明日の株式相場に向けて=3万円一気乗せ、ワクチンが呼び込む海外マネー
週明け15日の東京株式市場は市場関係者も驚嘆する強さで、日経平均株価は564円高の3万84円と急反発、1990年8月2日以来30年6カ月ぶりに3万円大台乗せを果たした。
その瞬間はあっけなく訪れた。寄り付き強調展開で始まった日経平均は取引開始20分あまりでその記念すべきメルクマールに到達した。3万円大台というのは、まだバブル崩壊前の匂いがするといってもよい。90年代後半の金融危機、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマン・ショックという長い“逆バブル相場”のトンネルをくぐり、アベノミクス相場がスタートして戻りトレンドに転じてからも、日経平均3万円という水準はその景色を想像すらできなかった高峰であった。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大という歴史に刻まれるであろうかつてない逆境が、世界的な株高局面を創成した。元来、全体株価は個別企業の業績をベースとした株価の積み上げで、それらの企業評価の集大成ともいえるべきものだが、実際はその時々の陽の傾きによって大きく変化する影のようなものだ。カギを握るのはその時の太陽の位置であり、昨年春以降に売り方が見誤った過剰流動性相場の本質はそこにある。現在はコロナ駆逐のために打ち出された最大級の財政出動や超金融緩和政策が、企業のファンダメンタルズとかけ離れた長い影を創り出している。
きょうは朝方取引開始前に発表された10~12月のGDP速報値がコンセンサスを上回ったことが景気づけとなって、日経平均は140円あまりの上昇でスタートしたが、そこからつむじ風に巻かれるように一気に舞い上がり、9時20分過ぎには上げ幅を480円強まで広げ3万円大台に乗せた。市場では「日本でのワクチン普及期待が先物を絡めた外国人買いに一気に火をつけた」(国内ネット証券マーケットアナリスト)という。つまり、米製薬大手ファイザーの新型コロナワクチンが日本国内で特例承認され、ワクチン接種が米国同様に本格化するとの見方が広がったことが、アフターコロナを見込んだ海外の投資マネーを呼び込む号砲となった。大型株中心に怒涛の買い注文が日経平均を担ぎ上げた。朝方に日経平均が3万円大台に乗せた後、さすがに伸び悩む動きとなったが、後場は改めて買い直される展開で、この日のほぼ高値圏で着地した。
一方で中小型株は蚊帳の外に置かれる銘柄も多く、東証2部指数や日経ジャスダック平均はマイナス圏で着地、マザーズ指数はプラスだが、朝方は前日終値を下回って推移する場面があった。日経平均が500円超上昇し、3万円大台をいとも簡単に突破してしまう今の相場は、(空売り筋は除き)個人投資家にとっても大歓迎のはず。しかし、市場の見立てでは「個人投資家は、東証1部の銘柄を10年越しで保有しているような長期投資家は別として、スイングトレードを主眼としている大部分の短期投資家は思うように利益が伸びず、白けた感じとなっている」(中堅証券ストラテジスト)と指摘する。海外投資家が買い攻勢に舵を切ったとはいっても、「今さら噴き上げた主力大型株を買うという選択肢を個人投資家は取りにくい」(同)という。
ただ、底上げ状態が続いている以上、中小型株にも早晩資金は流れ込む。焦らず中小型株の目先緩んだところに着目していくのは戦略的に間違ってはいない。自動車部品向けプラスチック加工を手掛ける旭化学工業<7928>、活況を呈すオンラインセミナー関連でイード<6038>に着目。株高で証券業界への追い風が強まるなかインタートレード<3747>などもマークされる。今月に入って取り上げたソディック<6143>やアドバンスト・メディア<3773>も上げ足を強めており継続注目。半導体関連では引き続き東京エレクトロン デバイス<2760>やQDレーザ<6613>に勢いがある。
あすのスケジュールでは、20年12月の第3次産業活動指数など。海外では豪中銀の金融政策決定会合議事要旨、2月のZEW独景気指数、2月のNY連銀製造業景況感指数など。中国、台湾、ベトナム株市場は休場となる。(銀)