明日の株式相場に向けて=トヨタ効果で業績変貌バリュー株に出番
きょう(11日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比256円安の2万8222円と3日続落。成人の日の祝日を挟み3連休明けとなった東京市場だが、冴えない動きとなった。前日の欧州株がほぼ全面安となり、米国株市場でもNYダウが一時500ドル超の下落をみせるなど引き続き波乱含みの展開となったことを受け、リスク回避ムードの強い地合いを余儀なくされた。
例によって米国の金利動向に気を揉む展開だが、12月の米雇用統計はFRBが主張してきた完全雇用の条件をクリアする内容となり、超低金利環境からの脱却が早まりそうな状況となった。とはいえ、ここ上昇が急ピッチとはいっても依然として米10年債利回りは1.8%近辺にある。これまでは10年債利回りがあまりに低い位置にあることが不思議がられていたわけで、今年3月のテーパリング終了と同時に利上げ開始がメインシナリオとして浮上するなか、ここで上昇しなければむしろ異常である。長期金利が上がらない背景には、FRBの金融政策により経済回復が頓挫し、景気が悪化することを読み込んだものという説すらまことしやかに流れていた。したがって、もし経済に見合った金融正常化の動きを映したものであるとするならば、長期金利の上昇は歓迎こそすれ、懸念視することは全くないという理屈となる。
今週は米中の重要経済指標の発表が相次ぐ。12月の米CPIと米PPI、そして小売売上高はいずれも経済回復を確認するものではなく、物価上昇の過熱度合いを知ることが主眼だ。それに先立って、日本時間きょうの深夜(午前零時)に行われるパウエルFRB議長の上院での証言は、タカ派色は強くても地ならし的な発言にとどまることが予想される。
一方、感染拡大が加速している新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株だが、相場にとってあまりネガティブ材料視されていない。この変異ウイルスを“風邪の一種”とみなすのは世論的に問題があるが、感染力は強くても経済活動がそれほど阻害されないという見方が暗黙のコンセンサスとして醸成されつつある。ただし、株式市場にとってこれが本当にプラスなのかどうかは今の段階では何とも言えない。「ウィズ・オミクロン」の経済環境が肯定されるということは、裏返せば経済に対する財政・金融面からのカンフル剤注入は見送られ、コロナマネー相場の復元はほぼ期待できないという状況を意味する。かつてない過剰流動性相場の終焉が、業績相場にバトンが渡せるステージより一段高い場所にいるとしたら、その分だけ株価は真空地帯を駆け下りるような局面を想定しておく必要もある。もちろん、これは相場の崩壊を意味するものではない。バリュー株シフトの動きが潮流として発生するならば、日米ともに全体指数は上がりにくくなるが、銘柄選別のやり方次第でパフォーマンスを挙げることは十分に可能だ。
個別銘柄に目を向けると、ガチっとした公式に嵌め込まれたように、値がさハイテク株を売り、景気敏感株(バリュー株)を拾う動きが鮮明だ。ただ、バリュー株はシクリカルで成長性に乏しい銘柄が多く、大型、中小型を問わずパンチ力がない。インカムゲインも大事だが、やはり投資家は利益成長シナリオを武器として持っている銘柄に魅力を感じるのが常である。その流れで行くと、今は自動車部品や部材を手掛けるメーカーが注目されやすい。“トヨタ効果”とも言われるが、世界の自動車産業が電気自動車(EV)に向けたレールを走るよりなくなった状況にあって、自動車周辺株にはこれまでとは違った景色が前方に見えてきた。これは、淘汰されるかもしれないが飛躍するチャンスかもしれない。
株価指標面(PER・PBR・配当利回り)で割安な銘柄で足もとの業績変化が大きい自動車周辺株は当面注目されやすい。トヨタ系自部品株では大豊工業<6470>や愛三工業<7283>を引き続きマーク。このほか、EVの普及と並行して自動車関連需要を取り込むことができる銘柄として、大同メタル工業<7245>、リケンテクノス<4220>、バンドー化学<5195>、藤倉コンポジット<5121>などに目を配っておきたい。
あすのスケジュールでは、12月の貸出・預金動向、11月の国際収支が朝方取引開始前に開示される。このほか、12月の景気ウォッチャー指数、1月の日銀地域経済報告(さくらリポート)など。海外では12月の中国消費者物価指数(CPI)・卸売物価指数(PPI)、12月の米CPI、12月の米財政収支などが注目される。(銀)