明日の株式相場に向けて=最高峰に臨むソフトバンクG
きょう(3日)の東京株式市場は、日経平均株価が150円高の2万9559円と反発。前日の米国株市場でNYダウが引け際に崩れて140ドルあまりの下落となり、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数については230ポイント安と下げがきつかった。こうなると、きょうの日経平均も続落歩調やむなしで、せっかく週初に見せた切り返しが霞んでしまう展開になるかと思われたが、売り物をこなしプラス圏で推移する粘り腰をみせた。
日経平均寄与度の高いソフトバンクグループ<9984>が頑強な値動きを示したことが大きかった。200円程度の上昇で日経平均押し上げ効果という点では大したことがなかったが、きょうは場合によっては日経平均を押し下げるほうでスポットライトを浴びかねなかっただけに、売り方としては当てが外れた感もあるだろう。
前日のナスダック指数の下げが大きかったことは、米ハイテク企業に積極投資するソフトバンクGにとってはネガティブ材料。加えて、前日はスイスの資産運用大手GAMインベストメンツが、経営危機陥っている英金融サービス会社グリーンシル・キャピタルと手掛けていたファンドの凍結を発表した。グリーンシルはソフトバンクGが15億ドル程度出資しているとされるが、仮に破綻した場合は損失を被ることになる。しかし、SBGの株価はどこ吹く風で1万円大台をキープしたまま頑強な値動きを示し、日経平均への指数面でのマイナス影響が回避されただけでなく、市場心理を強気に傾ける役割も果たした。
市場筋によれば「(SBGのグリーンシルへの出資額は)日本円にすれば1600億円程度で、仮に焦げついた場合のダメージは小さくないと思われる。しかし、同社の場合はドアダッシュなど大成功した案件も多くあり、その懐の深さを考えれば大勢に影響なしといってよい」(ネット証券マーケットアナリスト)という。以前に米シェアオフィス大手のウィーワークの経営難の問題で巨額支援を実施した時にもSBGの株価は荒い値動きを余儀なくされたが、その後は安定飛行に戻っている。揺れやすいが非常に頑丈な飛行船であり、いまや時価総額は22兆円に達し、首位のトヨタ自動車<7203>の背中が見えてきた。
そして株価は2000年のITバブルの時につけた19万8000円の上場来高値が再びクローズアップされている。これは分割後修正値に引き直して1万1000円となるが、時価はそこまであと400円、21年ぶりの更新が目前だ。直近、野村証券が同社株の目標株価を「1万1010円」に引き上げたのにも茶目っ気を感じるが、当時ITバブルのアダ花として咲かせた究極の株価に、ついに現実買いでたどり着くシーンを迎えた。
このほか個別株の動きを見る限り、相場の流れは完全に「アフターコロナ」である。「もし、新型コロナウイルスが地球上に存在しなかったとしたら、売られ過ぎている株は何?」という質問の答えに該当するような株を買い漁る、そんな地合いである。これは欧米などでワクチンの普及が予想以上に速く進んでいることが背景にあるが、変異種の出現などを考えればまだ全く油断はならない状況のはず。それでも株式市場というのは良くも悪くも近未来のMAX(予想されるシナリオの上限)を買う傾向があり、理屈で説明できる段階では既に周回遅れとなってしまう。当然、行き過ぎた修正局面はあるがそれは今ではない、ということを理解したうえで買っているのが相場巧者の業だ。
新たに注目したいのは建設株の周辺。銘柄としては、例えば前田製作所<6281>に穴株妙味がある。建機最大手のコマツ<6301>の総代理店でもあり、産業機械の製造も行っている。また建設コンサルの長大<9624>も実質的な青空圏突入が接近している。建築設備工事大手の三機工業<1961>は年初から一貫した上昇波を形成しているが依然割安感が強い。
このほか消費関連では、ビジョナリーホールディングス<9263>の株価に勢いが感じられる。メガネスーパーの持ち株会社でエムスリー<2413>の傘下企業だが、ここにきて新波動入りを示唆する値運びだ。また、婦人服のハニーズホールディングス<2792>の1000円トビ台も意外性がある。番外ではAI関連のロゼッタ<6182>。VR上の通訳システムを来週9日に発表会を開催する予定でマーケットの注目を集めている。また、それ以上にインパクトがあるのが全社員への「英語禁止令」だ。
あすのスケジュールでは、2月の消費動向調査など。海外では1月の豪貿易収支、1月のユーロ圏小売売上高、1月のユーロ圏失業率、1月の米製造業新規受注など。(銀)
最終更新日:2021年03月03日 21時16分