窪田朋一郎氏【デルタ株と米金融政策に思惑錯綜、相場は上か下か】 <相場観特集>

特集
2021年8月10日 18時30分

―夏枯れ相場からの脱却は? 9月相場で日経平均はどう動く―

3連休明けとなった10日の東京株式市場では日経平均が一時300円以上の上昇をみせたものの、その後は例によって戻り売りを浴び、上げ幅を縮小させる展開を余儀なくされた。新型コロナウイルスのデルタ株に対する警戒感は依然として根強い一方、米国では景気回復期待が再び強まるなか、長期金利が上昇傾向を見せ始めている。テーパリングに対する思惑も改めて意識されそうであり、投資家も対応に悩むところだ。8月後半から9月に向けた相場展望について、先読みに定評のある松井証券の窪田朋一郎氏に意見を聞いた。

●「当面はボックス圏往来も9月に下振れリスク」

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

日経平均株価はリバウンドしても上値が重く、なかなか戻り足を強める展開とはなりにくい。8月も第2週に入ったが、月末にかけてはこれまで同様に狭いゾーンでの往来を繰り返し、ボックス相場の域を脱することは難しいと判断している。2万7000円台前半から2万8000円台後半の往来が続きそうだ。

9月相場も上値の重さが意識されそうだが、一方で下値リスクが高まる可能性があると考えている。米国では7月の雇用統計が市場コンセンサスを上回った。雇用情勢の改善が確認される一方、コロナ禍にあっても不動産価格の上昇が顕著で警戒されており、FRBも早晩、過度な金融緩和策の是正に動き出す公算が大きくなった。利上げについては2022年末から23年末の間に行われるとみているが、テーパリングについては9月のFOMCで具体的なスケジュールに言及し、年内にも着手される可能性が高いとみている。

一方、日本国内では菅政権の支持率低下で政局不安が相場の重荷となっている。新型コロナウイルスのデルタ株の感染状況も警戒水域にあり、現状で支持率が改善するような光明は見えない。したがって総選挙のタイミングは任期満了まで引き延ばされる確率が高く、9月の総裁選を経て与党は今の流れを変えて選挙に臨むシナリオが想定される。いずれにしても9月は日米ともに波乱要素を内包しており、仮に米国株がバランスを崩せば日本株もそれに追随して下値を売り込まれるケースは避けられず、日経平均は2万6000円近辺への深押しもあり得る。

ということで物色対象にも難儀するが、短期スタンスでは日本郵船 <9101> や商船三井 <9104> などの海運株の上値がまだあるとみている。PERや配当利回りなど株価指標面からは非常に割安感が強く、押し目は買い向かってみたい。ただし株価水準はかなり高い位置にあり、市況産業であるため今が収益環境的にピークとみれば長期で資金を寝かせる対象とはなりにくい。比較的中長期で見た場合は、JR東日本 <9020> をはじめとする鉄道や日本航空 <9201> 、ANAホールディングス <9202> などの空運株アフターコロナ関連の切り口で再び買い直される可能性がある。また、ディフェンシブストックとして武田薬品工業 <4502> 、塩野義製薬 <4507> などの医薬品株もマークしたい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)

松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。

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