明日の株式相場に向けて=テスラからトヨタに向かう潮流
きょう(20日)の東京株式市場は、日経平均株価が53円高の2万8098円と反発した。朝方は軟調ムードだったが、寄り付きに2万7000円台に突っ込んだ直後から買い板が厚くなり、一服する間もなくプラス圏に浮上した。通常、こういうケースではそのまま漸次上げ幅を広げる展開となりやすいが、気迷い相場の色が強いなか、プラス圏に入ると途端に上値が重くなるのがここ最近の地合いだ。前場中盤にかけて再びマイナス圏に沈んだあと、改めて買い戻される優柔不断な値運びとなった。
前日に開示されたFOMC議事録(4月27・28日開催分)については参加する多くのメンバーが景気回復基調が強まればテーパリングの議論を開始する可能性があることを示唆した。今さらという感じはするが、織り込みが進んでいた分、米国株市場はこれを冷静に受け止め株価への影響は限定的であった。ビットコイン価格の急落がなければ、NYダウ、ナスダック総合指数ともプラス圏で着地していたと思われる。6月のFOMCでテーパリングに言及する可能性は今のところ乏しいという見方が優勢だが、遅くとも8月のジャクソンホールでパウエルFRB議長は何らかの形で方針転換を示唆する公算が大きくなった。今回のFOMC議事録はその最初のアドバルーンということになる。
個別では4月下旬にも取り上げたヒーハイスト<6433>に改めて注目してみたい。直近の全体波乱相場にあっても強さを発揮し、25日移動平均線を足場に切り返しに転じている。直動ベアリングや制御装置などを手掛け、半導体市場拡大を背景に半導体製造装置 向けで需要獲得が進んでいる。22年3月期営業利益は前期比16%増の1億200万円と回復トレンドに転じる見通し。これ以外に、半導体関連では電子デバイス商社で化合物半導体製造装置に優位性を持つ伯東<7433>の1500円近辺のもみ合いは買い場提供となっている可能性がある。国内でも5Gの商用サービス本格化に向け基地局整備が加速する見通しにあるが、これに伴う半導体関連需要にターゲットを絞っている。株価は今月6日にマドを開けての大陽線で上放れたが、PERは10倍台でPBRは0.5倍台と割安感が強く、更に4%近い配当利回りは魅力となる。
また、再編思惑の進む自動車部品関連では、前日に紹介した愛三工業<7283>やIJTT<7315>のほか、急伸後に800円近辺で売り物をこなすミツバ<7280>はもう一段の上値追いが期待できる。自部品メーカーは割安放置の銘柄が多いが、再編機運が出てくると株高修正の根拠として威力を発揮しやすい。同社のPERは5倍である。
このほか、小型株であまり目立たないが、電子機器に使われるワイヤーハーネスで業界トップ級の実力を有するオーナンバ<5816>も好業績割安株の一角。21年12月期営業利益は前期比31%増の10億円を見込む。これは16年12月期以来5期ぶりの水準となる。穴株では商業用照明機器大手の遠藤照明<6932>に意外性がある。コロナ禍で大型商業施設の照明設備需要は低迷しがちに思えるが、郊外店舗の需要が堅調で業績面で追い風となっている。次世代無線調光調色器具などの新商品の収益貢献も期待される。22年3月期営業利益は前期比47%増益予想とV字回復以上の伸びが予想されている。
なお、中長期的な観点から主力大型株をひとつ挙げるとすればトヨタ自動車<7203>ということになる。きょうは小幅マイナス圏で着地しているが、直近18日に上場来高値を更新した。東京市場で断トツの時価総額を誇る同社株が、このタイミングで株価を青空圏に浮上させるのは何か暗示的な印象を受ける。米国ではテスラ<TSLA>株が大きくバランスを崩している。半分冗談めかしてはいるが、市場では「ロングショート戦略でトヨタ買いのテスラ売りが有効なタイミングかもしれない」(ネット証券アナリスト)という声がある。バブルモードが終了しても、実態の良好な銘柄には光が当たる順番が回ってくる可能性がある。トヨタは日中関係がアキレス腱となるが、テスラを引き合いに出せば、世界的にこれだけ安心と信頼を売っている企業が、もう少し評価されてもいいという論調が出てきても不思議はない。
あすのスケジュールでは、4月の全国消費者物価指数(CPI)が朝方取引開始前に発表される。また、20年国債の入札も予定される。海外では、欧州で5月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)、5月の英PMIなど。米国では5月の米製造業PMI、4月の米中古住宅販売件数などが発表される。(銀)
最終更新日:2021年05月20日 17時02分