国内株式市場見通し:短期反発も上値はまだ重い、中期的には見直し機運も

市況
2021年7月10日 14時34分

■コロナ感染再拡大や需給悪化懸念で大幅下落

今週の日経平均は大幅に下落した。6月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想よりも大幅に増加した一方、失業率は前月より悪化し賃金の伸びは前月比で減速。米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和を即座に縮小させるほどの内容ではないとの見解が優勢となり、前の週末の米株式相場を押し上げた。しかし、東京市場では雇用統計前の週末に既に売り方の買い戻しが入っていたことで、買い手の存在に欠くなか週明けの日経平均は終始軟調に。

連休明け6日の米株市場では、6月ISM非製造業景況指数が予想を下回ったことで景気回復ペースの鈍化懸念が浮上、NYダウの下げ幅は一時400ドルを超えるなど総じて軟調だった。米株安のほか、週末にかけての上場投資信託(ETF)の分配金捻出に伴う需給悪化懸念が重しとなり、7日の日経平均は一時500円近くにまで下げ幅を拡げた。

8日は、米10年債利回りがおよそ5カ月ぶりに一時1.3%を下回ったことが景気減速懸念を強めたほか、政府が東京都に4度目の緊急事態宣言を発出する方針と伝わったこともあり、日経平均は2日連続で200円超下落した。

その後、東京五輪について一都三県での無観客開催が決定したことで、新型コロナのデルタ変異株による世界経済への脅威が強まった。米長期金利が一段と低下するなか、8日の米株市場ではダウが一時500ドル超下げたほか、金利低下を追い風に好調だったIT系グロース(成長)株も売られ、ナスダックも調整した。米主要株価3指数が揃って大きく下落したことやETF分配金捻出に絡む需給悪化も重なり、週末の日経平均は28000円を割れてスタートすると、一時27419.40円(前日比698.63円安)まで下押しした。後場に入ってからは急速に下げ渋ったが、27940.42円と28000円を回復できずに週を終えた。

■日本独自要因が重しに、安川電機の決算反応に注目

来週の日経平均は短期的な戻りを試す展開か。ETFの分配金捻出に絡む需給悪化要因がなくなることや、今週に日経平均は1000円近くも下げていることから、短期的には反発が予想される。

著しい低下ぶりを見せる米10年物国債利回りについては、債券市場は既に年後半の景気減速を織り込みにいっているとの声も聞かれるが、6月FOMC前までにショートを積み上げていた投資家がポジションの巻き戻しを迫られているという需給面によるところが大きいとの指摘も多い。

実際、米国やドイツなどで経済指標の改善に鈍化が見られているのは確かだが、コロナショック後のV字回復においてはベース効果(ショック時の落ち込みにより前年比では数値が高く出ること)の影響でモメンタムが徐々に悪化するのは自然なことだ。水準としては歴史的な高水準を維持しており、景気鈍化を織り込むのは早すぎる印象も受ける。週後半にかけて調整した米株市場も週末には主要株価3指数が揃って過去最高を更新、米長期金利も1.36%まで戻している。長期金利の反発や過度な景気減速懸念の後退を映して日本株も持ち直すことが想定される。

一方、日本国内では株高を抑制する独自要因が多い。東京五輪に向けての感染再拡大リスクのほか、前回から1月も経たないうちの4度目の緊急事態宣言の発令、緊急事態宣言下での東京五輪開催を巡る是非の声などを背景に、政権の求心力低下を懸念視する向きが増えている。政治不透明感が海外勢の日本株買いを抑制する可能性も高く、目先の日本株の戻りは限定的なものとなりそうだ。

他方、明るい材料も出てきた。今月下旬から主力製造業の4-6月期決算が始まるが、その前哨戦とも呼べる安川電機<6506>の第1四半期決算は市場予想を上回った。また、通期の業績予想を上方修正しており、こちらも市場予想を上回っている。上振れ度合いも揃って大きく好印象。今後の決算に対する期待にも繋がる。安川電機のように第1四半期から高進捗率で業績上方修正を行う企業が増えれば、海外勢による見直し機運も高まっていくだろう。

そのほか、海外での経済指標に注目。まず米国では物価関連の指標が複数発表される。足元で米国の期待インフレ率や長期金利は低下基調にあるが、インフレ懸念がなくなったわけではない。発表後の反応を見極める必要がありそうだ。また、米国のほか中国で景気指標が多く発表される。足元では、景気回復ペースの鈍化を懸念視する向きも増えているだけに、世界経済をけん引する米中二大国の景気指標には注目が集まる。指標の鈍化が鮮明になると、一段の日本株買いの抑制にも繋がりかねないため、注視したい。

■3-5月期決算終盤戦、グロース株の一層の復調に期待

3-5月期決算発表が終盤を迎える。週初から多数の決算が予定されており、週を通して決算を受けた個別株物色が中心となりそうだ。特に指数寄与度の大きいファーストリテイリング<9983>の決算反応が注目される。また、米長期金利が低位にあるなか、グロース株の一層の復調にも期待したい。

■工作機械受注、中国4-6月期GDP、米小売売上高など

来週は12日に6月工作機械受注、米10年国債入札、13日に中国6月貿易収支、米6月消費者物価指数、米30年国債入札、14日に米6月生産者物価指数、地区連銀経済報告(ベージュブック)、15日に日銀政策決定会合(7/16まで)、中国4-6月期GDP、中国6月鉱工業生産、中国6月小売売上高、米7月ニューヨーク連銀製造業景気指数、米7月フィラデルフィア連銀景気指数、米6月鉱工業生産、16日に黒田日銀総裁会見、米6月小売売上高、などが予定されている。

《FA》

提供:フィスコ

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