大塚竜太氏【懸念材料覆し、東京市場9月相場で反転なるか】(1) <相場観特集>
―新型コロナのデルタ株感染拡大や政局不安の影響を読む―
23日の東京株式市場は日経平均株価が急反発に転じたが、依然として不安定な地合いが続きそうだ。前週はリスク回避ムードの強い週で週末に一時2万7000円台を割り込むなど下値模索の動きが加速した。新型コロナウイルスのインド型変異株(デルタ株)の拡大が懸念されるほか、菅政権の支持率低下で政局不安も取り沙汰されている。こうしたなか、9月相場はどういう波動を描くのか。株式市場の見通しについて東洋証券の大塚竜太氏、為替の見通しについては上田ハーローの山内俊哉氏にそれぞれ話を聞いた。
●「日経平均はレンジ相場も弱気無用」
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
週明けの東京市場は、前週の悲観ムードに乗って積み上がった空売りの買い戻しが作用したと思われ、日経平均の上げ幅が大きくなった。周知の通り懸念材料を挙げればいくらでもあるが、個別企業のファンダメンタルズは良好であり、全体相場を一方的に弱気に傾けるほどの局面ではない。9月相場では日経平均は2万6500円から2万8500円のゾーンでの往来が予想される。仮に前週のような深押し場面があっても弱気無用、勇気を持って買い下がる方針で臨みたい。
横浜市長選は菅義偉首相が全面支援した候補が敗れたが、これはコロナ政策への不満が噴出したもの。カジノ構想についても、コロナ禍という状況を考慮すればタイミングは最悪で、立憲民主党推薦の候補者が勝利するのも半ば必然的な流れであった。ただし、これは立憲民主党を支援する動きを示唆するものではない。自民党は市長選の結果を受けて“菅おろし”の動きが出そうだが、野党も弱いため総裁選でワンクッション入れて総選挙に臨む形となれば、案外議席数の減少は少なくて済む可能性がある。
目先的には今週27日のジャクソンホール会合(オンライン開催)でのパウエルFRB議長の講演内容が注目されているが、世界的に新型コロナによる経済への影響が警戒されるなか、テーパリング(量的緩和縮小)時期に強く言及するようなことはなくマーケット撹乱(かくらん)要因とはならないとみている。一方、新型コロナ感染と株価の相関関係は実はそれほど強くないということも認識しておきたい。それは最高値圏にあるインド株の動向を見ても一目瞭然だ。過度に新型コロナを警戒して買いのチャンスを見逃すことのないようにしたい。
物色対象としてはトヨタ自動車 <7203> は絶好の押し目買い場を与えたと思っている。きょうは急反発に転じたが、依然として上値余地がある。また、東京エレクトロン <8035> やレーザーテック <6920> など半導体セクターの押し目も強気に対処して報われそうだ。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(おおつか・りゅうた)
1986年岡三証券に入社(株式部)。88~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。2000年から東洋証券に入社し現在に至る。
株探ニュース