訪れた飛躍の時、10年超の時を経て最高益更新「大復活銘柄」を狙え! <株探トップ特集>

特集
2021年2月22日 19時30分

―新たなる成長ステージへ、雌伏期間を経て最高益復帰を見込む8銘柄をリストアップ―

コロナ禍で大打撃を受けた上場企業の収益は、想定を上回るペースで改善が進んでいる。4-12月期決算発表が行われた1月1日から2月16日までの期間に、21年3月期通期の経常利益予想を上方修正した企業は656社に上った。全体のおよそ3社に1社が上方修正に踏み切った格好だ。中国や米国を中心に需要が戻ってきたことで、自動車や電機など製造業を中心に急回復をみせている。上方修正ラッシュに沸いた中間期決算シーズンを上回る企業が増額修正しており、株価にも大きなインパクトを与えた。ここでは業績上方修正を発表した企業のうち、10年以上ぶりに利益記録を塗り替える見通しになった“大復活”銘柄に注目。長い低迷や雌伏期間を経て、新たな成長ステージを走り出す企業群を追った。

●9四半期ぶり増益で回復基調が鮮明に

16日までに4-12月期決算を発表した2348社を集計したところ、直近3ヵ月実績である10-12月期(第3四半期)の経常利益は前年同期と比べ30%増加し、9四半期ぶりに増益転換を果たした。自動車や半導体関連をはじめとする製造業がけん引したほか、非製造業では世界的な株高を背景にファンド事業が急拡大し、1兆9200億円もの利益をたたき出したソフトバンクグループ <9984> が全体を押し上げた。足もとの業績が大きな回復をみせたことは30年半ぶりの日経平均3万円突破の原動力にもなった。新型コロナウイルスのワクチン接種も始まり、来期の回復トレンド継続への期待は高まっている。

10-12月期決算を業種別にみると、東証33業種のうち前年同期比で減益だったのは空運、陸運、卸売など10業種で、残りの23業種はプラスと減益業種を大きく上回る結果になった。個別企業に目を向けると、ソフトバンクGのほか、多額の減損損失を計上した前年同期から黒字に復帰した日本製鉄 <5401> 、自動車の生産台数が大きく回復したトヨタ自動車 <7203>巣ごもり需要を追い風にゲーム部門が絶好調だったソニー <6758> などが金額ベースの上位に入った。一方、鉄道や空運は7-9月期に引き続き赤字決算が目立つ厳しい内容となっている。

今回紹介する最高益更新の間隔期数が大きい企業は、利益成長が長期停滞を脱した企業といえ、成長路線への回帰が期待される。以下では、1月1日から2月16日に21年3月期通期の経常利益予想を上方修正した656社の中から、上方修正によって“10期以上ぶり”に最高益を更新する見通しとなった8社をリストアップし、最高益更新の間隔期数が多い順に追っていく。

●クレオスは環境変化に対応して31期ぶり最高益更新へ

GSIクレオス <8101> は足もとの好調な業績を反映する形で、21年3月期の経常利益予想を前回の20億円から34億円(前期比2.8倍)へ上方修正し、実に31期ぶりに最高益を塗り替える見通しとなった。4-12月期は新型コロナウイルス感染拡大の影響で主力の繊維原料や生地は苦戦を強いられたが、継続的に医療・衛生消耗品の需要に対応したほか、ホビー関連領域で利益率の高いプラモデル用塗料・工具などの販売が好調だった。併せて、期末一括配当の計画を引き上げたほか、3月末の株主を対象とする1株から2株への株式分割の実施も発表した。好材料満載のリリースを受けて、株価は約15年ぶりの高値を奪還したが、予想PER8倍台、PBR1倍割れ、配当利回り2%超と見直し余地は大きく、一段の上値に期待したいところだ。

●日コンは5G対応の基地局向けポールの出荷旺盛

日本コンクリート工業 <5269> は配電・通信線などを支えるポールで国内シェアトップ、パイル(基礎杭)でも大手3社の一角をなすコンクリートの総合メーカー。リニア中央新幹線案件では複数工区の内定を獲得しており、来期以降の収益貢献が見込まれる。直近3ヵ月の10-12月期(第3四半期)は経常利益が10億9900万円(前年同期比11倍)と四半期ベースの過去最高を記録した。5G(第5世代移動通信システム)向け携帯電話基地局の増設ニーズを捉えポール製品の出荷が旺盛だったほか、土木製品では利益率が高いPC-壁体の生産が増加したうえ、コスト削減も進んだ。業績好調に伴い、21年3月期通期の経常利益予想を31期ぶり最高益見通しに上方修正している。株価は新値追いを続けているが、指標面に割高感はなく上昇余地は十分にあるとみられる。

●グロブライドはアウトドア需要捉え28年ぶりの高みに

「ダイワ」ブランドを展開する世界トップの釣り具メーカーであるグローブライド <7990> は10日、21年3月期の経常利益が63億円(前期比2.0倍)になりそうだと発表。従来予想の42億円から大幅上方修正となり、1993年3月期に記録した過去最高益を28期ぶりに塗り替える計画を打ち出した。今期は新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や店舗休業の影響で第1四半期(4-6月)業績は落ち込んだが、その後はコロナ禍で3密を避けるスポーツ・レジャーとしてフィッシング需要が急速に高まり、収益が大きく伸びている。4-12月期は国内をはじめ米州、欧州、アジアと全地域で業績を伸ばし、経常利益69億3300万円(前年同期比2.6倍)と高変化を遂げた。修正した通期計画を超過しており、更なる利益上振れが期待できそうだ。

●日特建の業績予想は保守的で一段の上振れも

日特建設 <1929> はダム基礎工事を創業工種として、環境防災、維持補修、都市再生分野などの専門工事に特化した地質に強い建設会社。4-12月期業績は、主戦場とする公共建設投資が堅調に推移するなか、基礎工事などの受注が増加したうえ、工事の施工促進策なども寄与し、経常利益41億3500万円(前年同期比11.8%増)と2ケタ増益を確保した。足もとの受注状況や販管費の抑制を踏まえ、21年3月期の同利益予想を従来の40億円から51億円に上方修正、20期ぶりにピーク益を塗り替える見通しとなった。同社は保守的な業績予想を出す傾向が強く、一段の業績上振れが見込まれる。また、配当性向40%以上の株主還元目標を掲げており、利益水準からみて配当増額の可能性もありそうだ。

●テリロジーは業績低迷期を経て16期ぶり最高益へ

テリロジー <3356> [JQ]は最先端のネットワーク製品や セキュリティー機器の輸入販売を主力とするITソリューションサービス企業。足もとの業績は、サイバー攻撃の脅威が増大するなか、電力会社や工場・ビル管理などの産業用制御システムに対するセキュリティーリスク分析案件の引き合いが旺盛だったほか、IPアドレス管理サーバーでは新モデルへの買い替え需要を背景に大型案件を受注するなど好調に推移し、4-12月期の経常利益は3億4100万円と前年同期の2.4倍に膨らんだ。これを踏まえ、21年3月期通期の同利益予想を従来の2億円から4億9500万円へ引き上げている。13年3月期から5期連続の最終赤字に陥ったが、その後は前期まで3期連続の増収増益とV字回復を遂げ、今期は一気に16期ぶり最高益に復帰する見通しとなった。

●古河電池は自動車生産の回復で成長持続に期待

古河電池 <6937> は自動車向けを主力とする蓄電池メーカー。世界初の宇宙用リチウムイオン電池を開発し、小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載されるなど技術力には定評がある。直近では実用化が困難とされてきた次世代型蓄電池「バイポーラ型蓄電池」を古河電気工業 <5801> と共同開発したことでも注目を集めた。足もとの業績は新型コロナウイルス感染拡大の影響で新車メーカー向けを中心に販売が低調だったものの、車載用バッテリーの取り換え需要やインドネシア子会社の収益性改善などで吸収し、4-12月期の経常利益は27億100万円(前年同期比53.5%増)に伸びて着地。併せて、21年3月期通期の同利益を従来の減益予想から一転して、12期ぶりの最高益見通しに上方修正している。自動車市場の回復基調が鮮明となるなか、来期の成長持続にも期待がかかる。

●高度紙はコンデンサー用セパレーターで世界をリード

ニッポン高度紙工業 <3891> [JQ]はアルミ電解コンデンサー用セパレーターで世界シェア60%を握るグローバルニッチトップ企業。4-12月期の業績は、自動車市場の回復を受けて主力のコンデンサー用セパレーターの車載向け需要が増加したほか、工作機械などの産業機器向けも伸びた。また、電池用セパレーターでは海外向け電気二重層キャパシタ用や車載向け大型リチウムイオン電池用の引き合いが強く、経常利益は前年同期比2.6倍の19億200万円に膨らんだ。好決算を踏まえ、21年3月期通期の同利益予想を前回予想の19億円から25億円へ10期ぶりの最高益見通しに増額修正している。株価は9日に約3年ぶりの高値水準3380円をつけた後は調整含みにあるが、成長期待は強く押し目買い候補として注視したい。

●ケーズHDは家電買い替え需要を追い風に記録更新目指す

家電量販大手のケーズホールディングス <8282> は1日、今期2回目となる通期計画の上方修正を発表。21年3月期の経常利益予想を従来の447億円から530億円へ引き上げ、10年ぶりとなるピーク益更新見通しを示した。特別定額給付金の支給が家電買い替え需要を後押しし、4K・8K大型テレビや冷蔵庫など付加価値の高い生活家電の売れ行きが好調に推移している。株主還元面では、昨年12月から1000万株または100億円を上限とする自社株買いを実施しているほか、第3四半期決算発表と同時に株主優待制度を拡充することも明らかにした。配当は年間30円(前期と同額)を据え置いたが、配当性向18.7%と目標の30%を大きく下回る水準にあり、本決算発表までに増額修正する公算は高いとみられる。

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