東京通信 Research Memo(3):無料スマホゲームによるインターネットメディア事業が安定
■事業概要
2. 事業内容
東京通信<7359>のセグメントはインターネットメディア事業、プラットフォーム事業、インターネット広告事業、及びその他で構成される。その他の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントとなる。
1) インターネットメディア事業
インターネットメディア事業では、主にスマートフォン向けのアプリメディアを企画・開発する。アプリ内の一部スペースを広告枠として、広告を出稿したい広告主へ提供することでユーザーの広告視聴やクリック数等を獲得し、広告収入を得ている。
具体的には、短時間で操作できる「国内向けアプリ」、シンプルな操作で言語の壁がない「ハイパーカジュアルゲーム」を中心に、現在4,000タイトル以上のスマートフォンアプリをリリースし、無料アプリ内の広告収益を主軸としたビジネスモデルとなっている。同社グループが手掛けるアプリは、性別を問わず、幅広い年齢層が気軽に楽しめることを重視し、シンプルなアプリであることが最大の特長である。
アプリを大別すると、「国内向けアプリ」と「ハイパーカジュアルゲームアプリ」の2つに分類でき、「国内向けアプリ」は日本国内を中心に展開し、「ハイパーカジュアルゲームアプリ」は海外への展開を主軸とする。なお、ハイパーカジュアルゲームアプリは、国内向けアプリと比較して、デザインがよりシンプルであることが特徴となっている。ハイパーカジュアルゲーム「Save them all」は全世界で累計2,500万ダウンロードを突破し、App Store 「無料ゲーム」カテゴリの DLランキングにおいて、国内をはじめとする7ヶ国で首位を獲得するヒットとなっている。
同社のゲームは、エンジニア、デザイナー、プロデューサーがワンチームとなり、企画からリリースまでの平均期間は2~3週間、ハイパーカジュアルゲームはテスト版のリリースまで1週間程度というショートスパンである。国内版については、ヒットアプリを社内で整理し、ソースやプログラムをテンプレート化し、次のアプリに生かすという手法をとっている。これにより、安価で短期間のリリースを行い、これまでに4,000タイトル以上のタイトルを開発した実績を持つ。ヒット作のテンプレート化はコスト削減期間短縮だけでなく、完成度の高いインターフェース等はユーザーにとっても操作性が踏襲されるため扱いやすく、ユーザー離れを防ぐことにもつながる。
同社のビジネスモデルは、アプリを利用した場合に表示される広告収入モデルであり、アプリを利用すればその利用時間、すなわち広告を表示した時間だけ利益を得る。アプリは単体で完結し、サーバー等の維持費がほぼかからないため、利用者が多ければ多いほど単純に収益が得られる仕組みとなっている。そのため、戦略としては常に新規ユーザーを獲得し続けるものとなる。ユーザーの属性は、年齢層や性別等に関係がなく、ターゲットを絞らずより多くの人にダウンロードしてもらうことが目的であり、これを実践し続けている。
2) プラットフォーム事業
プラットフォーム事業では、恋愛や、仕事、人生に関する悩みを抱えるユーザーと、経験豊かなアドバイザーをマッチングする電話相談サービス「カリス」を運営する。電話占いは、ビジネスモデルとしてはシンプルなため、参入障壁が低く競争が激しくなりやすい。こうしたなかで、同社では相談内容はもちろんのこと、相談する側(ユーザー側)のシステムの使い勝手、操作性だけでなく、相談を受ける側である占い鑑定師のマネジメントや教育にも注力し、全体的なコンテンツの質を高めることで差別化し、ユーザー獲得を行っている。同社の事業は長く継続され、ノウハウが蓄積され相談を受ける側の質までも担保されている点で、同サービスを行う他社の追随を許さないものと弊社では考える。恋愛相談は電話占いよりも潜在的なユーザー数が多く、総合的にユーザー数増加を目的とする。
また、プラットフォーム事業は、電話を通じた音声マッチングの技術及びアドバイザーのリクルーティングが特長であり、グループの強みであるITマーケティングを掛け合わせることで事業のさらなる成長を見込む。また、電話占い「カリス」のノウハウを転用した恋愛相談サービスやアパレル商品を中心に取り扱うライブコマース事業が計画中となっている。ライブコマース事業は、2022年内でのサービス開始を予定し、スキーム確立のほか、売れ筋の発掘や顧客のデータベース化により、その後の成長が見込まれれば1つの事業部として独立できる規模を目指す。
3) インターネット広告事業
インターネット広告事業は、アフィリエイト広告及びアドテクを活用し、広告主の収益の最大化を図り、取引の不正防止に重点を置くなど、大手クライアントとの信頼関係を構築し、安定した広告提案から運用までを手掛ける。
業界に造詣の深い人材を中心とした組織を構築し、クローズドネットワークの活用により有望なアフィリエイターを抱え、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスをはじめとしたアフィリエイト広告戦略を強みとする。また、グループ独自のワンタグシステムの提供により、国内主要ASPへの一括出稿及び効率的な成果管理を可能にする。さまざまな広告計測に耐え、きめ細やかな広告運用やレポートを実現することで、クライアントからの評価も高い。
4) その他の事業
その他の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントで、投資事業、ソリューションセールス事業、スキルオン事業及び新規事業開発等に取り組む。スキルオン事業は、インフルエンサーがサブスクリプション型課金サービスを展開する際に必要なITソリューションの開発、管理運用をサポートする「skillon(スキルオン)」を展開する。具体的には、サイト構築・決済・会員管理・コンテンツ配信・動画配信・1to1コミュニケーションシステムの開発、管理運用までをワンストップで提供できることが特長となっている。同社はデジタルビジネス・コングロマリットを目指す事業創出会社として、既存の事業にとらわれず新たな事業を生み出し続けることが方針である。2022年12月期は、前期より準備を進めてきた「skillon」に特に注力する。
投資事業では、主に持分法適用会社であるBASE Partners Fund 1号投資事業有限責任組合、basepartners2号投資事業有限責任組合を通じて投資する。投資対象企業は、インターネット企業であり、投資ラウンドはシード、アーリー、またはシリーズA、かつ投資規模をおおむね20百万円から50百万円とする。現状はシードを中心に投資を行うが、時期や状況に応じて、シードを軸足に幅を広げていく。このほか、事業シナジーが見込め、将来的にグループの事業となりうる企業や事業への投資を視野に入れる。ソリューションセールス事業はOA機器等の販売代理を主力事業とし、2021年より開始したスキルオン事業は動画関連サービスの企画運営を主力事業とする。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 大川 勇一郎)
《ST》