最高益上乗せ・増配企業で、株価過熱と押し目の見極めは(和島英樹)
「明日の好悪材料Next」~最終回
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
【今回チェックした「明日の好悪材料」記事一覧】
5月21日~27日では個別の材料が多かった。大阪有機化学工業<4187>は業績を上方修正。アルメディオ<7859>が自動運転用レーダー波制御用CNF複合樹脂コンパウンドを開発。住友精密工業<6355>は中期経営計画を公表している。そのほか業績予想を開示し、大幅な増配を発表した企業などがあった。
5月21日分 大阪有機化学工業<4187> ~ ☆テクニカル・チェック銘柄
■好悪材料~今期経常を26%上方修正・最高益予想を上乗せ、配当も2円増額
塗料、インキ、粘接着剤、電子材料部材の樹脂原料として幅広い産業に使用されるアクリル酸エステルに強い。独立系の化学企業。半導体材料で、次世代材料開発における品質すり合わせにより、モノマー(単量体)シェアでナンバーワンを確保。Arf(液浸)/EUV(極端紫外線)モノマー製品の拡充、周辺材料開発に力を入れている。
21年11月期の業績を上方修正。売上高は前回予想を32億6000万円上回る340億円(前期比18.5%増)、営業利益は同12億5000万円増額の58億円(同30.6%増)、1株利益198.62円になる見通し。営業利益は2ケタの増益予想に。
また年間配当は前回予想比2円増配の年50円(うち中間配25円)とする方針だ。
■『株探プレミアム』で確認できる大阪有機化学工業の業績修正の長期履歴
同社によれば、上方修正は「自動車塗料や光学材料向け粘着材用を中心に化成品事業が回復したことや、半導体材料や表示材料などの電子材料が好調に推移した」などのためとする。
上方修正と同時に、同社は半導体関連材料の新規設備建設も発表。石川県・白山市に約45億円を投じ、22年着工、23年4月完成予定としている。操業開始は23年4月予定。フォトレジスト(感光材)市場の需要に対応、高品質化の要望に応えることなどが目的としている。
週足チャートで上段に移動平均線、下段にかい離率を設定する。昨年後半に株価が26週線を突破し、同線が上向きに転じて以降は、常にサポートラインとして機能している。今回も支持した格好。
一方、乖離(かいり)率が40%を超えるか40%前後に拡大した場合は過熱感から調整入りのパターンとなっている。きれいなリズムが継続するかに注目したい。
■大阪有機工業の週足チャートと26週線乖離率(2019年6月~)
5月24日分 アルメディオ<7859>
■好悪材料~自動運転用レーダー波制御用CNF(カーボンナノファイバー)複合樹脂コンパウンドを開発。自動車分野における潜在顧客へのサンプル提供を開始
アーカイブ事業や断熱材事業が軸。テスト用CD・DVDで世界シェア首位。ナノ素材を新たな柱として育成中。
発表資料によるとCNF(カーボンナノファイバー)を開発、マーケティング中だったが、「このほど自動車のバンパー・フェンダーに使用されている樹脂とCNFを組み合わせて、次世代自動運転用レーダー波制御用CNFコンパウンドを開発、自動車分野における潜在顧客へのサンプル提供を開始した」としている。
CNFの直径は数百ナノ(ナノは10億分の1)メーター、炭素繊維(カーボンファイバー)の約10分の1、カーボンナノチューブの約10倍。同社のCNFはこのサイズと電気伝導性に優れ、樹脂への分散性が良いという。
自動運転ではミリ波レーダーを使うが、ノイズによりレーダーセンサーに誤差が生じる。同社のCNF複合樹脂コンパウンドを用いた成型部品はこれらノイズとなる信号を吸収、遮蔽機能により99%以上抑制できるとしている。
■『株探プレミアム』で確認できるアルメディオの通期業績の成長性推移
5月25日分 住友精密工業<6355>
■好悪材料~24年3月期に営業損益47億円の黒字(21年3月期は5億円の赤字)を目指す
各種熱交換器と航空関連機器が主力。MEMS(微小な機械システム)技術活用のセンサー開発にも展開している。
今期から24年3月期までの3カ年の中期経営計画を公表した。最終年度の売上高545億円、営業利益47億円、ROE(自己資本利益率)9%、フリーキャッシュフロー3年累計で黒字などを目標としている。
航空宇宙、産業用機器、ICT(情報通信技術)の3事業に注力する方針。売上高の半分ほどを占める航空宇宙では「中小型機向け空調システム用熱交換器の開発」や「電動化航空機の熱マネジメント機器の熱解析・設計・製造に係る技術開発」などを取組みアクションとしている。
また売上高の4分の1ほどの産業機器では、高発熱化する電子部品向け冷却器の新規拡販や「水素バリューチェーンの熱マネジメントに寄与できる水素製造、液化、気化などに取組むとしている。
同じく売上高の4分の1を占めるICT事業では「化合物半導体に対するナノレベルの加工・特性改善に向けた研究開発を継続」、「高精度な姿勢計測・制御が必要なアプリケーション向けに、MEMSデバイスをコアとしたシステム化展開で事業範囲拡大を図る」などを目標にしている。
■『株探プレミアム』で確認できる住友精密工業のキャッシュフローの長期推移
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