明日の株式相場に向けて=SQ週の「魔の水曜日」に見えたもの
きょう(9日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比73円安の2万4717円と4日続落。直近3営業日で1800円近い暴落をみせていただけに、ウクライナ情勢がいかに不透明といえども、目先リバウンドに転じるのはタイミング的に十分考えられるところであった。実際、前場取引時間中は米株価指数先物が堅調な値動きを示していたこともあって、東京市場でも売り一服のムードが台頭していた。
ただし、これまでの例を挙げれば、ショートカバーのスイッチが入った相場は、後場から大引けにかけ尻上がりに株価水準を上昇させるパターンが多い。取引開始前に「日経平均は反発はするけれど上値は重いだろう」という予想がメインシナリオの時、過去の例をみると大抵上値は重くない。AIアルゴリズムによるスライス買いが取引後半にくると本領を発揮し、相場に浮揚力を与える。突発的な材料に振らされない限り、後場に上げ足を強めて高値圏で引けるケースが多い。
しかし、きょうは大引けにかけ“尻すぼみ”の状態となった。後場寄りに日経平均が上げ幅を縮小、その後はいったん買い板が厚くなるも戻し切れず、再び値を消す展開となった。結局マイナス圏で着地する羽目となっている。前引け時点で東証1部は1兆6000億円を超える売買代金をこなしていたので決して模様眺めということはない。水面下で思惑がぶつかり合ってどうにも方向感が見えない、ひと目そんな印象を受ける地合いであった。
種を明かせば今週は金曜日にメジャーSQ算出を控え、「SQ前の魔の水曜日」がきょうであった。「直近で日経225コールオプションの建玉の厚いところは2万5000円。一方、プットオプションは2万4000円の建玉が目立つ。仮に目先波乱があるとすれば、ここを目指す展開かもしれない」(中堅証券ストラテジスト)という見方が示されていた。
もっとも魔の水曜日とはいっても、前日までに東京市場は存分に売りの洗礼を浴びてきたので、新たな悪材料でもなければここで売りが加速することは考えにくい。だが、前場は自律反発ムードで日経平均は300円近い上昇をみせていたにも関わらず、後場伸び悩み、取引終盤にマイナス圏に転じた。今の地合いは底入れには依然として遠い印象だが、「日経平均の軟調ぶりは先物絡みで振らされている部分より、個別株の実需の売りが五月雨的に出ているという感じを受ける」(ネット証券アナリスト)という声もある。きょうの東証1部の新高値銘柄はゼロ、対して新安値銘柄は中小型株を中心に300を超えた。
バイデン米大統領は前日、ロシア産の原油、天然ガスなどの輸入を全面的に禁止すると発表した。エネルギー価格の高騰は、ここまで来たらもう仕方がないというスタンスである。ところが、原油にとどまらない。コモディティ価格がいよいよ一斉高の様相を呈してきた。直近ではニッケル価格の“倍騰”が話題となった。LMEニッケル先物価格は一時前日終値比で2倍以上の暴騰をみせ、1トン当たり10万ドルを超えた。市場関係者によると、「中国系ファンドが、ニッケルのショートでやられ飛んだ(破綻した)という噂がある。一気に買い戻されたことによる異常値で、LMEは取引を停止するよりなかったが、これは色々な意味で尾を引きそうだ」(ネット証券アナリスト)とする。これは特殊な例としても貴金属系のシルバー、プラチナなども足もとで急騰を始めており、このコモディティバブルは、やはりハイパーインフレへのルートにつながっている可能性が否定できない。
基本的に株式はインフレヘッジだが、これから先、強烈なコストプッシュにより企業収益が落ち込むと考えた場合、逆業績相場の入り口で当該企業の株を買う選択肢はない。予想されるバリューエーションで買える株価の位置が見えない以上、中長期投資の観点では今は「待つ」よりないだろう。参戦するのであれば、その日の地合いをにらみながら、投資ではなく短期の「トレード」に徹するところである。
あすのスケジュールでは、2月の国内企業物価指数、1月の特定サービス産業動態統計、2月の都心オフィス空室率のほか、20年物国債の入札も予定される。海外ではECB理事会の結果発表とラガルドECB総裁の記者会見にマーケットの関心が高い。また、2月の米消費者物価指数(CPI)への注目度も高い。このほか2月の米財政収支の発表や、米30年物国債の入札なども予定される。(銀)