窪田朋一郎氏【急転直下の世界同時株安、リスクオフ相場の行方】(1) <相場観特集>
―新型コロナ変異株で波乱、大荒れ模様の年末相場を読む―
週明け29日の東京株式市場では日経平均が大幅続落となった。前週末に南アフリカで新型コロナウイルスの変異株が新たに確認され、これにより世界の株式市場でもリスクオフの売りが一気に加速する展開となった。ただ、日経平均は欧米に先立って前週末に750円近い下げをみせていたこともあり、売り一巡後は下げ渋り一時プラス圏に浮上する場面もあった。にわかに不透明感が募る12月相場だが、今後の見通しについて第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。
●「目先リバウンドも、オミクロン株の影響を注視」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
東京市場は世界同時株安のなか売り圧力が表面化し、日経平均は下値リスクが意識されている。新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株の出現が世界的なリスクオフの流れを引き起こしているが、年内の相場は警戒感の強い地合いが続き、とりわけ目先的には上にも下にも日経平均のボラティリティが高まりそうだ。
未知の新型コロナ変異株が発見されたことで経済活動への影響は免れないが、昨年とは違い、今は世界的にインフレへの懸念が強まっている。したがって、これまでに各国政府や中央銀行が行ってきた、積極的な財政出動や金融緩和をこれ以上打ち出せない環境にあることが、株式市場にとっては大きな不安材料だ。しかし、オミクロン株はこれまでの変異株と比べて感染力は強いが重症化しない傾向が指摘されている。また、米モデルナ<MRNA>や独ビオンテック<BNTX>が今後2週間以内に分析を行い、必要であれば3ヵ月以内にオミクロン株にターゲットを合わせたワクチンの開発が可能であるとも伝わっている。したがって、全体相場が大崩れすることはないとみている。
ただし、きょうは売り一巡後にいったん買い戻される展開となったが、これで底入れ確認とはならなかった。オミクロン株の感染力と毒性については依然として未知数の部分があり、状況次第では再びマーケットの不安心理が煽られるケースも想定される。中国や東南アジアなどメッセンジャーRNAではないワクチンを使用している国は相対的に注意が必要で、再びサプライチェーンへの影響が警戒される可能性がある。
年内の日経平均株価の値動きは、深押ししても下値が2万7000円程度。対して上値は3万円大台に届かない公算が大きくなった。個別株では塩野義製薬 <4507> をはじめとする医薬品株が注目される。一方で、内需系の小売や電鉄、レジャーなどリオープン(経済再開)関連は向かい風が意識されやすい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース