであり、リスク選好の動きが戻れば再び上値を試すとみられる。

トランプ米大統領が年末に9000億ドル規模の追加経済対策と1兆4000億ドル規模の歳出法案に署名したが、個人給付額を2000ドルに引き上げる法案は米上院で採決が見送られた。バイデン次期米大統領は「数兆ドル」規模の追加財政支出を約束しており、個人給付額の引き上げなど議会で通過しやすい法案から手をつけるとみられる。ただ、当面はトランプ米大統領の弾劾手続きが見込まれており、景気刺激策の導入が遅れる可能性が出ている。

●NYプラチナの大口投機家の買い越しは昨年3月以来の高水準

プラチナETF残高は1月12日の米国で38.72トン(11月末38.32トン)に増加、8日の英国で18.86トン(同18.94トン)、11日の南アフリカで16.07トン(同16.65トン)に減少した。新型コロナウイルスのワクチン接種開始で景気回復期待が高まったが、短期的な景気の下振れリスクが残り、戻り場面で一部利食い売りが出た。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、1月5日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万7622枚となり、昨年3月17日以来の高水準となった。10月20日の7825枚を当面の底として買い越しを拡大した。昨年11月から年明けにかけての急伸はニューヨークの先物市場での大口投機家の新規買い・買い戻しが主導した。ニューヨーク先物市場の指定倉庫在庫は11日に65万2885オンス(12月末62万3074オンス)に増加し、実需筋の売り圧力が高まった。

今年のプラチナはに対する価格差も焦点である。金との価格差は昨年1月に中国が新型コロナウイルスを公式に発表した時点でマイナス550ドルだったが、ロックダウン(都市封鎖)で景気後退に突入すると、マイナス1077ドルまで拡大した。

昨年11月には、ワクチン開発期待で約1ヵ月の間にマイナス1059ドルからマイナス780ドルまで価格差が縮小したが、年明け時点でマイナス782ドルと新型コロナウイルス発表前の水準を回復していない。景気回復とともに金との価格差は縮小するとみられるが、新型コロナウイルスの収束の兆しが出るまではもみ合いとなる可能性がある。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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