山岡和雅が読む2022年為替相場 <新春特別企画>

特集
2022年1月1日 15時00分

「大きなチャンスも、リスクもある大相場に期待」

●金融引き締めに動き始めた各国、マネーの流れには大きな変化

新型コロナに振り回された2021年。日本はようやく落ち着きを取り戻してきましたが、世界的には新たな変異株であるオミクロン型による感染が拡大しており、収束はまだまだ遠いようです。もっとも、オミクロン型の症状はこれまでの変異株よりも軽い可能性があるとの報道もあり、多くの国では感染拡大に伴う行動制限などの厳しい措置には慎重です。オミクロン型など変異株がもたらす影響は現段階では不透明感が残りますが、2022年は経済活動がコロナ前に戻る動きが今年以上に強まりそうです。

こうした中、2022年の外国為替市場ではどのような要因が相場を動かすポイントとなっていくのでしょうか。

まずは、2022年も新型コロナの感染状況とそれに伴う行動制限などの動向にはこれまでと変わらず注意が必要です。症状が軽い可能性が高いとされるオミクロン型ですが、感染力は相当に強いとされており、欧州の多くの国や米国では1日当たりの感染者数が過去最高を記録する例が見られます。欧州ではオランダがロックダウンを再開したほか、欧州各国でクリスマスマーケットが中止されるなど、多くの人が集まる状況を避けようとする動きが広がりました。2022年にこうした流れがどうなるのか。本当にオミクロン型は重症化しないのかなども含め、まだまだ不透明感が強いだけに、注目ポイントから外すことはできないようです。

今後の行動制限強化に対する不透明感だけでなく、これまでコロナ禍が社会情勢に与えた変化や、コロナ対応の財政・金融政策によってもたらされた後遺症などの影響も強まってきています。2020年春のパンデミック以降に、世界各国で進んだ緩和政策の影響が特に大きなものとなっています。歴史的な政策金利の引き下げが世界各国で行われ、さらには量的緩和などの非伝統的金融政策が多くの国で取られた結果、引き起こされたのが世界的な物価高です。さらに、需給バランスの歪みも物価の上昇につながっています。

ワクチン接種の進展などで一時に比べてコロナ感染による重傷者や死者の数が抑えられていることで、行動制限などが緩和されています。経済の正常化に向けて需要が拡大する中、新型コロナによって傷んだ供給サイドがその需要拡大に応えられず、供給不足による物価高も生じています。

著しい物価の上昇は、新型コロナによって傷んだ人々の生活にとって大きな痛手となります。そのため、日本や中国などごく一部の国を除いた世界中の多くの国々で、量的緩和の縮小や利上げといった金融の引き締めに動く流れが強まっています。

こうした金融政策の変化は、世界のお金の流れを大きく変化させます。日本のように利上げなどはるか先という国から、昨年すでに複数回の利上げを行ったニュージーランドまで、各国が置かれた状況が大きく異なる中、相場にも相当大きな影響が表れてくると予想されます。

●世界の資金移動は激しさを増すか

2つめのポイントは、こうした各国の金融政策動向です。なお、その中でも最も注目されているのが米国の動向です。米国では直近11月分のPCEデフレータが前年比5.7%、同コアデフレータが4.7%と、ともに1980年代以来の高水準を記録しました。インフレターゲットである2%をはるかに超える状況に対して、金融引き締めの動きが強まっています。11月からスタートした量的緩和の段階的縮小(テーパリング)について、2021年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)で縮小ペースの加速が決定され、2022年3月には量的緩和が終了することとなりました。前回の量的緩和政策の例を見ると、量的緩和の終了から利上げのスタートまで1年以上を要しており、「緩和終了=利上げスタート」ではありませんが、物価の上昇が著しい現状において、利上げはかなり早く始まるという見方が広がっています。

現時点での予想では2022年6月から利上げがスタート、年内に2回から3回の利上げを実施するとの見通しが大勢です。ただし、物価高がもう一段加速し、一方で利上げのハードルとなり得る雇用情勢が堅調さを維持するようだと、利上げの前倒しや追加利上げの積極化なども予想されるところであり、状況の変化に市場も目を光らせています。2022年前半の米国の物価動向と雇用状況は、相場を動かす最も大きな材料として意識されているのです。

そのほか、北京オリンピックの外交的ボイコットなどもあり緊迫感を増す米中問題や、国境でのロシア軍の配備が進み緊張感が増すウクライナ情勢なども、年前半の注目ポイントとして押さえておきたいところです。

年後半最大のポイントとなりそうなのが、11月8日に行われる米国の中間選挙です。昨年誕生したバイデン政権は、新型コロナ対応への国民の不満などもあり、支持率を大きく落としています。米ABCニュースが運営する世論調査サイト「FiveThirtyEight」によると40%台前半と、就任1年弱時点での支持率としては戦後2番目の低さです(ちなみに一番低いのはトランプ前大統領ですが、前大統領はここから少し支持率が持ち直しています)。

このままでは民主党はかなり厳しい選挙戦を強いられそうです。現在は上院・下院ともに民主党が多数派(上院は同数も、同数決戦の場合は副大統領が決定権を持つため、事実上民主党が多数派)となっていますが、直近の世論調査では下院は共和党が多数派を奪い返す見込みです。また、上院はほぼ互角で、世論調査が拮抗する8州のうちどちらが5州を抑えられるかが焦点となっています。大統領と議会多数派の党が違うという「ねじれ」が生じると、コロナ後という神経質な情勢においてかなり厳しい状況になります。このままでは中間選挙はドル売りの材料となる可能性があります。ただ、まだまだ選挙までは期間があり、情勢が大きく変わる可能性もあります。年半ばぐらいから中間選挙の世論調査などの報道が増えてくると思われますので、材料として意識しておきたいところです。

少しずつ元に戻りつつある世界経済ですが、その回復具合には国によってかなり差が出ており、各国の対応も異なることから、世界の資金移動は例年以上に激しいものとなることが期待されます。その他の注目材料もあり、大きなチャンスも、リスクもある大相場が期待される年となりそうです。

2022年12月28日 記

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