明日の株式相場に向けて=リーマン・ショックの系譜
きょう(25日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比457円安の2万7131円と急反落。後場に入ると売り圧力が増し、一時フシ目の2万7000円ラインを下回った。昨年も6月中旬から8月下旬にかけて日経平均は上下に荒い展開を繰り返しながら下値を切り下げ、8月20日ザラ場に瞬間2万7000円を割り込む場面があった。当時はまさにその場面が大底となり、そこから9月中旬にかけ日経平均は急速な上昇トレンドに転換したのだが、今回はその時より事態は厳しいといえそうだ。直近、当欄では半導体関連などに買い戻しの動きが顕在化する可能性に言及したが、やや時期尚早だったようだ。
ただし、前日の米国株市場ではNYダウが一時1100ドルを上回る急落となったが、後半は奇跡的なリカバリーでプラス圏に浮上して取引を終えた。この動きは明らかに空売りのショートカバーによるものだ。売り方もFOMCというビッグイベントを前に内心では疑心暗鬼となっている気配が感じられる。苛烈な下落トレンドに見舞われているが、枯れ野に火を放つような戻り足に転じる可能性も今の相場は内包している。
とはいえ決め打ちはリスクも大きい。マザーズ市場の信用評価損益率はマイナス30%を超え、元来であればとっくに投げ売りモードのスイッチが入っている場面だが、実際はそうではない。ネット証券大手の店内データによれば、マザーズはきょう前場段階で個人投資家はなお買い越しであったという。「何としてもリバウンドを取りに行く」という強い意志のもと、信用取引を活用してキャパシティーを超える買いを入れている個人も少なくないようだが、凧の糸を出し切ってはいけない。個人の渾身の買いが海外ファンド筋の売りの受け皿となっているとすれば非常に危険である。FOMC通過後、もしくは結果発表前後に一度はリバウンド局面が訪れる可能性は小さくないが、あくまで短期スタンスに徹し、そこは買いコストにこだわらず売り逃げておくのが正解となろう。
昨年末の段階で今年の相場に対して強気な見方を示す市場関係者は多かった。金利の上昇は経済が強い証であるとし、実際に過去の金利上昇局面でも米国株は中長期上昇トレンドを継続していたではないかと主張、日経平均の上値を4万円と見積もる声もあった。しかしマーケットは明らかに、パウエルFRB議長の変節を気にしていた。昨年末の当欄最終稿で「蟻の一穴侮ることなかれ」として警鐘を鳴らしたが、正直それほど急な波乱を見込んでいたわけではない。しかし、年明けからは絵に描いたような崩れ足となった。
原油価格や海運市況の高騰など環境面では2008年のリーマン・ショック前と類似する部分が少なからずある。当時のサブプライム問題に相当する事象は見当たらないように見えるが、中国の不動産バブル崩壊で恒大集団のデフォルト懸念が氷山の一角であったとしたら、山積するドル建て債権を前に深刻な事態となる。日経平均オプション取引で2万4000円のプット売買高が2000枚を大きく上回る水準に膨張している現実は、相応の負のシナリオが内在していることを物語る。
足もとでは、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を警戒する動きが強い。前日のロシア株式市場の暴落は米国の金融政策とは無関係で、通常こうした地政学リスクは、株式市場のトレンドを変える材料にはならないが、今は複雑にネガティブ材料が絡みついている。「バイデン政権が派兵して動かず、ということであれば、中国に足もとをみられる。台湾有事にも派生するだけにコトを難しくしている」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。
バイデン米政権にとっては、中間選挙を前にインフレの沈静化が最大課題である。それはパウエルFRB議長のタカ派への豹変と無関係ではないと思われるが、もしFRBが資産価格の上昇を敵視した場合、それは単に金融政策の正常化という綺麗な言葉では包み込めなくなる可能性もある。東京市場は2月SQ週が当面のクライマックスと考えておきたい。
あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の主な意見(1月17~18日開催分)、12月の企業向けサービス価格指数、11月の景気動向指数改定値など。海外では12月の米新築住宅販売件数のほか、FOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見が行われる。なお、豪州、インド市場は休場となる。国内主要企業の決算では日本電産<6594>、ファナック<6954>などが予定される。また、海外企業の決算ではインテル<INTC>、テスラ<TSLA>、AT&T<T>、ボーイング<BA>、ザイリンクス<XLNX>などがある。(銀)