2022年米中間選挙、バイデン政権への評価が原油の長期見通しを左右へ <コモディティ特集>

特集
2021年12月22日 13時30分

新型コロナウイルスのオミクロン株の流行が拡大している。デルタ株よりも感染力が非常に強く、オランダ政府はロックダウンを開始した。英国における感染の広がりも急速で、クリスマスを控えて市民は都市封鎖を警戒している。

米国、フランス、スペイン、イタリア、カナダなどでもオミクロン株が広がっており、今年もクリスマスを心置きなく楽しむような状況ではない。来年も新型コロナウイルスと付き合いつつ、相場を眺めなければならない。2021年初は新型コロナウイルスのワクチン接種によって経済活動が正常化すると期待されていたものの、世界的な流行に変化はない。

●感染対策を評価される政権

来年4月に大統領選を控えるフランスではオミクロン株の陽性者数が急拡大している。マクロン仏大統領は「医療機関のキャパシティが逼迫しないならば、都市封鎖など厳格な感染対策は必要ない」との認識を示している。現状で入院者数の伸びが限定的であることからすれば、過去最高水準に接近している感染拡大を容認するだろう。フランスのワクチン完全接種率は約80%で、ブースター接種も積極的に行われてはいる。ただ、再選を目指すマクロン大統領にとって、弱毒性とされるオミクロン株がデルタ株に置き換わることを放置することが最善の選択肢なのか。フランスではコロナによる死者数がやや上向いており、この冬を無難に乗り切れなければ厳しい選挙戦となりそうだ。

来年11月の中間選挙ではバイデン米大統領も感染対策を評価される。共和党と民主党の議席数の差はごく僅かであり、バイデン政権がレームダック化するか否か見定めることになる。リアル・クリア・ポリティクスの集計によると、夏場からバイデン米大統領の不支持が支持を上回って推移しており、市民は明らかに失望している。

●米政権の行き詰まりが石油相場を変える可能性も

米経済は人手不足やサプライチェーンの混乱によるインフレ高進に悩まされているものの、賃金上昇率が加速していることから物価上昇の痛みは限定的で、全般的には好調だ。2021年は経済活動の正常化の喜びを噛み締めた1年だったのではないか。製造業に続いて非製造業の企業マインドも急上昇し、11月の米ISM非製造業景気指数は過去最高を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)は従来の超緩和的な金融政策を転換し、来年は引き締めを本格化する。早期の利上げが可能となるほど、米経済は強さを取り戻している。

好調な経済と照らし合わせると、バイデン米大統領が失望されている理由は不明確だが、コロナ対策が奏功していないことは明らかである。クリーンエネルギー政策を掲げてきたバイデン政権は石油産業を軽視しており、今年の原油高の原因となったと言っても過言ではなく、この政権の行き詰まりが原油相場の長期的な見通しを変えるきっかけとなる可能性がある。世界経済が脱炭素社会に向かっているなかで、石油産業への投資が息を吹き返し、将来的な原油の供給不足が解消されることはないだろうが、石油の需給バランスを軽く左右するだけの余力は世界最大の産油国である米国にはある。来年が慌ただしい一年となることを期待する。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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