【村瀬智一が斬る!深層マーケット】 ─2万9000円処での底堅さを意識、物色の方向性定まり難く個別対応が中心か

市況
2021年6月19日 8時00分

「2万9000円処での底堅さを意識、物色の方向性定まり難く個別対応が中心か」

アフターコロナ意識の物色はいったん材料出尽くしも

日経平均株価は2万9000円を挟んだこう着感の強い相場展開が続いている。週前半は米長期金利の低下を受けた米国株高を背景に、日経平均株価は抵抗線だった2万9000円水準を上放れ、心理的な節目である2万9500円にあと一歩まで迫る場面があった。しかし、その後は米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を見極めたいとの模様眺めムードが強まり利益確定の動きに。さらにFOMCメンバーが金利見通しを示す「ドットプロット」において、2023年末までに2回の利上げを見込んでいることが示されたことにより長期金利が上昇。これが嫌気され、日経平均株価は2万9000円を割り込むなど不安定な値動きとなった。ただし、極端に売りが強まったというよりは、あくまで薄商いの中で先物主導によるインデックス売買の影響を強く受けた格好であり、全体としては2万9000円水準での底堅さが意識されていた。

米国ではインフレ圧力を警戒しつつも、長期金利の落ち着いた値動きを背景に、景気敏感株への利益確定の動きに対して、大型テックやハイテク株などへの買いが目立ってきた。一方、国内ではアフターコロナを意識した景気敏感株への物色は続いているものの、18日は利益確定の動きが強まっている。

新型コロナウイルスワクチンの接種状況だが、大規模会場で18歳以上、64歳以下の接種が始まった。また、10都道府県に出されている緊急事態宣言について、20日から沖縄を除く9都道府県で解除されるなど、経済活動の正常化に向けた動きは進んでいるものの、景気敏感株に関してはいったん材料出尽くしといった見方も台頭している。

他方、来週(6月21日~25日)はこの週だけで12社のIPOが予定されている。IPO銘柄に短期的な値幅取り狙いの資金が集中しやすい半面、資金が分散してしまうため、初値形成とセカンダリーの両面で、盛り上がりに欠ける状況も想定される。そのため、物色の方向が定まりにくい中では、材料のある銘柄のほか需給が良好な銘柄での個別対応が中心となろう。そのほか、政府は新型コロナ対策についてしっかりした追加経済対策が必要との認識から、来週にも議論を開始すると伝わっており、関連銘柄を探る動きも活発になりそうである。

●来週の活躍期待「注目5銘柄」

◆MCJ <6670> [東証2]

BTO(受注生産)パソコンを販売。CPU、メモリ、ストレージ、グラフィックスなど自分好みにカスタマイズした商品を提供できる一貫したサプライチェーンを有する。特定市場に向けた特化型PCや顧客ニーズと予算に合致した製品を柔軟に投入。市場トレンドに即した頻繁なモデルチェンジなどで、在庫ロスの低減につなげる。 テレワークやGIGAスクールといった対コロナの特需では反動減も想定されるが、ゲーミングPCなど特化型製品の需要は引き続き伸びが見込まれる。株価は6月2日に年初来高値を更新し、いったんは達成感が意識されやすいが、13週移動平均線、26週線を支持線としたトレンドを形成。高値保ち合いからの上放れによる一段高に期待したい。

◆日本精機 <7287> [東証2]

車載計器などの設計・製造を中心に、FA分野における生産受託サービスのほか、パッケージング技術などを応用した遠隔監視システムといったIoT向け製品を提供。そのほか、空気環境(換気の目安)を可視化するCO2濃度測定器を開発している。株価は5月17日につけた1080円を安値にリバウンドを続けており、足元では13週、52週線を突破し、26週線を捉えてきた。

◆ラック <3857> [JQ]

高度なIT社会を支える情報セキュリティサービスを提供。新型コロナウイルス禍でテレワークが普及するなど企業のIT環境は大きく変化し、社会のデジタル化は一段と進展するとみられている。その中、これまで中心となっていた外部からの不正侵入の監視・防止という観点から、社内・社外を問わずIT環境は信頼できないとの前提(ゼロトラスト)に立ったセキュリティシステムが今後一般化する可能性が高く、セキュリティ事業の成長期待は大きい。株価は6月7日につけた954円を安値に足元でリバウンド基調を継続しており、25日線を突破し、75日線を捉えてきている。

◆ウェルスナビ <7342> [東証M]

NISA(少額投資非課税制度)の非課税メリットを活かしながら約50カ国の1万1000銘柄に自動で分散投資できる ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」を提供。5月28日時点で預かり資産は4500億円を突破している。同社は従業員の約半数がエンジニア・デザイナーなどのクリエイターが占める、「ものづくりする金融機関」を特徴とする。株価は5月28日につけた4740円をピークに調整を続けているが、25日線が支持線として意識されており、押し目狙いのスタンス。

◆ブロンコビリー <3091>

ステーキチェーンを展開。コロナ禍で外食の機会が制限される中、テイクアウトメニューを全店で販売。また、営業時間短縮による売上高減少を前提に、経費抑制などを進め収益の確保に努めている。国内ではワクチン接種が加速しており、緊急事態宣言についても沖縄を除いて解除が決まったことで、外食産業の業績改善期待は次第に高まろう。また、来月にも追加経済対策が取りまとめられる見込みであり、「Go To」キャンペーン再開などを巡って思惑も高まりそうだ。株価は5月25日につけた2214円の安値から鋭角的にリバウンドを演じ、6月9日には2587円まで急伸。足元は急ピッチの上昇に対する利食い優勢で調整局面にあるが、75日線接近で押し目狙いのスタンスか。

2021年6月18日 記

株探ニュース

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