為替週間見通し:ドルは下げ渋りか、米金融緩和策早期縮小への期待持続
【今週の概況】
■ドル弱含み、新型コロナウイルス変異株の感染拡大を警戒
今週のドル・円は弱含み。雇用情勢の改善が続いていること、米議会上院で8月10日に国内インフラの整備に約1兆ドル規模の投資を実行する超党派の法案が賛成多数で可決されたことを受けて、週前半はリスク選好的なドル買い・円売りが優勢となった。ドル・円は一時110円80銭まで買われたが、新型コロナウイルス変異株の感染拡大によって米国の景気回復ペースは鈍化する可能性があることから、リスク選好的なドル買い・円売りは一段落した。インフレ率は今年後半にかけて鈍化すると予想されていることも、ドルの上昇を抑える一因となった。
13日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時109円55銭まで下落した。この日発表された8月米ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は約10年ぶりの低水準となり、米長期金利は低下したことから、リスク回避的なドル売り・円買いが活発となった。ドル・円は109円59銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:109円55銭-110円80銭。
【来週の見通し】
■ドルは下げ渋りか、米金融緩和策早期縮小への期待持続
来週のドル・円は下げ渋りか。米連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和策の早期縮小への期待は持続し、リスク回避的なドル売りがさらに拡大する可能性は低いとみられる。直近の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は予想外の増加を記録し、失業率は一段と低下した。一方、7月消費者物価コア指数(コアCPI)の上昇率は市場予想と一致し、8月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は急低下したことから、長期金利の上昇は一服した。来週発表される7月小売売上高が市場予想を下回った場合、個人消費の鈍化が意識される可能性があるため、長期金利はさらに低下し、ドル安要因となりそうだ。
ただ、新型コロナウイルス変異株の感染拡大は米国以外の主要国の経済活動にも大きな影響を与えることから、欧州中央銀行(ECB)や豪準備銀行(中央銀行)は現行の金融緩和策を2022年以降も継続する可能性が高い。また、今月26-28日に米ワイオミング州で開催されるジャクソンホール会合に向け、FRBの資産買入れの段階的縮小(テーパリング)開始への観測は根強く、8月18日に公表される連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で金融緩和策の早期縮小について肯定的な意見が多く含まれていた場合、ドルは底堅い動きとなる可能性がある。なお、米国株式市場では、ダウ工業株30種とS&P総合500種が終値ベースの最高値を更新しており、米国株式の強気相場が日本、中国、欧州諸国の株式市場に波及した場合、リスク選好的な円売りが増える可能性があることはドル・円相場に対する支援材料となりそうだ。
【米・7月小売売上高】(17日発表予定)
17日発表の7月小売売上高は前月比-0.2%と、6月の+0.6%から失速する見通し。市場予想を下回り、個人消費の弱さが意識された場合、金利安・株安に振れ、ドル売りにつながりそうだ。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨】(18日公表予定)
FRBは8月18日、7月27-28日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表する。議論の詳細から引き締め姿勢がより顕著になれば、ジャクソンホール会合に向けドル買いは続くとみられており、ドル・円は、下げ渋りか。
予想レンジ:109円50銭-111円50銭
《FA》