桂畑誠治氏【再び3万円大台視野、年末に向けての相場展望】 <相場観特集>
―米株高に加え、国内企業の好決算相次ぎ見直し機運台頭か―
週明け15日の東京株式市場は日経平均が3日続伸となり、一時2万9800円台まで水準を切り上げたが、3万円台を前にしてその後は減速、大台替えは次の上昇局面待ちとなった。日本株は足もとネガティブ材料に乏しいように見えるが、本格的な出遅れ修正の動きはまだ表面化していない。ここから年末にかけての相場見通しについて、日米の経済動向に詳しい第一生命経済研究所・主任エコノミストの桂畑誠治氏の意見を聞いた。
●「年内に31年ぶり高値圏に再浮上へ」
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
日経平均の上昇基調は基本的に年内続くとみている。2万9000円台後半は戻り売り圧力の強さが指摘されているが、早晩3万円大台ラインを通過点に一段の上昇余地が見込めそうだ。2万9000円台後半の売りをこなして3万円台回復となれば、値動きは軽くなるのではないか。9月14日に日経平均は終値ベースで3万670円の年初来高値(31年ぶりの高値)をつけたが、そこをクリアして3万1000円大台を視界に入れる場面もあり得ると考えている。
国内企業の決算発表が一巡したが、これまでの経緯を見る限り想定を上回る好調であったといってよい。足もとでは新型コロナウイルスの感染も収束した形で、経済活動の再開が急速に進むなか、内需回復に対する期待が大きい。更に、今週末19日に決定する岸田政権が打ち出す経済対策もマーケットにプラスに働く。子育て世帯への現金給付についてはさまざまな意見があるが、これはあくまで社会保障的な政策であり、このほか半導体 工場への補助金やデジタル技術活用に関する交付金など、成長に向けた経済効果が見込まれる政策も当然ながら期待される。いずれにせよ、来年の参院選を控え、しっかりとした景気刺激策を打つことは、今の岸田政権にとって必須の課題であり、株式市場にとって追い風は強まることが予想される。
一方、米国ではバイデン政権が掲げる2兆ドル近い規模の経済対策は年内成立の公算が大きい。米株市場にとっても買い手掛かりに事欠かない環境が見込まれる。ただ、目先インフレ警戒感は拭えず、消費の動向に注視が必要だ。差し当たってはあす発表される10月の米小売売上高の結果に注目が集まりそうだ。とはいえ、基本的に米株市場も年末に向け強調展開が継続しそうであり、これが結果的に日本株の見直し買いにもつながるとみている。
物色対象としては、世界的に需給逼迫が顕著で、産業競争力を高めるため政府による資金面でのサポートも見込まれる半導体セクターを引き続きマークしたい。このほか、内需ではGo Toトラベルの復活などを念頭に置き、外食やホテル関連株なども見直されそうだ。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
株探ニュース