国内株式市場見通し:「金融相場」から「業績相場」・「選別相場」へ
■決算見極めたい様子見ムードでこう着感強まる
今週の日経平均は小反落した。前の週末に発表された米雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を大きく上回ったことで経済活動正常化への期待が強まり週初の日経平均は堅調スタート、終値で3万円を回復した。祝日明けの米国市場では、雇用統計のほかISM非製造業景況指数が過去最高を記録したことで経済の先行き期待が一段と高まった。一方で国債利回りが低下したことからハイテク株を含め主要株価指数は大きく上昇した。ただ、欧米市場が休場だった間に既に大幅に上昇していた日経平均は3万円を回復した目先の達成感もあって6日は反動安の展開に。7、8日は決定的な材料難のなか今後本格化してくる決算を前に様子見ムードが台頭。商いが膨らまないなか機関投資家による期初の益出し売りなどが重しとなった。ただ、市場心理が悪化するほどの悪材料もなく、指数はこう着感を強める展開に。週末9日は、薄商いのなかオプション4月物の特別清算指数(SQ)算出に絡んだ売買が買い越しだったこともあり、一時は3万を回復する場面もあった。しかし、前日に決算発表したファーストリテイリング<9983>が朝高後売りに押される展開となったことで、その後の日経平均は上げ幅を縮める展開となった。
■需給主導は期待薄、小売企業決算本格化
来週の日経平均はもみ合いか。新年度相場入りともなれば期末のリバランス売りや企業の政策保有株の売却が一巡する一方、新規資金の流入により需給が改善し一段高との強気の見方が大勢ではあったが、どうやら需給主導での相場局面にはなりづらい構図が浮かび上がってきた。今週については、機関投資家による期初の益出し売りが重しになっていたとの指摘が聞かれた。決算を見極めたいとする様子見ムードが強い中でそうした需給面での重しがあったとすれば、その期間に日経平均が横ばいに終始したことは底堅いとも評価できる。ただ、これまでのような、需給面の改善が相場を押し上げるとまでの強気な見方には再考が必要か。昨年のコロナショック後は、信用売り方の買い戻しや、大幅な裁定売り残の解消に伴う現物買いが相場の押し上げに寄与していた。しかし、足元では、信用取引の残高を見ると、買い残が2年半ぶりの高水準にある一方、売り残は5か月ぶりの低水準にある。さらに裁定残はネット買い越しに転じており、これが定着しつつある。ここから、少なくとも、昨年来の断続的な株価上昇を演出してきた「売り方の買い戻し」による寄与分は剥落したといえよう。むろん、新年度相場入りに伴う新規買いがないわけではないし、企業業績の改善と合わせて、昨年から自粛されていた自社株買いなども一層増えてくると思われ、需給面が悪いわけではない。それでも、既に指数が歴史的な高値圏にあることを考えれば、需給面での押し上げ役が一つ欠けたいま、ここ一年間の上昇ペースに見慣れてきてしまった相場関係者にとっては、ここからの「指数の」上昇ペースは緩慢とならざるを得ないことを頭に入れておく必要がありそうだ。昨年3月からのちょうど1年間が、各国の財政金融政策などによって相場が決まっていた「金融相場」であったのに対して、今後の相場は業績の好転・向上に裏付けられた「業績相場」となっていこう。直近数年の海外投資家の日本株売買動向によると、昨年11月以降からの買い越し分を考慮してもまだ日本株の買い越し余力は2兆円ほどあるとの指摘も聞かれる。この先好調な実績と見通しが確認された銘柄には断続的な買いが見込まれそうだ。決算の見極めが一段と意識されるなか、来週は小売企業の決算ピークだ。今週に発表されたところでは、コジマ<7513>など巣ごもり需要の反動減が意識されてもおかしくないような事業を手掛けているところでも、内容がよければしっかりと買われていた。こうしたところからも選別物色が一段と強まりそうな気配が窺え、ここからは業績相場ならぬ選別相場の様相を呈してくることが想定される。
■内需系グロースの見直し機運高まるか
昨年11月から始まったバリュー(割安)・リバーサルの流れは3月までで一巡した。一方、グロース(成長)株の重しとなっていた米長期金利も、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の内容や、国際通貨基金(IMF)春季会合のバーチャルパネル討論会でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を受けて、さらに落ち着いてきた。今後は「バリュー」「グロース」といった単純な二極化の動きは起こらないだろう。足元では、外資系証券がマザーズ銘柄群のカバレッジを開始するなど海外勢による日本テック企業への関心の高まりもみられる。来週はSansan<4443>やマネーフォワード<3994>など注目テック企業の決算もある。決算後に、出遅れ感のある内需系グロースへの見直し機運が高まる可能性もあろう。そのほか、週末に発表された安川電機<6506>の22年2月期業績は概ね市場予想通りの見通しとなった一方、力強い受注動向の回復が確認できた。今後の製造業決算への期待が膨らんだ格好で、週明けの同社株価と他の景気敏感株の動きに注目したい。
■3月工作機械受注、米3月小売売上高、中国1-3月期GDPなど
来週は12日に3月工作機械受注、13日に中国3月貿易収支、14日に米ベージュブック(地区連銀経済報告)、15日に米3月小売売上高、米3月鉱工業生産、米4月ニューヨーク連銀製造業景気指数、16日に中国1-3月期GDP、中国3月工業生産、中国3月小売売上高などが控えている。
《FA》