新興市場見通し:足元堅調でも懸念残る、直近IPO銘柄賑わうも荒い値動き
今週の新興市場では、日経平均と同様にマザーズ指数、日経ジャスダック平均とも上昇した。新興株にとって特に逆風となる米インフレ懸念がくすぶることに加え、中国不動産会社の資金繰り問題などの海外リスクが警戒され、週半ばにかけて下落する場面もあった。ただ、週後半は米長期金利の低下とともに国内外の株式相場が上昇、特にハイテク株に投資資金が向かい、マザーズ市場にも一転追い風となった。なお、週間の騰落率は、日経平均が+3.6%であったのに対して、マザーズ指数は+1.9%、日経ジャスダック平均は+1.2%だった。
個別では、マザーズ時価総額上位のフリー<4478>が週間で5.3%高、JMDC<4483>が同6.4%高と堅調。ビジョナル<4194>は同10.6%高となり、上場来高値を更新した。売買代金上位では9月上場のレナサイエンス<4889>やアスタリスク<6522>が賑わい、ENECHANGE<4169>は電気料金の値上がり報道もあって買われたようだ。また、グローバルウェイ<3936>などが週間のマザーズ上昇率上位に顔を出した。一方、前の週に堅調だったメルカリ<4385>は同0.9%安。プロジェクトカンパニー<9246>も利益確定売りに押され、決算発表のEnjin<7370>などが下落率上位に顔を出した。ジャスダック主力は高安まちまちだが、生産能力の増強が好感されたハーモニック・ドライブ・システムズ<6324>は同2.0%高。好決算のウエストHD<1407>は同10.9%高となった。売買代金上位ではフェローテックHD<6890>が買われ、アスコット<3264>などが週間のジャスダック上昇率上位に顔を出した。一方、セリア<2782>はイオン<8267>のキャンドゥ<2698>子会社化で警戒感が広がり同4.1%安。出前館<2484>は決算を受けて売られ、テラ<2191>などが下落率上位に顔を出した。IPOでは、PHCHD<6523>が東証1部へ新規上場したが、公開価格割れスタートを強いられた。
来週の新興市場では、マザーズ指数が1100pt台前半で一進一退の展開になるとみておきたい。今週末の米国市場でも堅調な経済指標・企業決算を背景に主要株価指数の上昇が続いた点には安心感がある。しかし、期待インフレ率の指標が一段と上昇し、長期金利も反騰しており、新興株にとって重しとなりそうだ。また、直近IPO銘柄の一角などが賑わっているものの、値動きが荒い印象は拭えない。売買代金がやや低迷していることも踏まえると、短期志向の投資家中心の売買で、取引参加者は限られているものと考えた方が良いだろう。
今週末発表の決算では、アスタリスクやアイドマ・HD<7373>が好感されているようだ。ともに通期決算発表で、今期も大幅な増収増益が続く見通しとなっている。アイドマ・HDは今年6月に上場。直近上場企業の決算内容や株価反応はまちまちだが、4月上場のビジョナルのように再評価のきっかけとなったケースもある。成長期待の高い直近上場企業に注目したい。なお、来週は10月22日に沖縄セルラー電話<9436>などが決算発表を予定している。
IPO関連では、来週の新規上場企業はない。スマートロック開発のPhotosynth<4379>などがブックビルディング期間に入るため、需要状況を注視したい。なお、今週はGRCS<9250>(11月18日、マザーズ)とAB&Company<9251>(11月19日、マザーズ)の新規上場が発表されている。
《FA》