明日の株式相場に向けて=怒涛の海運と復権狙う半導体
きょう(5日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比144円高の2万7728円と3日ぶり反発した。とはいえ、値下がり銘柄数が値上がりを大幅に上回っており、依然として重苦しい地合いが続いている。
ただ、そうしたなかも引き続き海運株が大手を中心に凄まじい勢いで買いを引き寄せている。業種別上昇率は9.5%で文字通り群を抜いている。しかもこれが初めてではない。業種別で9~10%という上昇率が2度、3度と繰り返されるのは尋常ではないが、大手3社についてはそれを肯定するだけの目を見張る収益変化がある。2007年の海運株大相場を想起させるといってもよい。きょうは日本郵船<9101>が全上場企業のなかで断トツの売買代金をこなし、東証1部の値上がり率でもトップとなるという離れ業をやってのけた。商船三井<9104>や川崎汽船<9107>の上げ足も際立つ。当欄で取り上げた乾汽船<9308>の上値追いも鮮烈だが、中小型では東証2部銘柄の玉井商船<9127>が、きょうは朝方からストップ高カイ気配に張り付くなどまさに海運フィーバーとなっている。
そうした海運セクターの派手な値動きの裏で、新たな投資資金が別の入り江に静かに流れ込んでいる。花形であった半導体関連は主力株中心にここ精彩を欠いていたが、再び注目される可能性が出てきた。半導体製造装置のグローバルニッチトップとして株価を大変貌させたレーザーテック<6920>だったが、最近は証券会社の投資判断引き下げの動きなどが足かせとなって売りに押されバランスを崩していた。しかし、足もとでは75日移動平均線をターニングポイントに、じわり体勢を立て直しつつある。ここ米国株市場で半導体セクターが再び輝きを見せ始めており、直近、半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が史上最高値圏に再浮上したことが、東京市場にも影響を与えている。
依然として投資マネーの熱視線の先には半導体業界がある。自動車をはじめとする製造業の業績好調も一部で7~9月期がピークとの見方が出ているが、その背景には半導体の供給不足によるサプライチェーンリスクが意識されている。したがって、半導体設備の増強は一段と急を要することになる。つまり半導体製造装置関連は“買い”ということだ。米国では製造装置世界トップであるアプライド・マテリアルズ<AMAT>が4月につけた上場来高値更新を指呼の間に捉えているが、SOX指数と酷似した上昇トレンドを形成している。
この流れを理解したうえで、中期スタンスで狙いたい銘柄は野村マイクロ・サイエンス<6254>。目先押し目があれば拾っておきたい。11日に第1四半期決算発表を予定するが発表後にボラティリティが高まる可能性があるため、その後の値動きを見てからの参戦でもよいだろう。また、決算発表済みの銘柄ではダイトロン<7609>。半導体製造装置に強みを持つ電子機器商社だが、21年1~6月期決算は絶好調で通期見通しも上方修正した。21年12月期営業利益は前期比56%増の37億5000万円を見込むが、一段の上振れもあろう。株価はマド開け急騰後に一服しており、もう一押しあればチャンスとみたい。
これ以外に短期トレード対象としてマークしたいのが、新型コロナワクチンの周辺株。新型コロナのインド型変異株であるデルタ株の感染が広がっていることに世界が身構えている。「デルタ株の逆襲」などと銘打つと不謹慎と思われそうだが、人類はこれに対抗するためにワクチンのブースター接種にとどまらず、1年あるいは半年というタームで継続的な接種が必要になるケースも考えねばならない状況となってきた。治療薬の開発が進めばその限りではないが、「ワクチン利権があるとすれば、当分は有力な治療薬も出てこないのではないか」(ネット証券ストラテジスト)という穿った意見も聞かれる。不二硝子<5212>が4営業日で3回ストップ高を演じるなど大立ち回りを演じているが、現在休火山状態のツインバード工業<6897>も高値期日明けでそろそろ注目のタイミング。また、ワクチンの予約受付管理システムで先駆的存在のNCS&A<9709>も注目したい。
あすのスケジュールでは、6月の家計調査、6月の毎月勤労統計調査、6月の景気動向指数など。海外では7月の米雇用統計、6月の米消費者信用残高、6月の米卸売在庫・売上高など。このほか、インド中銀の金融政策決定会合が行われる。国内主要企業の決算発表では、レーザーテック6月本決算)、住友金属鉱山<5713>、東京海上ホールディングス<8766>、NTT<9432>、セコム<9735>などが予定されている。(銀)
最終更新日:2021年08月05日 17時48分