明日の株式相場に向けて=海運株とソフトバンクGの類似点
3連休明けとなった10日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比68円高の2万7888円と3日続伸。ただ、一時300円超の上昇をみせていたことを考えると、上値の重さを再確認させられたという感も強い。2万8000円台に入るとなぜか先を競うように売り物が出てくる。日経平均は一瞬マイナス圏に沈む場面もあり、先物主導でヒヤリとさせられた。ただTOPIXも3日続伸となっており、こちらは日経平均よりは遥かにチャートの形が良い。三角もち合いが煮詰まり1930前後で収れんする3本の長短移動平均線(5日・25日・75日線)の上に頭を出しており、今の株価水準で保ち合いを続ければTOPIXの方は日足一目均衡表の雲抜けが見込める状況だ。
騰落レシオ(25日移動平均)をみると前週末(6日)時点で東証1部、東証2部ともに85%台だが、マザーズ指数が63%台と際立って低い。ネット証券大手の話では「個人投資家も大口投資家ほど1部の主力株や米国株を保有しているケースが多いが、短期トレードで直近IPO銘柄などを好んで売買する向きは、資金がフリーズしてしまっている状態にある」という。直近IPO銘柄がマザーズ市場に多いことも影響している。短期スタンスと中長期スタンスでは基本的に資金の性質が異なり、短期狙いで思惑を外してしまった場合は持ち株も売り切るのが原則だ。
海運株は日本郵船<9101>や商船三井<9104>が上昇一服となっているが、乾汽船<9308>はきょうも高く、6連騰で一時90円あまり上昇し連日の年初来高値更新となった。ただ、これらの銘柄は参戦するのであれば、ある程度の押し目を形成した時に周りの状況を見ながら考えるというスタンスが望ましい。現在見えている時価予想PERは郵船、商船三井ともに2倍台で配当利回りが8~9%台と“常識外の割安圏”に放置されていることは確かだが、コンテナ運賃が“常識外の高騰”となっており、今の株価指標はそれを反映した突発的な異常値であるとの認識を持っておく必要もありそうだ。これは市況産業の株全般に通じることでもある。
その究極の例がソフトバンクグループ<9984>ということになる。21年3月期に国内企業では過去最高となる最終利益4兆9879億円を記録し、PERは2倍台まで急低下した。だが、これは米国をはじめとする世界的な株高によるもので、来期の利益を保証するものではない。振り返って20年3月期は同社にとって過去最大の9615億円の赤字を計上していた。当然ながらPERは算出不能で敢えていうなら“無限大”ということになる。つまり、空前絶後の業績大変貌を演じた翌年は、再び赤字転落しPER無限大になってしまう可能性がゼロとは言い切れないから、PER2倍台でも見送られてしまう。ちなみにきょうの取引終了後に発表した4~6月期決算は最終利益が前年同期比4割減益だったが、トップラインについては16%増収を確保した。午後4時過ぎの段階で私設取引では株価を上昇させている。この決算であれば、時価は売られ過ぎであろうとの判断だが、現時点で期待された自社株買いの話は出ておらず、その場合、上値の重さが露呈する可能性もある。
個別では好決算株のギャップアップにつく動きが活発だ。走り出した列車に飛び乗るような投資作戦は、それはそれで否定されるものではないが、決算発表後の銘柄をよく吟味して目先筋の利益確定売りを見届けてからおもむろに買い出動する方が怪我は少ない。ネット接続サービス大手の朝日ネット<3834>はプライム適合をいち早く発表した企業でもあり、700円近辺のもみ合いは底値買い好機とみたい。また、業績絶好調銘柄では遠藤照明<6932>の上昇一服場面が面白い。PER、PBRの割安さが際立つほか、無線で調光調色可能な照明の拡販で更なる業績拡大に期待がかかる。リチウムイオン電池関連では田中化学研究所<4080>の押し目買い、ネットセキュリティで独自技術を持つイー・ガーディアン<6050>も注目。このほか、画像検査装置の製造販売を手掛け、高性能GPU搭載の欠陥検査装置開発が伝えられるタカノ<7885>も足もとの業績回復が急でマークしたい。
あすのスケジュールでは、7月のマネーストック、30年物国債の入札など。海外では、7月の米消費者物指数(CPI)、7月の米財政収支など。なお、インドネシア市場は休場となる。国内主要企業の決算発表では電通グループ<4324>、日本郵政<6178>、第一生命ホールディングス<8750>、SMC<6273>などがある。米国ではイーベイ<EBAY>の決算発表が予定されている。(銀)