ウクライナ危機緊迫、緊張のピークか泥沼化か 市場のシナリオを探る <株探トップ特集>

特集
2022年2月22日 19時30分

―ロシアはウクライナ東部の親ロ派地域独立を承認、緩衝地帯形成の可能性も―

ウクライナ情勢を巡る緊迫が一段と強まってきた。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部の一部地域の独立を承認したと発表。ウクライナ情勢の一段の緊迫化が懸念されるなか、22日の東京市場では日経平均株価が大幅に4日続落した。リスクオフ姿勢が強まるなか、市場関係者は今後の展開をどうみているのか。

●日経平均株価は昨年来安値に接近する急落に

22日の日経平均株価は前日比461円安の2万6449円と大幅に4日続落。一時600円強の下落となり、1月27日につけた昨年来安値2万6170円に迫る場面もあった。この下落を引き起こしたのが、ウクライナ情勢の緊迫化だ。

プーチン大統領は21日、親ロシア派勢力が支配するウクライナ東部の一部地域の独立を承認するとともに、平和維持を名目に同地域へのロシア軍の派遣を指示した。この決定に対して、バイデン米大統領は、ロシアが独立を承認した地域との新規投資や貿易に米国人が関与することを禁じる制裁を発表したほか、欧州連合(EU)も制裁を科すと表明するなど、強く反発した。

ウクライナを巡る情勢の一段の緊迫化は、世界の金融市場の混迷に拍車をかけた。21日は米国がプレジデントデーで休場だったが、同日の欧州市場ではドイツのDAX指数やフランスのCAC40がともに2%安。ロシアのRTS指数は13%超の暴落となった。また、この日の時間外取引のNYダウは大幅安で推移し、原油価格は上昇した。

●軍隊派遣でロシアは一線を越えたか

前日の株式市場は、米ロ首脳会談開催に対する期待から、日経平均株価が下げ渋っていただけに、失望感も強い。「ロシアはウクライナのNATO加盟阻止のために、脅しをかけているとみていたが、ロシアが独立を認めた地域に軍隊を派遣するとなると、一線を越えたかもしれない」(アナリスト)との声も出ている。

このロシアの行動は、「武力による国境の変更を試みるものであり、欧米としては決して容認することはできないもの」(市場関係者)ともみられており、今後、対立が一段とエスカレートすることが懸念されている。

証券ジャパンの大谷正之調査情報部長は「ウクライナ情勢の混迷が短期で終わるのか、あるいは長期化するのか分からない。この点を今後確かめていく必要がある」と指摘。日経平均株価が昨年来安値を下回った場合の次の下値メドとして、コロナショック後の上げ幅の3分の1押し(2万5800円前後)がポイントとみている。

●ロシアの狙いはウクライナ東部地域の“北朝鮮化”か

そんななか、市場にはロシアの軍隊派遣がウクライナ東部の独立を認めた地域にとどまるのか、あるいは一段と拡大する動きがあるのか、を注視する見方が出ている。

ロシアが独立を認めたのは親ロ派が勢力を持つ地域であり「ロシアとしては、この地域を欧米に対する緩衝地帯としたいのではないか」とフィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は指摘する。中国と韓国の間に、北朝鮮が存在するように、ウクライナ東部の独立承認地域を北朝鮮化したい動きともみられる、という。

ただ、厳しい姿勢を示すバイデン大統領としても、例えば銀行間の国際決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアを排除するようなことは、ロシアとの取引がある欧米企業にとっても影響は大きく、打ち出したくない措置だとみられている。

ロシアの強硬姿勢が今回の独立を承認した地域にとどまるなら、まだ事態の収拾の余地は残る、ともみられている。それだけに、笹木氏は「ロシアによる軍隊派遣は独立承認地域に限定されるのではないか」と予想する。いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役も「ロシアの動きはこれ以上広がらないと思う」という。ただ、ウクライナ東部にロシア軍がとどまることになれば、それはウクライナ問題の長期化を意味する。

●NYダウはウクライナ情勢が落ち着いても下落の懸念

懸念されているのは、ロシアが東部の親ロ派の実効支配地域を越えて、ウクライナ首都のキエフなど他地域へと手を伸ばすことだ。秋野氏は「ロシアにとって、キエフを制圧するメリットはないのではないか」とも指摘する。笹木氏も同様な見方を示すが、「もしロシアがキエフに向けて軍隊を侵攻させるようなことになれば、その時は、次がどのような展開となるのか読めなくなる」とし、警戒感を示している。その意味で、バイデン政権が今回のロシアの動きに対して、どこまで強硬な姿勢を示すかが、重要なポイントとなる。

そんななか、NYダウの動向はどうなるかだが、「たとえウクライナ危機が落ち着いても、金利上昇懸念でどちらにせよ下値を探る可能性がある」との声もあり、「むしろ低金利が続く日本株が見直されることもありうるのでは」とする見方も市場からは出ている。相場のリスクオフの風が強まるなか、ロシアと米国による一挙手一投足を市場関係者は固唾を呑んで見守っている。

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