資産を倍以上にした「バガーさん」はどんな人、コロナ相場での成績、含み損益が最大の銘柄は

特集
2021年5月20日 10時00分

第9回 強い投資家はどんな人~日本株投資家3900人調査で解明!(データ分析・バガー編-1)

筆者/真弓重孝 = 『株探』編集部・編集統括プロデューサー

ビジネス誌、マネー誌などを経て、2018年4月にみんかぶ(現ミンカブ・ジ・インフォノイド)に入社。現在に至る。

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第1回 「株探-個人投資家大調査」のデータ分析編は、今回から、投資を開始してから資産を「2倍以上に増やした」と回答した人を紹介する。

『株探』編集部は、この人たちを「バガーさん」と命名した。株価が大化けした株を「テンバガー(10倍株)」と呼ぶことにちなんだものだ。

このバガーさんに該当するのは、

・投資開始から累積元本を2倍以上に増やしたと回答した人

・2019年以前に投資を開始

・回答時点の日本株資産が1000万円以上

――の人たちだ。その数はわずかで、全回答者3920人のうち5%に満たない195人になる。

基準決定の理由の1つは、ある強い投資家の成功例

バガーさんと呼ぶならば、

倍率が2倍ではなく10倍以上、

足元の資産額がもっと多くてもいいのでは、

――といった声もあるかもしれない。そうした意見を想定しながらも、この基準を採用したのには2つの理由がある。

1つは、ある強い投資家さんの例が印象的だったためだ。この人は、明日公開予定の「強い投資家ケーススタディ編」で触れる。

さわりを紹介すると、2016年末に投資開始後、翌17年にすぐに年間で+100%以上、つまり2倍以上のリターンを上げることに成功した。

圧巻なのは、2倍にした翌18年には4倍以上、さらに翌19年にも2倍以上と、立て続けに大きな成果を生んだことだ。

この大躍進によって、累積リターンは元本の25倍ほどに膨らんでいる。ちなみに最初の当初の元本は500万円に満たない額だった。

2度のショックが襲った18年も大きく増加させていることからも想像が付くように、3年連続の大躍進は、決して偶然ではなく、必然である何かがあったのだ。

このきらきらケースから、資産を2倍以上に増やした経験の持ち主は、それなりの勝ち技を持ち、今後も資産を増やす可能性があると、分析の対象にした。

市場平均を見ても2倍以上の壁は高い

もう1つの理由は、市場平均を見ても、2倍以上に増やすのは決して容易でないからだ。

その一端を示したのが下のグラフ。日経平均株価と東証マザーズ指数、TOPIX(東証株価指数)の3つの指数について、過去30年の月足終値を基に、2つの分析を行っている。

1つ目は、過去30年の最安値を付けた月からの値上がり倍率を分析したものだ。下のグラフで示した「緑」の棒が今年5月時点からの集計、「青」の棒が昨年5月時点からの集計になる。

足元(今年5月の途中)時点では、日経平均は過去30年の最安値の月からは3.7倍の水準になっている。ただし、昨年はコロナ反発相場が到来し、水準が引き上がっているはずだ。そこで昨年5月時点からの状況も確認した。

その結果、昨年5月時点では2.8倍と、足元よりは低い水準だったことがわかった。他の2つの指数もこの1年で倍率を伸ばしている。

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次のグラフは、指数が2倍に増える機会を探ったもの。計算方法は、過去30年で足元(もしくは昨年5月時点)の株価より半値以下の月が、どれくらいあったのかを見ている。

仮に半値以下になったどこかの月で、インデックス投信やETF(上場投資信託)をバイ&ホールドしていれば、元本は2倍以上になっている。そのチャンスが過去30年、つまり360カ月の中で何カ月あったのかを比率を出した。

こちらも足元は昨年5月から機会が増えている(下のグラフ)。昨年5月時点でTOPIXの場合は、わずか4%の比率しかなく、最も多い東証マザーズでも25%、日経平均も22%だった。

日経平均や東証マザーズの場合は、2倍にする機会はけっこう多いとも見えなくもないが、相場が停滞している時期にここぞとばかりに投資するのは容易ではない。

ドルコスト平均法でコツコツ積み立てる場合は、タイミングを図る必要はない。だが、株価上昇時の積み立て分が取得単価の引き上げに寄与するので、ある月にピンポイントで投資した場合に比べて、パフォーマンスが落ちる可能性はある。

いずれにせよ、指数の推移からも2倍にするのは、決して容易な作業ではないことがわかる。

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注:回答数はバガー195、全体2306。バガーさんは2倍以上のみ

投資歴では「2000~09年」が最も多く、続いて「1989年以前」となっている。

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注:回答数はバガー195、全体3920

回答時点の日本株の資産額については、「3000万~5000万円未満」最も多く、次に「5000万~1億円未満」と「1000万~2000万円未満」が並んだ。

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注:回答数はバガー195、全体3920。バガーは1000万円未満を除く

金融資産に占める日本株の比率は以下の通り。全体と比べると100%台の人が最も多く、以下90%台、80%と続くのは全体と同じ傾向だ。

全体と異なる傾向となっているのは40%台以下をまとめた「その他」の人の割合。バガーさんの場合は、全体の半分以下となっている。

資産を大きく増やすには、それだけのリスクを取っているからといえそうだ。

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注:回答数はバガー195、全体3920

ここ3年の運用成績は好調

ここから今春および2018~20年の運用成績を見ていこう。

まずは、昨年末から回答時点の今春までの運用成績。この時点では90%を超える人が利益を上げ、損失を出した人は5%台にとどまった。

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注:回答数はバガー195、全体3920

リターンの水準は、全体の傾向を大きな違いはなかった。だが、次のグラフの下の部分に示した「2倍以上」が、バガーさんの場合は全体より高い比率となっている。

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注:回答数はバガー183、全体2446

コロナ禍に見舞われた2020年でも、バガーさんは利益を生んだ人が全体より高い。80%の人がリターンを出し、これは全体より25%ポイント高い。

逆に損失を出した人は16.9%と、全体より半分程度の水準になっている。

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注:回答数はバガー195、全体3920

リータンの状況については、「50~100%未満」「2~5倍未満」「5倍以上」などの高成績を上げた人の比率が、全体に比べて高かった。

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注:回答数はバガー156、全体2192

以下に示した2019年と18年の運用成績でも、バガーさんは成績がよく、勝ちの人の比率は全体の2倍程度になっている。

年明け後に「VIXショック」と年末に「FRBショック」が襲った2018年でも「勝ち」の人が高い比率になっているのは見逃せない点だ。

なお冒頭に触れたように、今後紹介予定の強い投資家さんも、この年に年間で4倍を超える増加を達成している。

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注:回答数はバガー195、全体3920

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注:回答数はバガー195、全体3920

投資スタイルは「グロース」が高め

投資スタイルでは、「グロース」がトップ、「バリュー」が2番目、「テクニカル・需給」が3番目というのは、全体と同じだ。

ただし、グロースの比率が全体より高いのが特徴。また「テーマ」が全体では4番目だが、バガーさんの場合は5番目で、全体に占める比率も低くなっている。

ケーススタディ編の2人目に登場したカオマンガイ食べ太郎さん(ハンドルネーム)も、グロース銘柄の発掘で資産を72倍にした。バガーさんになるには、グロース戦略を磨くことが近道になるかもしれない。

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注:回答数はバガー195、全体3920

「年齢」「居住地」「性別」「職業」「年齢」は以下の通りだ。

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注:回答数はバガー195、全体3920

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注:回答数はバガー195、全体3920

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注:回答数はバガー195、全体3920

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注:回答数はバガー195、全体3920

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注:回答数はバガー195、全体3920

そして最後に回答時点で含み損益の最大の銘柄リストを紹介する。

注意点は、含み益が最大と回答とした銘柄の中に『株探』を運営するミンカブ・ジ・インフォノイド<4436>が含まれていたが、これまでと同様に調査の経緯を踏まえリストから削除している。

また億マンさんの「データ分析編-1」で紹介したのと同様、回答数が限られているため、順位は参考の域を出ないことに留意してほしい。

■足元で含み益の大きい銘柄

順位銘柄名<コード>
1ソフトバンクグループ<9984>
2ファーマフーズ<2929>
3レーザーテック<6920>
4日本電産<6594>
4オリエンタルランド<4661>
4エムスリー<2413>
4IRジャパンHD<6035>
注:回答数は73

■足元で含み損の大きい銘柄

順位銘柄名<コード>
1日本たばこ産業<2914>
2明光ネットワークジャパン<4668>
3AI inside<4488>
4NEXT FUNDS 日経平均Dインバ<1357>
5ペッパーフードサービス<3053>
5オンコリスバイオファーマ<4588>
5CRI・ミドルウェア<3698>
注:回答数は56

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