明日の株式相場に向けて=政局不安再燃も個別株で乗り切る
週明け25日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比204円安の2万8600円と反落。朝方寄り前から先物が大幅安で始まりヒヤリとさせられたが、日経平均は先物売り仕掛けにも比較的冷静で下値抵抗力を発揮した。例によってファーストリテイリング<9983>を売り込むことで指数を押し下げるパターン。同社株は一時3500円を超える5%近い下げとなった。市場では、中国で新型コロナウイルスの感染者数が再び増加しているとの報道が下げの要因に挙げられていたが、良品計画<7453>の下げは大したことがなく、日経平均寄与度の高いファストリへのピンポイント的な売り攻勢であったことが分かる。週明け早々のこのタイミングで、日経平均株価を下に叩きたいという思惑が存在している。
米株価指数先物が堅調な推移をみせ、アジア株市場も総じてプラス圏で推移するなか、日本固有の悪材料を探すとすれば政局不安以外にない。参院補選の静岡選挙区における自民敗北だけで東京市場のみ独歩安に売り込むインパクトはないが、きょうの相場の残像を今週末(=今月末)にかけても引きずる可能性があり、あまり芳しくない流れにあることは確かだ。ただ今週に深押しがあれば、選挙後に結果に関係なくイベント通過で買われる展開となる可能性もある。
岸田政権は本当に株式市場にとってネガティブな政権なのかは現状ではまだはっきりしない。しかし、長期上昇トレンドを構築したアベノミクス相場の初期のような、あるいは結果的に短命政権に終わったが、スガノミクスの文字がメディアに躍った時のような高揚感は総選挙が近いこのタイミングでも正直湧いてこない。
岸田首相は金融所得課税の強化については当面は封印することを表明したが、火消しに躍起となっていた感は否めなかった。また、市場関係者も「早い段階で数十兆円規模の経済対策に言及していたにもかかわらず、(今のところ)株式市場に完全スルーされてしまうというのも、財政再建論者のイメージが完全に染み付いてしまっているから」(中堅証券ストラテジスト)という見方が強い。株式市場にも国民にも不人気というのは少々気の毒だが、実際に自民党が単独過半数を維持するのは容易でないという雰囲気もあり「立憲民主と共産党の共闘態勢を考慮すると、自民・公明で合わせても政権維持(過半数の確保)が精いっぱいで安定多数の244議席を下回る可能性が高いのではないか」(ネット証券アナリスト)という声も聞かれた。
しかし、個別株はそうした全体視界不良相場の狭間にあっても、日替わりで間欠泉のように噴き上げる銘柄が随所にみられ、個人投資家にとっては面白味がある地合いだ。売買代金上位のレーザーテック<6920>や東京エレクトロン<8035>など半導体主力株は軟調だが、同じ半導体関連でも中小型株に強い動きをするものが多い。そのなか、出遅れで値ごろ感のある日本トムソン<6480>や、9月の戻り高値を抜いたタカトリ<6338>などは注目できる。また、パワー半導体分野で存在感を示す三社電機製作所<6882>ももう一段の上値余地に期待ができそうだ。
半導体関連以外では5G向け水晶デバイスで世界屈指の日本電波工業<6779>の押し目に着目したい。同じく押し目買い対象として、強力な上昇トレンドを形成中のアートスパークホールディングス<3663>あたりもマークしてみたい。このほか、今月初旬にも取り上げた三井松島ホールディングス<1518>は、元お笑い芸人の著名投資家が大株主に浮上したことで話題となっており、石炭高騰を背景とした「純投資」ということもあって、この先の株高ストーリーにマーケットの関心も高まりそうだ。過去の石炭市況との株価連動性が確認されており、時価は相当に割安圏にあるという見方で意外な相場に発展する可能性もありそうだ。住石ホールディングス<1514>や太平洋興発<8835>も合わせて注目となる。
あすのスケジュールでは、9月の企業向けサービス価格指数など。マザーズ市場にCINC<4378>が新規上場する。海外では10月の米消費者信頼感指数、9月の米新築住宅販売件数、8月の米S&Pコアロジック・ケースシラー住宅価格指数など。なお、国内主要企業の決算発表では、日本電産<6594>、キヤノン<7751>などが予定されている。また、海外ではテキサスインスツルメンツ<TXN>、ツイッター<TWTR>、アルファベット<GOOG>、マイクロソフト<MSFT>、ゼネラル・エレクトリック<GE>などが決算を発表する。(銀)