来週の相場で注目すべき3つのポイント:米FOMC、マザーズIPO2社、米中小売売上高など

市況
2021年6月12日 17時56分

■株式相場見通し

予想レンジ:上限29500-下限28500円

来週の日経平均はもみ合いか。米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、週前半は様子見ムードが強そうだ。イベントを通過した週後半は、あく抜け感から強含む展開が想定される一方、動意薄の展開もありえる。

5月の米CPIはほぼ無風で通過。米長期金利は発表直後こそ1.53%ほどまで上昇したが、すぐに低下した。米ブレークイーブンインフレ率(期待インフレ率の指標)も上昇したものの軽微にとどまった。CPIの大幅な伸びは、前回の4月に続き中古車やガソリンなどが主体であり、「物価上昇は一時的」とするFRBの見方に沿うものとの解釈が優勢だったようだ。

また、中長期的なインフレへの影響力が大きい労働市場の需給ギャップは、5月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が前月から倍増したことで、こちらも緩和傾向にある。加えて、供給不足の要因と指摘されている失業保険の上乗せ給付の期限は、多くの州で6月末までに終了予定。今後も労働市場のひっ迫感は和らいでいこう。中国政府の投機筋に対する抑制策に端を発した商品市況の一服感なども相まって、「インフレ加速・長期金利急騰」への脅威は後退してきている。長期金利が1.4%台と切り下がって安定していることは今後も株式市場をサポートしそうだ。

15日からの6月FOMCは無難に消化される可能性が高い。4月雇用統計の公表前、パウエルFRB議長は、「100万人程度の雇用者数の増加が『数カ月間以上』継続することを望む」と述べていたが、5月の非農業部門雇用者数の伸びは前月比55.9万人だ。4月より倍増したとはいえ、金融政策の方針を転換するには材料不足であることは明らかで、6月のFOMCでは、大規模緩和政策の据え置きが決定される公算が大きい。

ただテーパリング(緩和縮小)の正式な議論が開始される可能性は低い一方、今後のための地ならしとして、何らかの形でテーパリングが話題に上がることはありえそうだ。また、政策金利の見通し(ドットチャート)の中央値は、前回までは2023年末までゼロ金利での据え置きとなっていたが、今会合ではやや引き上げられる可能性がある。そのほか、ハト派色の強いパウエルFRB議長の会見にも注目だ。しかし、これまでに複数の高官が度々テーパリングの議論開始を許容する発言などをしている経緯もあり、大きな波乱にはなりにくいと想定する。

17日からは日銀金融政策決定会合もあるが、こちらは相場への影響力は限定的となりそうだ。6月のFOMCが大きなリスクとなることはなさそうだが、結果を見極めたいとの思惑から、どうしても週前半は積極的な動きは手控えられよう。通過後のあく抜け感に期待したいところだが、国内でのワクチン接種スピードの急加速を受けても海外勢が動いてこない様子を見ていると、4-6月期決算発表が始まる7月下旬まではこう着相場が続く可能性がある。

物色としては、引き続きアフターコロナ関連銘柄に注目したい。国内でのワクチン接種スピードが加速していることで、5月第4週よりアフターコロナ関連への物色が目立っている。今週末にはさすがに一服感で調整したが、朝方に大きく売られていた銘柄の多くがその後下げ渋っていた。既に3週にもわたって大きく上昇していたことを考慮すれば、物色が変わる局面であれば、後半の下げ渋りは見られないと考える。物色意欲は衰えていないとみられ、経済活動の正常化を見越したアフターコロナ中心の相場はまだ続きそうだ。

■為替市場見通し

来週のドル・円は伸び悩みか。6月15-16日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で資産買入れ規模の段階的縮小(テーパリング)について議論されるとみられている。ただ、金融政策の早期変更の可能性は低いとみられており、現行の金融緩和政策の長期化が意識されることでリスク選好的なドル買い・円売りは抑制される見通し。

5月米雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を下回ったものの、失業率や不完全雇用率は低下し、平均時給は市場予想を上回っており、雇用情勢の改善は続いている。5月消費者物価コア指数(CPI)は市場予想を上回った。米長期金利は低下したが、市場のインフレ期待は失われていないことから、米連邦準備制度理事会(FRB)はFOMCで前回の会合に続いて緩和縮小について議論する見通し。

ただ、FRB当局者の間では、インフレ高進は一時的な現象との見方が支配的であり、金融緩和策を早い時期に見直すことに慎重な政策方針に変わりはない。テーパリングや政策金利の引き上げを実施するとしても、長い時間を要するとみられる。そのため長期金利の上昇は抑制され、ドル買いは小幅にとどまりそうだ。世界経済は新型コロナウイルスの感染拡大による打撃から立ち直りつつあるものの、景気回復に一服感もみられ、市場のリスク選好ムードはやや縮小する見通し。そのため株高・円安は限定的となり、ドル・円は110円台を回復しても、一段の上昇は阻止される可能性があろう。

■来週の注目スケジュール

6月14日(月):鉱工業生産(4月)、英・ベイリーイングランド銀行(英中央銀行)総裁が講演、端午節で中国・香港株式市場は休場など

6月15日(火):第3次産業活動指数(4月)、米・小売売上高(5月)、米・ニューヨーク連銀製造業景気指数(6月)、米・鉱工業生産指数(5月)、米・NAHB住宅市場指数(6月)、米・連邦公開市場委員会(FOMC)(16日まで)など

6月16日(水):貿易収支(5月)、全研本社が東証マザーズに新規上場、中・鉱工業生産指数(5月)、中・小売売上高(5月)、米・住宅建設許可件数(5月)、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見など

6月17日(木):東京販売用マンション(5月)、日銀政策委員会・金融政策決定会合(18日まで)、米・フィラデルフィア連銀製造業景況指数(6月)、米・証券取引委員会(SEC)がビットコイン上場投資信託(ETF)巡る判断、米・決算発表:アドビなど

6月18日(金):黒田日銀総裁の会見、Enjinが東証マザーズに新規上場、など

6月20日(日):東京など10都道府県に発令中の緊急事態宣言の期限

《YN》

提供:フィスコ

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