明日の株式相場に向けて=日経平均戻り一巡で次は材料株の出番
きょう(22日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比396円高の2万7224円と6連騰。この間に2000円以上も水準を切り上げ、2万7000円の大台ラインも難なくクリアした。ここに至るまでの強烈なリバウンドはまたもや売り方の踏み上げによってもたらされた。好材料不在といわれるなか、相場がここまでの反騰力を内在させていたことは素直に驚くよりない。足もとで1ドル=120円台に突入した急速な円安が追い風という解釈がなされているが、これは諸刃の剣である。商品市況高により企業の輸入コスト増大が警戒されるなか、それを助長する円安はつい最近まで悪材料として数えられていた。勝てば官軍、株価が上昇すれば材料解釈も“いいとこ取り”となるのが常ではある。
もっとも日経225先物主導の感は否めず、きょうも前場の取引終了時点で日経平均は400円を超える上昇をみせていたが、日経平均寄与度の高い銘柄への裁定買いが相場を押し上げる格好で、前引け時点の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数はどちらも1000を少し上回った程度でほぼ同数という状況だった。全体指数が大幅高しているような感触はない。後場は日経平均も若干伸び悩み、結局400円を小幅に下回る水準で着地している。値上がり数は増加したが、それでも全体の52%にとどまった。
テクニカル的に見れば確かに相場は変わったといえる。年初から約3カ月にわたり上値抵抗ラインとして機能し、下落トレンドの番人となっていた25日移動平均線を今回は綺麗に上抜き、足もとでは5日移動平均線とのゴールデンクロスも示現した。これは、今年に入ってからの下げ相場で初めて視界が開けた瞬間ともいえる。外国人投資家は3月第2週に現物で1兆円近い売り越しを記録していた。この怒涛の売り攻勢の反動が今回の戻り相場だ。また、実需買いという部分では「しばらく音無しの構えにあった公的年金の買いや大学ファンドの買いが3月期末を前に観測されている」(中堅証券ストラテジスト)もようである。
次は2万7480円近辺にある75日移動平均線越えを果たせるかどうかがポイントとなる。目先5日・25日線のゴールデンクロスを示現したとはいえ、25日線は急傾斜の下向きトレンドであり、このゴールデンクロスはダマシとなる可能性も十分にある。この25日線が上向きに変わり、25日・75日線のゴールデンクロス示現ではじめて中長期上昇トレンドへの回帰を謳うことができる。
そして重要なのは企業のファンダメンタルズ面からのアプローチだ。2023年3月期の企業業績見通しについて、この環境で既に予想されたことではあるが、「アナリスト段階では下方修正ラッシュとなっている」(中堅証券マーケットアナリスト)という。原油価格の急騰をはじめ、非鉄や穀物市況高騰による原料コストの上昇が業績押し下げ要因となることは避けられない。金融引き締めに向けた動きは、見事なまでにタカ派に急傾斜したFRBに象徴されるように、もはや動かしがたい。つまり、業績相場へのバトンタッチが見込めない中で、強引に金融の蛇口を締める局面へと移行するわけで、株式市場の中長期的なトレンドはやはり良くて“もみ合い”、基本は“下値切り下げ”であると考えておくのが正しいであろう。次に転機を迎えるとすれば企業業績の悪化によって経済全体が冷え込み、インフレ圧力に歯止めがかかった時。あるいは、その兆候が見えた時となる。
当面は個別株の循環物色で、主力銘柄に後れを取った材料株にも順番が回りそうだ。前週後半から直近IPO銘柄の一角が軒並み動意づいた。フレクト<4414>やTHECOO<4255>、エッジテクノロジー<4268>などが目立ったパフォーマンスをみせているが、今後も荒い値動きが予想され、乗りこなすのは結構大変である。まだ動きの少ない東証1・2部銘柄を黙って拾っておくのも一法で、その場合は業績面を重視。タツタ電線<5809>や、タカショー<7590>、オーナンバ<5816>、キョウデン<6881>などをマークしてみたい。低位株にも物色の矛先が向いており、200円台のLIFULL<2120>あたりに注目。
あすのスケジュールでは、1月の景気動向指数改定値など。また、東証マザーズ市場にTORICO<7138>が新規上場する。海外では2月の英消費者物価指数(CPI)、2月の米新築住宅販売件数など。米20年物国債の入札も行われる。(銀)