プラチナは2カ月半ぶり安値、欧州の制限措置や米テーパリング加速を警戒 <コモディティ特集>

特集
2021年12月15日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は11月、インフレ懸念を背景に金主導で堅調となり、7月16日以来の高値1103ドルをつけたが、欧州諸国が新型コロナウイルスの感染急増を受けて制限措置を再導入したことをきっかけに戻りを売られ、12月に入ると、2ヵ月半ぶりの安値907ドルをつけた。

11月13日にオランダが部分的なロックダウン(都市封鎖)を再導入したのち、オーストリアやスロバキアが全国的なロックダウンを発表した。また、南アフリカで新たな変異株「オミクロン」が発見されたことも下げ要因になった。オミクロン株は毒性が低下したとみられているが、感染力が強く、英国が新たな制限措置を発表した。

致死率が低いとみられることでオミクロン株に対する懸念は後退したが、英国が渡航制限に加え、在宅勤務や公共の場でのマスク着用、ワクチンパスの使用を求めたことで景気の先行き懸念が出ている。ジョンソン英首相はオミクロン株の陽性者は3日ごとに倍増していると述べており、感染拡大の行方を確認したい。

一方、バイデン米大統領がパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の続投を発表し、金融政策の先行き不透明感が払しょくされ、ドル高に振れたこともプラチナの圧迫要因になった。ハト派のブレイナード理事は副議長に指名された。また、同議長が議会証言で「インフレ高進が予想され、米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和の縮小(テーパリング)加速を検討すべき」と述べたことも下げ要因になった。

11月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比6.8%上昇し、1982年6月以来の大幅な伸びを記録しており、15日の米FOMCでテーパリング加速が決定され早期利上げ観測につながると、プラチナはドル高を受けて軟調に推移することになりそうだ。

ただ、米ファイザーは新型コロナのワクチンについて、3回目の接種でオミクロン株に対しても高い効果があることが確認されたと発表している。オミクロン株の感染拡大が一服し制限措置が解除されれば、景気の先行きに対する楽観的な見方が戻り、安値拾いの買いが入るとみられる。

●プラチナは米経済の堅調が下支え

米経済指標はおおむね堅調であり、プラチナの下支え要因である。10月の米小売売上高は前月比1.7%増と事前予想の1.4%増を上回り、3ヵ月連続で増加した。米鉱工業生産も同1.6%上昇し、前月の1.3%低下から回復した。ハリケーン「アイダ」の影響が薄れた。米地区連銀経済報告(ベージュブック)で、インフレ高進と労働力不足となったが、米経済は10月から11月前半にかけて「控えめから緩やかなペースで」成長したとの見方を示した。

一方、11月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が21万人増となり、事前予想の55万人増を大幅に下回って昨年12月以来の低水準となった。ただ、失業率は4.2%と前月の4.6%から改善し、2020年2月以来の低水準となった。オミクロン株の感染拡大に対する懸念が残るが、米国では11月にインフラ投資法案が成立しており、中長期的には巨額の財政支出が経済を支えるとみられる。

●プラチナはコロナ変異株と投資資金の動向を確認

プラチナETF(上場投信)残高は12月13日の米国で38.22トン(10月末38.11トン)、英国で18.20トン(同20.72トン)、南アで13.04トン(同13.35トン)となった。合計で2.72トン減少した。南アで戻り場面で利食い売りが出る一方、米国で安値拾いの買いが入った。英国では制限措置の強化を受けて投資資金が流出した。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、12月7日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは6062枚(前週8948枚)となった。11月16日の2万1013枚をピークとなり、買い越しを縮小した。手じまい売り・新規売りが出た。オミクロン株の感染拡大が続けば、安値拾いの買いは見送られるとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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