来週の相場で注目すべき3つのポイント:米CPI、中国4-6月期GDP、ファストリ決算など

市況
2021年7月10日 18時07分

■株式相場見通し

予想レンジ:上限29000-下限28000円

来週の日経平均は短期的な戻りを試す展開か。上場投資信託(ETF)の分配金捻出に絡む需給悪化要因がなくなることや、今週に日経平均は800円あまり下げていることから、短期的には反発が予想される。

著しい低下ぶりを見せる米10年物国債利回りについては、債券市場は既に年後半の景気減速を織り込みにいっているとの声も聞かれるが、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までショート(売り持ち)を積み上げていた投資家が巻き戻しを迫られているという需給面によるところが大きいとの指摘も多い。

実際、米国やドイツなどで経済指標の改善に鈍化が見られているのは確かだが、コロナショック後のV字回復においてはベース効果(ショック時の落ち込みにより前年比では数値が高く出ること)の影響でモメンタムが徐々に悪化するのは自然なことだ。水準としては歴史的な高水準を維持しており、景気鈍化を織り込むのは早すぎる印象も受ける。今週後半にかけて調整した米株式市場も週末には主要株価3指数が揃って過去最高を更新し、米長期金利も1.36%まで戻している。長期金利の反発や過度な景気減速懸念の後退を映して日本株も持ち直すことが想定される。

一方、日本国内では株高を抑制する独自要因が多い。東京五輪に向けての感染再拡大リスクのほか、前回から1カ月も経たないうちの4度目の緊急事態宣言の発令、緊急事態宣言下での東京五輪開催の是非などを背景に、政権の求心力低下を懸念視する向きが増えている。政局の不透明感が海外勢の日本株買いを抑制する可能性も高く、目先の日本株の戻りは限定的なものとなりそうだ。

他方、明るい材料も出てきた。今月下旬から主力製造業の4-6月期決算発表が始まるが、その前哨戦とも言える安川電機<6506>の第1四半期決算は市場予想を上回った。また、通期の業績予想を上方修正しており、こちらも市場予想を上回っている。上振れ度合いも揃って大きく好印象。今後の決算に対する期待につながる。安川電機のように第1四半期から高進捗率で業績上方修正を行う企業が増えれば、海外勢の見直し機運も高まっていくだろう。

そのほか、海外での経済指標に注目。まず米国では物価関連の指標が複数発表される。足元で米国の期待インフレ率や長期金利は低下基調にあるが、インフレ懸念がなくなったわけではない。発表後の反応を見極める必要がありそうだ。また、米中で景気指標が多く発表される。足元で景気回復ペースの鈍化を懸念する向きも増えているだけに、世界経済をけん引する米中二大国の景気指標には注目が集まる。指標の鈍化が鮮明になると、更なる日本株買いの抑制にもつながりかねないため注視したい。

3-5月期決算発表が終盤を迎える。週初から多数の決算が予定されており、週を通して決算を受けた個別株物色が中心となりそうだ。特に指数寄与度の大きいファーストリテイリング<9983>の決算反応が注目される。また、米長期金利が低位にあるなか、グロース株の一層の復調にも期待したい。

■為替市場見通し

来週のドル・円は底堅い値動きか。新型コロナウイルスのワクチン接種が世界的に進展しているものの、足元で発表された経済指標から景気回復の一服感が示されている。また、産油国間の政策不一致による原油の需給引き締めが強まり、原油価格は不安定な動きを見せている。9日の米国株式市場で主要株価3指数は終値ベースで最高値を更新したが、世界経済の早期回復への期待は低下しており、日米の株価は調整圧力に押され、リスク回避的な取引はしばらく続く可能性がある。

このような状況下では、米連邦準備制度理事会(FRB)による将来的な金利引き上げの可能性も意識して、ドル選好地合いが見込まれる。来週発表の米経済指標で、6月の消費者物価指数や小売売上高が市場予想を上回った場合、金融緩和策の早期縮小観測が再浮上し、ドルは売りづらい展開となりそうだ。

■来週の注目スケジュール

7月12日(月):工作機械受注(6月)、東京都で4回目の緊急事態宣言期間入り、欧・ユーロ圏財務相会合(米財務長官も出席)、など

7月13日(火):米・消費者物価コア指数(CPI)(6月)、国際エネルギー機関(IEA)月報、米・決算発表:ペプシコ、JPモルガン、ゴールドマン、など

7月14日(水):米・生産者物価コア指数(PPI)(6月)、米・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が半期に1度の議会証言(下院金融委員会)、米・地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、米・決算発表:BofA、ウェルズ・ファーゴ、ブラックロック、シティグループ、デルタ航空、など

7月15日(木):日銀政策委員会・金融政策決定会合(16日まで)、決算発表:ファーストリテ、中・GDP(4-6月)、中・鉱工業生産指数(6月)、中・小売売上高(6月)、米・フィラデルフィア連銀製造業景況指数(7月)、米・ニューヨーク連銀製造業景気指数(7月)、米・鉱工業生産指数(6月)、米・パウエルFRB議長が半期に1度の議会証言(上院銀行委員会)、石油輸出国機構(OPEC)月報、米・決算発表:TSMC、モルガンS、など

7月16日(金):黒田日銀総裁が会見、ラキールが東証マザーズに新規上場、米・小売売上高(6月)、米・ミシガン大学消費者信頼感指数速報(7月)、など

《YN》

提供:フィスコ

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