明日の株式相場に向けて=グローバル・マクロの「日本買い」
きょう(13日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比65円高の3万447円と続伸。きょうは市場関係者も安くて当然と思っていたはずの日だが、想像以上に強い。ヘッジファンドの中でも影響力が大きい、世界の経済実勢や金利などのマクロ指標に連動して機動的売買を行うグローバル・マクロが日本株を買っているという観測が出ている。市場関係者によると「これまで強かった米国株を売り、欧州や日本株を買う一種のロングショートの動きがでており、特に日本株の動向に顕著にその傾向が出ている」という。ただ、好事魔多しという。「あすの8月の米消費者物価指数(CPI)の結果次第で、インフレ懸念が高まり米長期金利が跳ね上がったりするケースも考えられる。ここは少し冷静にキャッシュポジションを高めておいた方がよい」(ネット証券アナリスト)という声もある。もっとも米株が大崩れしなければ、東京市場は比較的強さを発揮し、例えば主力株が軟調でも中小型株物色の流れは継続しそうだ。
個別株では、半導体関連が引き続き強い。東京エレクトロン<8035>は何と13連騰で、文字通り最高値圏で舞い上がるように株価を上昇させている。ここまでくると、さすがに空売りの買い戻しが原動力とはなり得ず、実需買いすなわち海外投資家を中心とした機関投資家の組み入れ合戦がもたらした結果であることを示唆している。同社株は、きょうは一時5万6000円台まで水準を切り上げ、13営業日合計の上げ幅は1万1000円強に達し、時価総額にしておよそ1兆7000億円も増やした勘定となる。ちなみにNEC<6701>や日本郵船<9101>の時価総額は1兆7000億円に届いていない。つまり、東エレクは時価総額というモノサシを使えば、わずか13営業日でNECあるいは郵船1社以上を付け足したような形となっている。株高の資産効果というのは物凄いものがある。それを最強の武器としたのが、言うまでなく米国のGAFAMである。
世界的なデジタルシフトの動きは不可逆的で、DX時代の到来は半導体のスーパーサイクルを暗示する。東エレクのように主力だけではない。むしろニッチ分野で力を持つ中小型株は、テンバガー途上にある銘柄も今の東京市場には少なくないだろう。時価総額が小さいほどテンバガーの可能性が高いのはいうまでもない。コネクター大手で車載半導体パッケージ向け封止装置など半導体製造装置も手掛けるI-PEX<6640>が戻り足。更に時価総額100億円以下の小型株であれば、パワー半導体向け切断装置などで高い技術力を持つタカトリ<6338>も中期的に注目が怠れない銘柄だ。
また、デジタルシフトともう一つグリーンシフト、つまり脱炭素の流れも不可逆的といってよい。再生可能エネルギーのほか、水素やアンモニアのサプライチェーン構築が急がれているが、それを担うプラント業界には新たなビジネスチャンスが生まれている。東洋エンジニアリング<6330>が目先急動意しているが、国内トップの日揮ホールディングス<1963>や千代田化工建設<6366>などもマークしておきたい。また、ここ動意の兆しをみせている明星工業<1976>も800円近辺の株価は妙味がある。同社は中期計画で再生エネや水素・アンモニアへのシフトを積極化し“脱炭素特需”に備えている。
海運株の周辺では当欄で取り上げた杉村倉庫<9307>の人気が加速、出遅れているヒガシトゥエンティワン<9029>も再び上値を慕う展開となってきた。この流れが陸運業界にも波及しそうで宇徳<9358>をマークしてみたい。原発関連でもあるが、自民党総裁選の各候補者、河野規制改革相を含めいずれも原発再稼働を容認する姿勢を示していることで、これは同社株にポジティブ材料となる。また、運輸株ではないが同様の観点で木村化工機<6378>も足もとの風向きは悪くない。
DX関連ではエクスモーション<4394>に穴株妙味。また、朝日ネット<3834>は教育ICT分野で活躍が期待される。このほか、藤倉コンポジット<5121>が超割安の好業績株として人気が本格化しているが、好業績の背景にはゴルフシャフトの好調な売り上げが寄与している。同社と同様にゴルフクラブのOEM供給を手掛ける遠藤製作所<7841>は、相対的に出遅れており妙味がありそうだ。
あすのスケジュールでは、7月の鉱工業生産指数確報値が午後取引時間中に発表される。海外では、8月の米消費者物価指数(CPI)に注目度が高い。また、米アップル<AAPL>の特別イベント開催も予定されている。(銀)