【植木靖男の相場展望】 ─ いまの米国、東京の明日に
「いまの米国、東京の明日に」
●日米株価の方向性の違いを生んだもの
日経平均株価は3万円大台を割り込んで、いまは狭いレンジの中で閉塞感を強めている。
そもそも振り返れば、日本と米国はともに金融政策では量的緩和を続けてきたが、さらに財政面でも対新型コロナ対策もあって巨額の資金を予算に計上し、未曾有の過剰流動性に支えられて両国の株価は上昇を続けてきた。
だが、今年に入って日経平均は2月16日につけた3万467円(終値ベース)を高値に下方へと方向転換をみせる一方、米国株価は引き続き史上最高値更新を続けている。
この違いはなんであろうか。同じような政策で、なぜ株価の方向性が違ってきたのか。一つはコロナワクチン接種率の違いだ。確かにわが国のそれは1%強、OECD(経済協力開発機構)37カ国の中で最下位だ。米国、英国とも40%を超えている。ワクチンの普及で米国の景気は急速に立ち直りつつある。また、おカネに国境はない。“あっちの水は甘いぞ”と言えば、国境に関係なく、カネは甘い方に流れていく。海外投信に5兆円近い国内資金が流出したという。
さらに、決定的なのは持続化給付金など政府支援金において、この1~2月分がいまだに支給されていないのが半分以上という。呆れてものが言えない。米国では決定してから2~3日で口座に振り込まれているという。この彼我(ひが)の差は大きい。
かくして、日米の株価の方向性は180度違ってきているのだ。
●連休明けに放れるか?材料待ちも極限に
さて、いまの株価の状況をもう少し精査してみよう。3万円を割り込んで2万9000円前後で膠着状態にある。高値から下げて戻り相場に入るとき重要な戻りのフシがある。これを肝(キモ)といっているが、今回は2万9300円処である。これを上抜けると高値更新の可能性がぐーっと高くなる。これは指数でも個別銘柄でも同じことだが、いま日経平均は下値では4月21日の安値2万8508円が防波堤となっている。目下、このゾーンの中で行儀良く(?)収まっている。すでに6日間が経過している。
しかも、鯨幕相場(陰陽線が交互に現れる相場)だ。これでは投資家は迷える子羊といったところだ。売っても買っても儲からない。ただ、すでにこの鯨幕は3回目だ。このままだと連休明けには上下いずれかに放れる運命にある。すなわち、材料待ちも極限に来ているといえよう。
ところで、物色の方向性だが、これは難しい。2万9300円処を上抜いてくればハイテク株が優位となり、2万8508円を下抜けば、次の二番天井に向けては景気敏感株が優位となる。米国のNYダウ平均かナスダック総合指数のどちらがより先に飛び出すかによる。
いずれ周回遅れながらもワクチンが普及すれば、いまの米国の状況が、東京市場の明日になる。これを前提にすれば、空運、観光、小売りなど目下、苦戦を強いられている業種が回復に入ろう。
三越伊勢丹ホールディングス <3099> やANAホールディングス <9202> 、エイチ・アイ・エス <9603> などの突っ込みは仕込むタイミングといえよう。
このほかいま元気なのは、ややリスクもあるが、鉄鋼の神戸製鋼所 <5406> や海運の日本郵船 <9101> なども気がそそられよう。また、業績が安定している西松屋チェーン <7545> 、ヤマトホールディングス <9064> などにも注目しておきたい。
2021年4月30日 記
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株探ニュース