明日の株式相場に向けて=「自社株買い規制」というサプライズな逆風

市況
2021年12月14日 17時00分

きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比207円安の2万8432円と反落。後場に入って一段安となり、週明けの上昇分を全部吐き出す格好となった。この下げについて市場では「岸田首相がまたやらかした」(中堅証券ストラテジスト)という声が出ていた。きょうの衆院予算委員会で、「自社株買いの禁止や見直しに踏み込むべきではないか」という、株式市場の側から見ればとんでもない質問に対して、岸田首相は「画一的な規制には慎重だが、ガイドラインなどを設けて対応を考えてみたい」という主旨の回答を行った。賃金引き上げ論争が高まるなか、行き過ぎた株主資本主義を改め従業員への“分配”に充てるという、そのベクトルの向きは理解できるが、だからといって、ここで自社株買いを抑制する動きを示唆したのは、「株式市場の重要性を全く認識していない」(同)という指摘である。国策に売りなしというが、岸田首相から発せられる言葉は先の金融所得課税の見直しもそうだが、むしろマーケットへの国策的な売り圧力となっている。

米国であす15日、日本時間で16日未明に判明するFOMCの結果とパウエルFRB議長の記者会見については、テーパリング前倒しに関しては事前に織り込みが進んでいる。しかし、「マーケットが警戒しているのは来年の利上げの回数」(ネット証券アナリスト)であるという。ドットチャートで来年は3回の利上げ(6、9、12月)が示唆される可能性があり、そうなると株式市場の波乱要因となり得る。「バイデン米政権はFRBに対し、テーパリングは早めに終了してほしいが、利上げは急いでほしくないというのが本音である」(同)とする。来年11月の中間選挙を視野にインフレは困るが、その一方で利上げによって実体経済をオーバーキルしてしまうことに対する懸念も強い。

このような相場環境にあってなかなかリズムに乗れない東京市場だが、21年相場のフィナーレを目前にして、いよいよ乱れ打ちの花火のごとき空前のIPOラッシュに突入する。ひと足早く10日に上場したフレクト<4414>はクラウドサービスによるDX支援ビジネスを手掛け、下馬評通りの人気で2550円の公開価格の倍以上となる5810円で初値を形成後、セカンダリーでも活躍。きょうの高値9310円まで3日連続ストップ高の大立ち回りを演じたが、その後はさすがに行き過ぎとの判断から利食い急ぎの動きが顕在化し、今度は一時ストップ安まで売り込まれるなど高値波乱を余儀なくされた。

しかし、全体相場は大型・中小型株を問わず株式需給面で荷もたれ感が強く、好業績株に対する感度も鈍くなっている。短期スタンスの投資マネーは、残された入り江として、必然的に戻り売りの因縁玉から解放された直近IPO銘柄に流れ込む構図となりやすい。

あす15日には鳴り物入りの大型IPOネットプロテクションズホールディングス<7383>が新規上場する。大型ゆえに値動きは重いはずだが、スタートが静かであれば逆にセカンダリーでの参戦妙味が増すとの見方も出ている。この後にも22日のFinatextホールディングス<4419>は公開価格が1290円で値ごろ感があるだけに投資マネーの視線が向きやすい。また、同日上場のTHECOO<4255>は小型で値幅効果が見込まれる。このほか、23日のエクサウィザーズ<4259>とZEALS<9255>などに市場関係者の注目度が高い。更に29日の大トリを務めるInstitution for a Global<4265>、通称IGSはAIを活用した人材評価プラットフォームを手掛けており、「HRテックの新星として株高期待が大きい」(中堅証券アナリスト)という。

ただし、足もとで個人投資家の投資マインドはかなり冷え込んでいるのが実情だ。マザーズ指数は11月下旬以降の崩れ足がひどく、きょうはついに1000の大台を割り込んだ。個人投資家の換金売りで下げているつもりが、いつの間にか追い証回避の投げ売りに変わってしまうリスクも今の相場は孕(はら)んでいる。

あすのスケジュールでは、10月の第3次産業活動指数、森田日証協会長の会見など。このほか1年物国庫短期証券の入札も予定される。東証1部にネットプロテクションズホールディングス<7383>が新規上場する。海外では、11月の中国工業生産高、中国小売売上高、中国固定資産投資のほか、12月のNY連銀製造業景況指数、12月のNAHB住宅市場指数、11月の米小売売上高、10月の米企業在庫など。また、FOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見が注目される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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