国内株式市場見通し:決算終盤入り、選別物色一段と進展へ
■29000円を挟んだ一進一退
4月最終週の日経平均は週末にかけて軟調となった。週初こそは米バイデン政権による富裕層を対象とした株式譲渡益増税への過度な警戒感の後退から上昇したものの、その後は、バイデン米大統領の議会演説や米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を控えて一進一退に。イベントは大きな波乱もなく通過したが、国内連休中の空白リスクを避けたいとする思惑から、週末は手仕舞い売りが嵩み、29000円を割り込んだ。連休明けの5月6日は、連休前にヘッジ目的で先物を売っていた投資家による買い戻しも入り、一時は600円高となる大幅反発で29000円を回復。7日は、米雇用統計を前にした様子見ムードが強まり、前日終値を挟んだ水準でのもみ合いに終始した。個別では、決算を受けた個別株物色が主体となり、主なところでは、日本電産<6594>やエムスリー<2413>、ソニーグループ<6758>が下落、ファナック<6954>やイビデン<4062>、キーエンス<6861>などが上昇で反応した。その後の株価推移も概ね決算直後の反応を引き継いだものが多い。ただ、イビデンはその後の下落で上昇分を帳消しにする展開となっている。市場予想を大きく上回る見通しを示した東京エレクトロン<8035>は寄り付きこそ下落したものの、次第に切り返してプラスで終え、翌7日は大幅高に。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄でもある富士通<6702>が決算後にコロナショック以降の高値を更新したことも話題となった。
■決算予定数は2200超、米国インフレ動向も注視
来週の日経平均はもみ合いか。主力企業の1-3月期決算が終盤入りとなる。週初から200近い企業の決算があり、週末には900以上もの決算が予定されている。このため、決算を受けた選別物色の様相が一段と強まり、指数に方向感は出にくそうだ。昨年3月から10月までがグロース(成長)株の独り勝ち、昨年11月から今年3月まではバリュー(割安)が独走状態という二極化相場が続いていたが、4月以降は明確な方向感はなかった。こうした動きは決算を挟んでも続きそうだ。これまでに発表済みの決算と株価反応を振り返ってみると、反応はまちまち。グロースでは、序盤は日本電産やエムスリーなどの売りが目立っていたが、ファナックや東京エレクトロンなど好反応のものも徐々に散見されるようになってきた。東京エレクトロンのようなグロース・ハイテクの代表格で、株価が上場来高値圏にある銘柄でも、好決算であればしっかり買われる動きが確認されたことは相場にも良い印象を与える。一方、バリューでも、海運大手の商船三井<9104>が、決算発表後も出尽くし感に繋がらずに上昇基調を続けている。決算前の株価が、既にコロナショック前の2019年の年末水準の1.5倍までに上昇していたことを考慮すれば、景気敏感株への根強い買い意欲が窺える。今後も単純な二極化ではなく選別物色の様相が強まることが想定されよう。また、来週は2200以上と、例年よりも決算数が集中している。決算内容が織り込まれるのに時間がかかり、個別銘柄の株価変動率の高い日が数日にわたって続く可能性がある。
そのほか、世界的なインフレ懸念が改めて相場の注目点となってきそうだ。米国10年物国債利回りは1.5%台に低下した後は安定した動きが続いているが、期待インフレ率と呼ばれる米国10年物のブレークイーブン・インフレ率は5月5日には2.47%にまで上昇した。鉄鋼からアルミニウム、亜鉛などの商品市場でもかなり需給が逼迫している状況だ。半導体の供給不足も2022年まで続く可能性が指摘されている。一方、4月の米雇用統計が市場予想を大きく下回ったことで、「物価」と「雇用」を目標とする米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和を早期に縮小する懸念は後退した。ただ、4月の雇用統計を抑えた要因は供給不足が問題になっている製造業に依るところが大きく、需要自体は旺盛だ。コロナ禍での打撃が厳しかったサービスや飲食関連ではむしろ人手不足になってきており、5月以降の雇用統計が再び強い数値となる可能性は十分にあろう。そうした中、来週は米国で物価関連の指標発表がある。これらの結果次第では再び「インフレ加速・長期金利上昇」という動きが出てきてもおかしくない。決算ばかりが注目されがちだが、決算一巡後には再びインフレと長期金利を巡る思惑が相場を左右しそうだ。
■再びインフレを見越した物色に注目
上述したように「インフレ」は中長期での関心事になることが想定される。インフレを意識したポートフォリオ構築を推奨する専門家の意見も改めて多く聞かれている印象だ。最近、販売価格の引き上げがあった鉄鋼などを中心に資源関連株の相対的な強さも続いている。グロースでも、ITのような内需系よりは、半導体のような外需系の方が強さが目立つ。インフレ傾向と業績の連動性が高いセクターや、仕入価格の上昇を販売価格へと転嫁できるような価格設定能力のある企業が有望となってきそうだ。
■景気ウォッチャー、米4月消費者物価指数、米4月小売売上高
来週は11日に3月家計調査、12日に3月景気動向指数、米国4月消費者物価指数、米国10年国債入札、13日に4月景気ウォッチャー調査、米国4月生産者物価指数、米国30年国債入札、14日に5月オプション特別清算指数(SQ)算出、米国4月小売売上高、米国4月鉱工業生産などが予定されている。
《FA》