米株と比べ伸び悩み鮮明に/後場の投資戦略
日経平均 : 29682.66 (+39.97)
TOPIX : 1958.16 (-0.97)
[後場の投資戦略]
前日の米市場では良好な経済指標や企業決算が相次ぎ、NYダウやS&P500指数が最高値を更新。日経平均はこうした流れから3ケタの上昇でスタートしたものの、かねてからの当欄の見立てどおり上値の重さが払しょくできずにいる。米長期金利の低下で値がさグロース(成長)株はしっかりだが、海運株などの景気敏感系バリュー(割安)はおおむね売り優勢。東証株価指数(TOPIX)は0.05%の下落で前場を折り返した。本日ここまでの東証1部売買代金は1兆円を割り込み、商いはより閑散としてきた感がある。新興市場ではマザーズ指数が1.53%の上昇。上場2日目のサイバートラスト<4498>が公開価格の約4.2倍となる初値を付けるなど、個人投資家の物色意欲の根強さは窺える。しかし、マザーズ指数も週を通じては1200pt台前半でのもみ合いに終始しそうだ。
高値更新中の米国株に対し、日本株の伸び悩みは鮮明だ。新型コロナワクチンの普及遅れや感染再拡大などが要因として挙げられるが、そもそも先の経済協力開発機構(OECD)による経済見通し修正を考慮すれば、日本株のアンダーパフォームは予想できただろう。以前述べたとおり、大型経済対策やワクチン普及を追い風に米経済の改善幅は大きく、他の地域を圧倒している。
その米国では3月小売売上高が前月比9.8%増と市場予想(6%程度の増加)を大幅に上回ったが、その持続性を疑問視する声もある。内訳としては経済活動の再開に伴ってバーやレストラン、スポーツ用品、衣服・アクセサリーなどの伸びが大きい。一方、自動車や建材、給油、食品を除いたコア小売売上高は同6.9%増となり、2月の3.4%減からプラス転換したものの予想(7%程度の増加)には届かなかった。経済対策としての給付金支給が「リベンジ消費」に向いているものの、コロナ禍で一般消費者に雇用の不安定さが強く意識されたことを考慮すれば、消費性向が継続的に上向くかよく見極める必要がある。コロナ禍収束へ取り組んでいる最中の日本でも同様だろう。なにせ日本は一段と消費者の生活防衛意識が強い。
株式需給的にも、一段の買い戻し余地が減っている可能性があるのは前日までに解説したとおり。また、日本取引所グループが15日発表した4月第1週(5~9日)の投資主体別売買動向も見ておきたい。現物株・株価指数先物の合計で外国人投資家は6770億円の買い越し、一方で信託銀行が4194億円の売り越しとなった。海外勢の買いは「日本株への関心が高まっている」との一部報道等と整合的。足元でも外資系証券によるTOPIX先物の買いが見られる。信託銀行の売り越しについては「期初の益出し売り」で一時的との見方が多い。また、資産全体に占める日本株の比率低下に歯止めがかかり、一部引き上げの動きがあるなどとも報じられている。
ただ、高齢化の進展と年金受給者の増加でリスク資産の比率を高めるのにも限度はあるだろう。それに、やはり昨年の株価急落時に見られた「リバランス(資産配分の調整)買い」は強烈だった感があり、多少の保有比率引き上げで昨年のような規模の買いが期待できるとは考えづらい。
さて、目先は今晩の米国で開催される日米首脳会談の内容を見極めたいところだろう。(小林大純)
《AK》