リチウムイオン電池関連のテーマ買い加速へ、「とっておき銘柄」大選抜 <株探トップ特集>

特集
2021年12月16日 19時30分

―製造装置をはじめ、性能試験やリサイクル分野など有望企業が目白押し―

リチウムイオン電池関連への高い関心が継続している。世界的な脱炭素の流れを背景に電気自動車(EV)市場の拡大が一段と加速するなか、その基幹部品の一つとして中長期的な需要増加が期待されているためだ。特に、正極材や負極材、セパレーターなど関連部材やその素材を手掛ける銘柄群への人気が高いが、多くの製造工程を必要とするリチウムイオン電池の産業のすそ野は広い。EV普及を追い風に商機拡大が見込まれる電池関連周辺株にスポットライトを当てた。

●EV話題で感応度高いリチウムイオン電池関連

ここ大手自動車メーカーによるEV投資計画が相次ぎ明らかとなっている。トヨタ自動車 <7203> は14日にEV戦略説明会を開催、車載電池などEV分野に対する4兆円規模の巨額投資を打ち出した。2030年までの数値目標として、EVの世界新車販売をこれまでの200万台(燃料電池車を含む)から350万台に引き上げ、製品ラインアップも30車種を投入する計画だ。日産自動車 <7201> も30年度までに電動車の世界新車販売に占める割合を5割以上とする目標を掲げ、今後5年間で2兆円の投資を行うほか、ホンダ <7267> も40年の全新車電動化に向けて今後6年間で5兆円を投じる見通しにある。また、世界の大手メーカーも電動化投資を打ち出しており、米ゼネラル・モーターズ<GM>やフォード・モーター<F>、独フォルクスワーゲンなどが注目されている。

このなか株式市場では直近、トヨタの大型投資発表を受けてEV関連、なかでもリチウムイオン電池関連株に物色の矛先が向かった。特に、関連部材・部品メーカーの田中化学研究所 <4080> [JQ]や戸田工業 <4100> 、日本電解 <5759> [東証M]、ニッポン高度紙工業 <3891> [JQ]の感応度が高く、マーケットでEVが話題にのぼった際に動意づく銘柄として投資家の視線は熱い。これら銘柄群に牽引される形でリチウムイオン電池に対する高水準の人気が続いているが、こうした人気テーマへの旺盛な物色は次第にその周辺銘柄へと波及していくのが定石だ。リチウムイオン電池は半導体と同じくさまざまな製造工程を経て作られることから、部材・部品をはじめ製造装置、関連機器と幅広く、そこに関わる企業も数多く存在する。

●セパレーターフィルム装置の日製鋼、芝浦機など

日本製鋼所 <5631> は大型鋳鍛鋼や樹脂成形機で世界有数の技術力を誇り、プラスチック射出成形機にも強みを持つ。リチウムイオン電池の主要部材であるセパレーター用のフィルムシート装置を手掛けており、同装置で世界高シェアを握る点は要注目。車載用電池やセパレーターフィルムメーカー向けでの需要が増加しており、会社側は直近で同装置の受注予測を大幅に引き上げている。足もと4-9月期業績は営業5割増益と好調、通期も大幅増収増益見通しで年45円の配当(前期35円)を見込む。

セパレーターフィルム製造装置では、芝浦機械 <6104> も見逃せない。EV関連の旺盛な設備投資需要を追い風に、中国向けを中心に同装置の販売を伸ばしている。直近7-9月期に大口受注を獲得するなど引き合いも豊富で、現行の生産能力を2倍に引き上げ対応を図る方針だ。4-9月期営業利益は23億7700万円で着地し、前年同期の赤字から黒字に転換した。通期の同利益予想は前期比11倍の43億円とV字回復を果たす見通しにある。

ノリタケカンパニーリミテド <5331> は高級陶磁器、砥石の最大手で、鉄鋼業界向け研削砥石や高速移動体通信・パソコン向け電子部品材料を手掛ける。リチウムイオン電池向けでは加熱装置の乾燥炉・焼成炉の展開を図っている。紙・フィルム化工機メーカーのテクノスマート <6246> [東証2]は、車載用リチウムイオン電池の電極・セパレーター用の塗工乾燥装置に注力している。定量ポンプ大手のタクミナ <6322> [東証2]は、リチウムイオン電池の原料や電極の生産工程で使用される「スムーズフローポンプ」の受注が伸びており、足もと業績は好調だ。

このほか、CKD <6407> はリチウムイオン電池用巻回機、澁谷工業 <6340> はリチウムイオン電池の原料をスラリー化する製造システムを手掛ける。また、リチウムイオンバッテリー向け各種装置を取り扱う第一実業 <8059> 、電池材料向け加工装置を提供するホソカワミクロン <6277> に加え、芝浦メカトロニクス <6590> 、日阪製作所 <6247> 、極東産機 <6233> [JQ]などにも目を配っておきたい。

●性能試験や検査装置、リサイクル分野もマーク

リチウムイオン電池の性能試験や検査装置を手掛ける銘柄群も要マークとなる。この分野では、リチウムイオン電池の品質検査機器を製造するHIOKI <6866> がまず挙げられる。また、自動車業界向けを中心に振動試験装置や計測器の販売を行うIMV <7760> [JQ]は受託試験サービスにも展開しており、車載用リチウムイオン電池の充放電の性能試験などで実績が高い。環境試験機器・装置で世界最大手のエスペック <6859> は2次電池の充放電試験・安全性試験とその関連製品を提供、カーリットホールディングス <4275> もリチウムイオン電池向け安全性試験を手掛けている。タカノ <7885> はセパレーターや電極板などの欠陥検査装置を取り扱っている。

車載用電池の生産が活発化するなか、今後のリサイクル需要増加への期待も高まりそうだ。関連銘柄ではアサカ理研 <5724> [JQ]、エンビプロ・ホールディングス <5698> など。リチウムイオン電池の製造に使われるNMP(N-メチル2-ピロリドン)の回収装置で国内トップクラスの実績を誇る大氣社 <1979> にも注目。このほか事業内容に特徴がある銘柄として、2次電池製造関連設備のプラント設計・建設を手掛ける月島機械 <6332> が面白い存在といえる。

●次世代電池開発に向けた動きも加速

リチウムイオン電池を巡る研究開発にも目を向けてみたい。大阪ソーダ <4046> は2日、山形大学などと共同で特殊ポリエーテルを用いた次世代リチウムイオン電池「半固体電池」を開発したと発表。カワタ <6292> は10月にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の採択事業として取り組んできた全固体リチウムイオン電池の量産化技術開発について、技術面や事業面で一定の評価を得たことを明らかにしている。また、リチウムイオン電池用の消火フィルムを開発した凸版印刷 <7911> も押さえておきたい。

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