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米国株
2021年4月24日 8時30分
市況

植草一秀の「金融変動水先案内」 ―3度目の緊急事態宣言発出―

第57回 3度目の緊急事態宣言発出

●政策失敗

菅内閣は4月25日から5月11日までの2週間強の期間、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に緊急事態宣言を発出することを決めました。昨年来、3度目の発令になります。菅内閣は3月21日をもって前回の緊急事態宣言を解除しました。解除を表明した会見で、菅首相は「再び緊急事態宣言を出すことがないように、5つの対策をしっかりやるのが私の責務だ」と述べました。

5つの対策とは、(1)飲食の感染防止、(2)変異株への対応、(3)戦略的な検査、(4)ワクチン接種、(5)医療体制の強化でした。飲食については、宣言解除で規制を緩和しました。(2)、(3)、(5)は感染を直接抑制する施策ではありません。ワクチン接種が一気に進捗するなら影響が表出すると思われますが、日本のワクチン接種はほとんど進展していません。

本コラムでも指摘してきましたが、3月21日の段階で、すでに新規陽性者数が増加に転じていました。また、タイムラグを伴って感染増減に強い影響を与える人の移動が2月中旬以降、明確に拡大に転じていました。卒業、異動に伴う各種イベント、花見、行楽など3月下旬にかけて季節的に人流が急拡大するタイミングで菅内閣は緊急事態宣言を解除しました。しかも、感染抑制策は大幅に後退させたのです。

果たして感染は急拡大し、菅首相は記者会見での宣言と裏腹に、わずか1ヵ月で緊急事態宣言への逆戻りを強いられてしまいました。

●五輪に暗雲

日経平均株価が4月20日に急落したのは、米国政府による渡航中止勧告の対象国拡大の報道がきっかけでした。日本が渡航中止勧告の対象になれば米国の東京五輪への選手派遣が難しくなります。東京五輪中止観測が浮上して日経平均が急落したと考えられます。

その後、日本が直ちに渡航中止勧告の対象にはならないことが判明しましたが、東京五輪に対する警戒感は残存しています。IOCのバッハ会長は、日本でコロナ緊急事態宣言が発出されても東京五輪とは無関係だと発言して総スカンを食らいました。日を追うごとに五輪の正体が露わになってきています。五輪は「平和の祭典」ではなく、五輪によって利益を獲得する人々による「利権の祭典」であることが鮮明に浮かび上がってしまっています。

聖火リレーの目的が大手スポンサーの街宣活動に過ぎないことも際立ってしまいました。五輪開催を強行すれば日本のコロナ被害がさらに拡大することは間違いありません。国民の命と健康を犠牲にして五輪開催を強行しようとする政策運営に対して、金融市場も警戒感を強めています。

年明け以降の株価変動を見ると、株価の伸び悩みが目立つ国と堅調な推移を維持する国・地域とに明確な色分けができます。台湾、米国、英国、ドイツでは株価の堅調推移が観察されています。台湾は適切な政策対応でコロナ収束に成功した代表例です。コロナ暴落後の株価反発でトップを走っています。

●政策迷走が最大の不安要素

英国はコロナ暴落からの株価反発が鈍い国の代表でしたが、ワクチン接種を進捗させることによって新規のコロナ死者数を急激に減らしています。この変化を背景に株価が底堅さを強めています。同じ変化が米国でも観察されています。ワクチンの潜在リスクは重大で、ワクチン接種を安易に奨励するべきでないと考えますが、ワクチン接種の進展は短期的にはコロナ死者を減少させる効果を発揮しているようです。

東アジアに位置する日本は、適切な政策対応を実行していれば、台湾のように感染収束を実現できた可能性があったと思われます。しかし、日本政府は感染抑制策と感染推進策を交互に実行するという最悪の対応を示してしまいました。GoTo事業で感染爆発を引き起こして緊急事態宣言の発出に追い込まれたのですから、感染抑制に軸足を定めてブレないようにすべきでした。ところが、人為的に密を生み出す聖火リレーを推進するなど、支離滅裂を続けています。

日本のコロナ経済対策の規模はGDP比で見ても世界最大級と言える上、代表的なマネーストック指標であるM2の前年比伸び率がバブル期以来の2桁に迫るほど、過剰流動性も供給されています。それにもかかわらず日本の株価反発率は台湾、中国、韓国に大きく水をあけられています。

感染第4波の中核ウイルスがN501Yに置き換わりつつあり、早期の感染収束が実現するかどうか予断を許さない状況です。

●問われる変化への適応力

緊急事態宣言の再発出で 飲食百貨店、各種興業が受けるダメージは深刻になると想定されます。ただし、コロナ問題が中期的に残存するなら、そのことを踏まえた構造調整を進展させることを積極的に検討するべきと思われます。「変わらずに生き残るには、自ら変わらなければならない」という言葉がありますが、変化を的確に捉えた攻めの対応が重要性を増しています。

日銀短観の業況判断を見ると、極めて厳しい業種が存在する一方で、急激に業況を改善させている業種もあります。消費者や生産者の行動様式が大きく変化しているので、ビジネスチャンスの所在も急激に変化しています。運の良し悪しがあることは否めませんが、ピンチのなかにチャンスの芽が隠されていることも事実です。コロナ禍のなかで急激に業績を伸ばす企業が出現するなかで、苦境に立たされた企業のなかからも、大変身を遂げる新しいスターが出現することが期待できる局面です。

当面、紆余曲折が残存すると思われますが、そう遠くない将来に明るい状況が広がる可能性は高まっているように感じられます。お宝を発掘する重要なチャンスが巡ってきていると言えるでしょう。

4月25日には重要な国政3選挙が投票日を迎えます。衆院総選挙を考察する上で極めて重要な意味を持つことになりますので、結果に注目し、次の展開を考察することが重要です。

(2021年4月23日記/次回は5月15日配信予定)

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