窪田朋一郎氏【不安と期待が交錯、強弱拮抗の相場のこれから】(2) <相場観特集>
―NYダウ最高値でも下値模索の東京市場をどう見る―
週明け25日の東京株式市場では日経平均が反落となった。前週末の米国株市場ではNYダウが最高値をつけるなど好調だが、ナスダック市場は売りに押される展開となっており、東京市場でもハイテク株に利益確定売りが出たことで軟調な地合いを強いられた。10月20日に2万9000円台半ばまで水準を切り上げ戻り高値をつけた後は再び軟化し2万8000円台に押し戻されている。はっきりしない日経平均の値運びだが、ここからの相場展望について第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。
●「日経平均の上値重く、年内ボックス圏推移」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
日経平均株価は方向性の見えにくい展開だが、東京株式市場は当面、下げの要因のほうが意識されやすい地合いとみている。まず、原油市況の高騰が上値を押さえる要因だ。前週末のWTI原油先物価格は1バレル=83ドル76セントまで上昇、これを背景としたインフレ警戒ムードが相場の重荷となる。11月初旬のFOMCでのテーパリングの開始をマーケットは既に織り込んでいるが、利上げ前倒しの思惑などに波及すると全体相場は波乱含みとなる懸念も拭えない。
一方、国内では政局不安が改めて意識されている。通常、選挙期間中は株高というアノマリーがあるが、岸田新首相は株式市場にあまりフレンドリーではないという見方が浸透してしまっている。そうしたなか、24日に投開票された参院補欠選挙の静岡選挙区で自民党候補が敗北した。問題は、勝利したのが立憲民主党と共産党が共闘で立てた候補者ではなかったことだ。31日の衆院選では7割の選挙区で立憲民主党と共産党が選挙協力する見通しにあるだけに、自民党にとって議席数を減らす厳しい選挙となることが予想される。発足早々に岸田政権の求心力低下が予想されることで、株式市場においてもネガティブに働く公算が大きい。きょうは朝方から大きく売り優勢でスタートしたが、アジア株は日本を除いて総じて堅調な値動きを示していた。これは静岡選挙区での自民敗北を嫌気した可能性が高い。
とはいえ、FRBはインフレについて、予想以上に長引いてはいるものの一時的な物価上昇であるとの見方を変えていない。したがって当面は利上げに慎重な姿勢を続けることが予想され、株式市場も11月相場はボックス相場の往来とみている。日経平均のレンジは2万7000~3万円での推移が年内は続くと予想する。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース