【杉村富生の短期相場観測】 ─眠れぬ時は「真夏の夜の夢」を!
「眠れぬ時は『真夏の夜の夢』を!」
●日経平均株価が11万円になる?
厳しい相場展開が続いている。“夏の長雨”のあとは再び猛暑である。さらに、トヨタショック(減産)の襲来だ。コロナ禍は収束の兆しがみえない。日本の感染者は123万人を超えた。アメリカは3715万人強だ。日本の30倍の感染者数になる。1人の感染者が何人に感染させたかを計る指標に基本再生産数がある。
この数値がアメリカではピークアウトした、と報道されている。その後、感染者の拡大ペースが落ちる、といわれているが、どうなるのだろうか。「デルタ株」は感染力が強いだけに、楽観は許されない。いずれにせよ、「デルタ株」に有効なモデルナ<MRNA>のワクチン接種を急ぐ必要があろう。
古来、材料はあとから貨物列車に乗ってくる、という。株価が低迷すると、ネガティブな情報があふれかえる。世界的に異常気象だし、日本は政治の迷走に加え、緊急事態宣言の乱発、繰り返しである。アフガニスタン情勢は気掛かりだ。混乱が中東全域に広がると、地政学上のリスクが高まる。
ただ、救いなのは企業業績が好調なこと。4-6月期決算は4社に1社が最高益となった。日経平均株価の1株利益(予想ベース)は2134円(実績ベースは1569円)だ。36%増益となる。もちろん、史上最高である。コロナショック前の水準(2019年の1750円)を大幅に上回る。企業収益はコロナ禍を克服したことを意味する。
ちなみに、日経平均株価のPERは12.9倍、PBRは1.18倍(1株純資産は2万3380円)にすぎない。アメリカ(S&P500ベース)はPERが21.2倍、PBRが4.78倍に評価されている。まあ、これは机上の空論というか、「真夏の夜の夢」に近いが、アメリカ並みに買うと、PERでは4万5000円、PBRでは11万円になる。
●公募価格割れのIPO銘柄を狙う!
いや~、すごい話じゃないか。確かに、日経平均株価の4万円、11万円は夢物語だろう。ただ、1989年12月29日には3万8915円(PER60倍)の高値をつけている。相場の世界は何が起こるか、分からない。それが相場である。そこで今回は直近IPO銘柄の株価不振(公募価格割れ)グループに焦点を当ててみたいと思う。
そう、9回裏の逆転満塁ホームランを狙う。いや、そんな大げさなものではない。テーマ性を有し、好業績のIPO銘柄が公募・売出価格の300~400円下の値段で買える。改めて述べるまでもない。IPO銘柄を上場前に買うのは難しい。なかなか入手できないIPO銘柄をもらったつもりでコツコツと拾う戦術はどうか。
具体的には公募価格1460円のドリームベッド <7791> [東証2]、同1380円のペイロール <4489> [東証M]、同3250円のテンダ <4198> [JQ]、同1920円のAIメカテック <6227> [東証2]、同1350円の全研本社 <7371> [東証M]など。各社ともユニークな業態だ。高成長が期待できる。
メジャー系の銘柄では大紀アルミニウム工業所 <5702> に注目している。環境問題を背景に、石炭火力発電による中国のアルミ精錬が制約を受けそうな情勢だ。アルミ市況はジリ高となろう。同社はリサイクルしたアルミニウム を原料とし、自動車部品などを生産、2022年3月期の1株利益は256円の予想だ。配当は8円増の36円とする。
一方、マーケットはトヨタショックに加え、FRBのテーパリング(資産買い入れ額の縮小)を気にしている。8月27日のジャクソンホール会議でパウエル議長が方向を示すだろう。しかし、脅える必要はない。FRBの総資産は8兆ドル超(リーマン・ショック時は4兆ドル)と高水準だし、月間1200億ドルの資産購入を「いつ減らすか」という話である。
2021年8月20日 記
株探ニュース