明日の株式相場に向けて=「EVとパワー半導体」の出遅れ株に照準

市況
2021年7月15日 17時00分

きょう(15日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比329円安の2万8279円と続落。前日の米国株市場ではNYダウが高安まちまちの展開で買い手掛かりに事欠いたということはいえたが、その割にはちょっと日本株の押しが深かった印象だ。パウエルFRB議長の下院金融サービス委員会での議会証言が注目されたが、予想通りというべきか、緩和的政策の長期化を示唆する内容だった。米長期金利も素直に反応し1.34%台まで急低下した。今の米株式市場で、10年債利回りは上がった方が喜ばれるのか、下がった方が喜ばれるのか微妙なところではあるが、米国株市場では基本的に(少なくとも今の段階では)新型コロナウイルスではなくインフレを警戒しているので、パウエル氏の証言は市場のセンチメントにプラスに働いた。

きょうは、前場取引時間中に中国の重要経済指標が発表された。こちらは景気のピークアウト、つまり減速懸念が取り沙汰されていたが、6月の小売売上高、工業生産ともに事前の市場予測を上回る強い数字であったことから、中国上海株式市場はもとより、香港、ベトナム、韓国などアジア市場は総じて堅調だった。こうなると、なおさら東京市場の“独歩安”が目立つ。ここまでくれば、日本国内の新型コロナ事情が日本固有の悪材料として警戒されていることは論をまたない。アジア諸国でもインドネシアなどと比較して日本の感染状況はまだそれほど深刻ではないようにも見えるが、やはり7月23日から8月8日までの日程で行われる東京五輪がネックとなっている。この流れで行くと、五輪開催後に政局不安が訪れる可能性もあり、非常に厄介だ。しかし、こういう時は得てして買い場を提供していることが多いのもこれまでの相場が証明してきた。全般論として、上値を買わず、深押し場面で買い向かう、というスタンスが実践的に有効と思われる。

個別では、強い株の押し目を狙う方針で臨みたい。その際にテーマとしてはやはり「脱炭素」を意識せざるを得ない。それは再生可能エネルギーであり、EVであり、次世代電池であり、パワー半導体であり、そしてAI・IoTと同化したスマートシティといった範疇も広義では含まれるかもしれない。

EUが14日に“カーボンゼロ”に向けた包括案を公表、ハイブリッド車(HV)を含むガソリン車など内燃機関を持つ自動車を2035年に事実上禁止するという話は結構なインパクトがある。まだ先の話とはいってもあと14年しかないという見方もできる。全く関係のない話だが、我々証券界に身を置くものにとってリーマン・ショックの衝撃波は、まだつい最近のことのように“肌感”としてはっきり残っている。しかし、既に13年という歳月が流れているのだ。何といっても電気自動車(EV)は普及が加速しているとはいえ、現状では世界の新車販売の3%を占めるに過ぎないというのが実際のところであり、14年間の猶予があるとしても、ユーロ圏で新車販売がほぼEVに代わるとなると、これはやはり事件である。国内では盟主トヨタ自動車<7203>の一挙一動が今後重要な意味を持つが、欧州や中国では「電動車(という括り)では駄目なんです」と言われる時代となっていく現実を見据える必要に迫られている。

半導体は産業のコメと呼ばれるが、たとえば再生可能エネやEVのコメとなるのはパワー半導体だ。パワー半導体関連の元祖的な存在である三社電機製作所<6882>は、今の世界的なトレンドのなかで人気化素地が改めて開花する可能性を秘めている。また、きょうは同関連で先駆していたトレックス・セミコンダクター<6616>が全体相場の地合いが悪化するなか大きく利食われたが、業績変化率は一頭地を抜いており、株価もPER23倍前後で頭打ちということはないだろう。このほか、SiC用精密切断装置などで抜群の商品競争力を持つタカトリ<6338>や、半導体商社でパワー半導体なども幅広く扱う丸文<7537>も注目される。再生可能エネルギー関連では太陽電池製造装置を米国で展開するエヌ・ピー・シー<6255>や、日本海側を中心に洋上風力発電プロジェクトに積極的に参画するユアテック<1934>なども一段の活躍余地がありそうだ。

あすのスケジュールでは、日銀の金融政策決定会合の結果発表と黒田日銀総裁の記者会見。また、東証マザーズ市場にラキール<4074>が新規上場する。海外では、5月のユーロ圏貿易収支、7月の米消費者態度指数速報値、6月の米小売売上高など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2021年07月15日 17時01分

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