【杉村富生の短期相場観測】 ─半導体、EV、仮想通貨関連を狙う!
「半導体、EV、仮想通貨関連を狙う!」
●サプライチェーンの混乱は一過性!
世界経済はコロナショックを克服、順調な回復をみせている。アメリカのGDP成長率は7-9月期に2.0%(前期比年率)と、1-3月期の6.4%、4-6月期の6.6%に対し、急減速となったが、これはサプライチェーンの混乱など特殊要因だ。いわゆる、一過性の現象である。
半導体不足はEV(電気自動車)市場の拡大、パソコン需要の急増、流通段階での在庫積み増し(特に、中国)、アジア地域の部材生産の停滞(コロナ禍)などによって引き起こされた。しかし、現在は 半導体メーカーが増産に転じ、コンテナ滞留などの物流面は改善に向かっている。
実際、トヨタ自動車 <7203> は12月以降、休日返上の大増産「挽回作戦」を行う。これはサプライチェーンの寸断が修復されたことを意味する。もちろん、足元の業績は絶好調だ。夏場に、いち早く減産に踏み切ったホンダ <7267> はトヨタの動きに追随するだろう。
一方、外部環境では半導体株指数(SOX指数)が上昇、恐怖(VIX)指数は15~16ポイントと落ち着いている。原油(WTI)市況は1バレル=80ドル割れ、バルチック海運指数は値下がりしている。FRBはテーパリング(資産買い入れ額の縮小)に踏み切ったが、米10年物国債利回りは1.529%と、冷静な反応をみせている。
NY市場は絶好調だ。NYダウは3万6000ドル台を維持、 S&P500指数、ナスダックは史上最高値を更新している。NY市場の時価総額は53兆3938億ドル(約6087兆円)と、日本市場(753兆円)の8倍に膨らんでいる。国際マネーはひたすら流動性を有する強いマーケットに向かう。
日本市場はどうか。やはり、基本は政治である。ウォール街は1982年夏、「この町は死んだ。もう2度と活気を取り戻すことはない」といわれた。NYダウは同年8月12日に、776ドルの安値をつけている。直近高値までの上昇率は47倍になる。
●アメリカ市場はなぜ、復活できたのか?
なぜ、復活できたのか。それは1981年1月に就任したレーガン大統領によるレーガノミクス(ディレギュレーション[規制緩和]の断行、ベンチャーダイナミズムの波の喚起、デファクトスタンダード(事実上の国際標準)獲得戦略、インフォメーションテクノロジーの推進など)の効果である。
以来、歴代大統領は共和党、民主党を問わず、成長戦略、改革路線を堅持してきた。迷走、迷走のどこかの国とは違う。もちろん、日本の政治は2012年12月の安倍政権の誕生以降は変わった。黒田日銀総裁の異次元の金融緩和は円安転換に貢献している。あとは岸田政権の役目(分配は大事だが、成長と改革が不可欠)だろう。
企業はタメ込み主義を廃し、増配とか、自社株買い、M&A、設備増強など積極的にお金を使う必要がある。すでに、日本郵船 <9101> 、商船三井 <9104> の800円配当(2022年3月期)などドラスチックな配当政策が出現するようになっている。ROE(株主資本利益率)の上昇はPBRの見直しにつながる。
ちなみに、日経平均株価のPBRは1.32倍(BPSは2万2572円)だが、NY市場(S&P500指数ベース)は4.88倍、世界平均(MSCIベース)は3.11倍に評価されている。仮に、世界平均の半分としても日経平均株価の上値メドは3万3860円に設定できる。
物色面では好業績、かつ元気な半導体セクターのレーザーテック <6920> 、東京エレクトロン <8035> 、信越化学工業 <4063> 、再生可能エネルギー関連のレノバ <9519> 、バイオテクノロジーの新日本科学 <2395> はポートフォリオの“核”となろう。
このほか、 仮想通貨事業を手掛けるマネックスグループ <8698> 、仕手化しているマーチャント・バンカーズ <3121> [東証2]、カラオケ店を展開、業績急浮上の鉄人化計画 <2404> [東証2]、金融機関向けシステムのシンプレクス・ホールディングス <4373>、リチウムイオン電池関連の日本電解 <5759> [東証M]などに妙味があろう。
2021年11月5日 記
株探ニュース