【杉村富生の短期相場観測】 ─超金融緩和&好業績が株価を支える!
「超金融緩和&好業績が株価を支える!」
●コロナ対策はブースター接種の時代に!
新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」が猛威を振るっている。東京都の場合、感染者の8割が「デルタ株」に切り替わったという。何しろ、感染力が非常に強い。恐ろしい変異株である。コロナ禍克服の切り札はワクチン接種だ。イスラエルに続き、イギリス、フランス、ドイツがブースター(3回目)接種を始める。
従来、集団免疫の獲得は接種率70%が目安だったが、アメリカは80~90%、イギリスは93%に引き上げた。しかも、全国民が対象だ。子ども、赤ちゃんも接種の対象とする。これを受け、ファイザー<PFE>、モデルナ<MRNA>のワクチン価格が値上がりしている。早晩、ワクチン不足が深刻な状況となろう。
中国製のワクチンは弱毒性のため、変異株には効果が薄いといわれている。このため、欧米製のワクチンを購入するか、変異株に対応できるワクチンの開発しかない。中国人民銀行は先に、4-6月期のGDP成長率が7.9%と快調だったにもかかわらず、預金準備率を引き下げた。これは景気の先行きに対する予防的措置だったのだろう。
ちなみに、0.5ポイントの預金準備率の引き下げは長期流動性を1兆元(約17兆円)拡大させる効果がある。明らかに景気下支えを狙ったものだ。日本は中国との関係が深いだけに、最近の教育関係、ゲーム、動画配信などの規制強化および景気の動向には細心の注意を要する。
ただ、安川電機 <6506> 、オムロン <6645> などの設備投資関連機材を幅広く取り扱っているサンワテクノス <8137> によると、「現状では半導体、省力化機械などの分野は中国向けのキャンセル、受注減速などの動きは全くない」という。
●売られすぎゾーン突入の新日本化学!
一方、株式市場はコロナショックをものともせず、日本を除いて堅調だ。やはり、過剰流動性の存在と好業績が株価を援護している。FRBの総資産は8.2兆ドルに膨らみ、月間1200億ドル(800億ドルの国債、400億ドルのMBS[住宅ローン担保証券]を購入)のペースで増え続けている。
金余りはリバースレポ(金融機関がFRBに資金を預ける制度)の残高が1兆ドルを超え、MMF(マネー・マーケット・ファンド)の残高が4.5兆ドルという数字に端的に表れている。テーパリング、利上げは1~2年先の話だ。それも、パウエルFRB議長は「先送り」を示唆している。ECBのラガルド総裁は「私の任期中のゼロ金利解除はない」という。
ラガルド総裁の任期は2027年10月までだ。欧米の金融当局はコロナ克服を最優先にしている。秘かにステルステーパリングを行っているミス連発(失われた20年の主因)のどこかの中央銀行とは大違いである。
さて、ここでの投資戦術、物色作戦はどうか。アメリカ市場ではロビンフッド・マーケッツ<HOOD>が暴騰、暴落を繰り返している。値動きは荒いし、怖い。このロビンフッドは直近IPO銘柄だ。一方、日本のIPO銘柄はボロボロの状態に近い。テンダ <4198> [JQ]など公募価格を割り込む銘柄が続出している。ただ、こんなところは黙って買うに限る。
“売り屋”の暗躍もある。新日本科学 <2395> は5日に瞬間、837円(前日比178円安)の安値まで売り込まれた。4-6月期決算が「不振だった」というが、会社側によると「主力の前臨床事業の受注高は60%増の61.3億円と過去最高のペース」という。アステラス製薬 <4503> との提携効果がある。売られすぎではないか。
2022年3月期に700円配当を行う日本郵船 <9101> 、同550円配当の商船三井 <9104> は1株利益2800~2900円(高収益)時代を迎えている。大手証券では「これがニューノーマル→新常態」という。トヨタ自動車 <7203> の好業績も際立っている。
2021年8月6日 記
株探ニュース