コロナ感染拡大で巣ごもり長期化、「リユース関連株」に追い風環境続く<株探トップ特集>
―メルカリは黒字化達成で再評価機運、中古車にも見直し余地膨らむ―
東京株式市場は先週末に年初来安値を更新し、その後反発基調にある。そんななか再評価機運が高まっているのがリユース関連株だ。新型コロナウイルス感染症の再拡大で巣ごもりが長期化しており、家のなかを整理する機会が増え、使わなくなったモノの処分が進んでいる。この動きは、リユース市場の拡大につながっている。また、モノの廃棄を抑制する環境保全や不用品をお金に換える生活防衛の観点からも「リユース」の意識が高まっている。
●メルカリの前6月期は初の黒字化を達成
リユース関連の代表銘柄であるフリマアプリ最大手のメルカリ <4385> [東証M]が、12日に発表した21年6月期連結業績は営業利益が51億8400万円(前の期は193億800万円の赤字)と初めて通期で黒字化した。これを反映するかたちで、8月には株価は最高値更新をうかがう場面もあった。22年6月期通期の業績予想は明らかにしていないものの、7月28日にEコマース支援事業として「メルカリShops」を開始し、事業者による出品を解禁した。こうしたなか、ブランド品から家電製品、ファッション、中古車まで周辺銘柄への物色も本格化している。
●リユース市場は25年に3兆2500億円に成長も
リユース業界の新聞を手掛けるリサイクル通信の調査(2018年版)によると、リユース市場規模は20年には2兆5000億円に達し、25年には3兆2500億円になるとの予想も出ている。市場を大きく押し上げているのは、フリマアプリなどCtoCサービスの普及による個人間売買の拡大によるものだ。前出のメルカリの21年6月期における国内の流通額は、前の期比約25%増の7845億円だった。ブランド品を中心に海外への輸出拡大や、中高年層のスマホアプリ利用の広がりなどで市場の拡大余地が意識されるなか、同社は梱包発送の簡便化による利便性の向上などの施策が奏功し高い成長を実現したと見られる。
●日本の中古ブランドは世界的に高い人気を誇る
特に、日本で買い取られた中古ブランド品は、状態の良さから国内にとどまらず世界的に人気が高く、コロナ前の20年春までは、訪日外国人向けの中古品ブランド販売が急激に増えていた。コロナ禍で海外渡航が制限されるなか、インバウンド需要はリアルからオンラインへ移行し、その恩恵を受けるのはコメ兵ホールディングス <2780> [東証2]や、シュッピン <3179> 、大黒屋ホールディングス <6993> [東証2]、BEENOS <3328> などの銘柄群だ。
なかでもコメ兵HDは10日、22年3月期営業利益予想を従来の15億5000万円から21億9000万円(前期比3.7倍)へ引き上げた。同社はリユース業界のブランド品カテゴリーにおいて、約18%のシェアを誇るトップ企業。個人顧客からの買い取りが好調に推移し、電子商取引(EC)をハブとした小売りに加え、法人向けオークションなどによる法人向け販売やオークションでの相場高騰も継続している。これを受けて同社株は12日に約3年ぶりに1600円台を奪回した後調整局面にあるが、足もとの指標面ではPER11倍、PBR0.8倍程度と投資妙味は大きい。
●リユースショップ勝ち組のトレファクとハードオフ
トレジャー・ファクトリー <3093> は、家電や家具、アウトドア、スポーツ、ブランド古着などリユースショップ業態を中核とした事業展開が特徴だ。同社はオークション事業、引っ越し事業を展開することにより仕入れチャネルと商材の幅を広げ、強みである販売力を駆使し売り切ることで収益を最大化している。21年2月期は新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言発令の影響を受けて店舗の臨時休業などで業績が大きく落ち込んだ。ただ、22年2月期は業績のV字型回復が見込まれ営業利益予想が8億400万円(前期比7.5倍)になると計画している。
ハードオフコーポレーション <2674> は3月に年初来高値の933円をつけてから調整を入れており、足もとは750円から800円のボックス圏で推移。同社はパソコンや家電、酒類、楽器などリサイクル店を全国に直営・FC展開。昨年4月には取引先だったシステム開発会社を子会社化しデジタル戦略を強化した。リアル店舗を中心とした独自の「オムニチャネル」戦略の構築による成長を図る。22年3月期最終利益予想は7億円(前期比2.0倍)を計画しているが、第1四半期(4-6月)では既に3億4900万円(前年同期比5.2倍)と上期計画の4億円に対して87%に達した。指標面はPBRで0.8倍台、配当利回りで4.5%程度と割安水準にある。
●オフィスのリユース品でレンティアなど注目
更に新型コロナウイルスの感染拡大後、経営環境の悪化やテレワークの推進で、オフィスを移転、縮小する企業が続出。ここで使わなくなった机や椅子を回収し、リユース品として企業や店舗向けのレンタルやオークションへの出品、また、海外輸出を手掛ける企業などが受け皿となっている。コーユーレンティア <7081> [JQ]は家具、什器・備品、OA機器の レンタルサービスを展開。10日には21年12月期の連結営業利益予想を、従来の15億円から19億円(前期比37.4%増)へ上方修正。新型コロナウイルスのワクチン接種会場や政府主導の事業者向け経済対策に伴うBPO(外部委託)オフィス向けFF&E(家具、什器&備品)レンタルサービスの需要が高水準で推移している。
●需給の引き締まりによる中古車関連に再評価余地も
中古車もコロナ禍で需要が増えた分野の一つだ。20年の国内新車販売台数(軽自動車を除く)は9年ぶりに300万台を割り込んだのに対して、中古車の販売は好調に推移した。移動する手段として、公共交通機関を避け車が選ばれるなか、購入コストが抑えられて、納期を待たず購入後すぐに乗れる中古車が人気となっているようだ。足もとでは半導体不足などでトヨタ自動車 <7203> が9月の世界生産を4割減らすと発表した。これを受けて、需給が引き締まり再び中古車に対するニーズの拡大により、関連銘柄の見直し機運が高まっている。
具体的には、「ガリバー」ブランドで中古車買取最大手のIDOM <7599> 、中古車オークション運営のユー・エス・エス <4732> やオークネット <3964> 、国内中古車販売大手のネクステージ <3186> が挙げられる。また、東南アジアで輸出ビジネスを展開するアップルインターナショナル <2788> [東証2]、フリマサイトに注力するカーチスホールディングス <7602> [東証2]も要マークだ。このほか、中古車を買う場合まず情報サイトをチェックすることから中古車サイト「グーネット」を手掛けるプロトコーポレーション <4298> にも再評価余地が膨らんでいる。
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